はじめての温泉
「お疲れさま、レイシア」
「勉強どうだった? 楽しめたかい」
神父様に連れられ教会の控室に戻ると、お父様お母様がレイシアを笑顔で出迎えた。レイシアは タタタッ とお母様の足に抱きついた。
「どうしたの」
とお母様が聞くと、両手を離して顔を見上げて興奮ぎみに話だした。
「あのね あのね あのねっ、オトモダチできたんだよ。名前も書いたよ。ウヒャヒャって踊ったり、ちっちゃな子モフモフしたり……」
興奮して早口になったレイシアの話は、よく聞き取れなかった。
(ウヒャヒャ?モフモフ?何それ?まぁ楽しそうだからいいか)
とお父様もお母様も思った。
「またここに来て勉強したいかい?」
「うん。ステキなおねえさまになるために、わたし勉強するよ」
「それは素敵ね」とお母様は言い頭をなでた。
「では、きちんとお願いしなさい。レイシア」お父様はレイシアに言った。レイシアは神父様の前で礼をして、大きな声で言った。
「これからわたしに勉強を教えて下さい」
(月曜日から金曜日まで毎日通う事になったよ)
レイシアはワクワクした。
◇ 【レイシア視点】 ◇
つかれた〜。いろいろ頑張ったよ、わたし。あとはお
「せっかく教会まで来たのだから、次は温泉に行くわよ」
おかあさまが楽しそうに言った。帰らないの?おんせんって何?
「温泉?まあ、大きなお風呂よ」
え〜、お風呂。夏は冷たいから大好きだけど、今は寒いからキライ。キレイにするの大事って言うけど、水が冷たいんだよ。冷たいのヤダよ。寒いよ~。いつもはしょうがないから入るけど、今日は帰ろうよ~。疲れたよ〜。眠たいよ〜。
と言っている間に温泉についたよ。近かったよ。
「入り口は4つあるから気を付けてね。あっちの2つは男の人が使うから近づいちゃだめよ。こっちの2つが女の人用。立派な方が私達貴族街に住んでいる人が使う用よ。覚えておいてね」
立派なドアから中に入るとおかあさまもわたしも、一緒に来たメイドのノエルとポエムからドレスを脱がされたよ。えっ、メイドさんもお洋服脱ぐの?
「温泉はね、みんなで入るお風呂なのよ。大きいわよ」
タオルを巻かれておかあさまと手を繋いでお風呂に行った。
大きい〜! 大きな池が部屋の中にあるのなんで!
「あれが温泉よ。レイシア、温泉に入る前には、必ず体を洗うのよ」
おかあさまはノエルに、わたしはポエムに、頭と体をゴシゴシ洗われた。水で流されるのいやだな、冷たいから。目をギュッと閉じて待っていたら、気持ち良い温かな水が体に当たった。
「熱くありませんか?」
「きもちいい。あったかい。なんで」
「温泉ですから」
もしかして温泉ってあったかいお湯で出来ているの? ポエムも体を洗ったみたい。一緒に手を繋いでお風呂の前に来た。
「レイシア様、ここが温泉です。中にタオルを入れてはいけません。それだけは注意して下さい。ではレイシア様、そこにお立ち下さい」
ポエムが先に入ってわたしを持ち上げてお風呂に入れてくれた。
あったかい。気持ちいい。えっ、足が着かない?
お湯の中でポエムに持たれたままスーって動かされたら、足のつく場所に着いた。そこで手を放してくれたよ。
ふわぁ〜ってへんな声が出たよ。体からチカラが抜けていく〜〜~。気持ちいいね〜〜〜。あふぅ〜〜〜。
「温泉、気持ちいいね」
「良かったですね」
「うん。ふわぁ〜。5歳になったらいいこといっぱいあってうれしいな」
「あちらにお外の温泉もありますよ」
「お外の温泉! 行きたい!」
「では、お連れしますね」
ポエムに持ち上げられてお風呂から出た。おかあさまは、まだ体洗っているよ。
ポエムはおかあさまに近づいて、外のお風呂に連れて行く事を知らせたみたい。わたしはおかあさまのお腹をじっと見たよ。
おかあさまは
「ここに赤ちゃんがいるのよ」
とお腹を触らせてくれた。お腹がビクンビクン動いた。
「あら、レイシアが触ってくれて赤ちゃんも喜んでいるのね」
とわたしに微笑んでくれたよ。
うん。わたし、立派なおねえさんになるからね。
お外のお風呂はもっと広かったよ。子供達が遊んでる。
「あっ!レイじゃん。あんたも来たの?」
サチさん? あれ、入り口違うんじゃなかった?
「入り口違うのはあたしらのためさ。お金持ちと平民が同じところで着替えてたら気を使わなきゃいけないし、なにか無くなったら疑われるしね。安全対策ってやつよ。でも服さえ脱げば一緒。温泉無礼ってやつよ。ほらみんないるから一緒に入ろう」
みんなに囲まれてワイワイ話して楽しかったけど、「レイシア様はそろそろ上がります」って連れて行かれたよ。よく分かんないけどのぼせるといけないんだって。
◇
おかあさまがやっと温泉に入った頃、レイシアは温泉から上った。
今日一日、初めての経験だらけで、緊張と運動でもともと疲れていたレイシアは、ドレスに着替え終わったらすぐにポエムの膝に抱えられ眠った。
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