第23話 一緒にお買い物
「二人で台所に立つって、いいよね。じゃあ、着替えてくるね」
よく考えると、二人共キャンプを出たときの格好のままである。
席を立って、寿々花さんは着替えに向かった。
俺も着替えておくか。
いつも作ってもらってばかりだ。なので、俺にも手伝えないかなと打診してみる。
キャンプのときにも共同で料理をしたから、一緒に作れたら楽しそうと思ったのだ。
「おまたせ」
寿々花さんが、俺の部屋に戻ってくる。服装は薄手のカーディガンと、茶色のロングスカートだ。
「ジーパンでもいいけど、キャンプで歩き回ったからねー」
ゆったりした服装にしたいそうである。
「じゃあ、いこうか」
二人で、近くのスーパーへ買い出しに行く。
「いつもはね、タイムセールをしている食材で、なににしようか決めるの。今日はお刺身がう安いって、サイトでわかってたから」
「お魚の種類って?」
「ハマチ」
スーパーのサイトを利用しているのか。新聞を取っていないんだな。
「お刺身は私が切るね。一緒に作るなら、もっと簡単なのもつけようか。なににしよう?」
店内を回りながら、あちこちを見て思考を巡らせる。
うーん、何を食いたいって言われても。
「あ、オムライス」
卵が、目に飛び込んできた。
「いいね。ケチャップも安い! それにしよう」
俺はカートを押して、特売品コーナーでケチャップを。それと卵を手に入れる。
野菜もゲットした。
「あ、ちょっと待ってて」
「寿々花さん?」
突然、寿々花さんが走り出す。向かった先は、精肉店だ。
「どおおりゃあああ!」
奥様方に紛れてモミクチャにされながら、寿々花さんはなにか食材をゲットする。
その間、俺はハマチのカタマリを買っておこうかな。
「はあ、はあ、おまたせ」
やりきった顔で、寿々花さんが戻ってきた。雪のような白い手には、鶏モモ肉が握られている。それにしても大きい。四人前はある。
「デカくないですか?」
オムライス二人分にしては、量が多いような。
「次の日は、唐揚げにしよう」
「いいですね。賛成です」
小麦粉のコーナーへ行き、唐揚げ粉を買う。
調味料売り場で「あっ」と、寿々花さんが上を向く。
「上にかけるソースは、デミグラス派?」
「ケチャップがいいです。絵か字を書いてほしいです」
「なら、そうしよう」
俺が結構ムチャな要望を言うと、寿々花さんははにかむ。
「案外、ベタなお願いするんだね?」
レジで精算してもらいながら、寿々花さんがムフフと笑う。
「どうせなら、やってもらったことがないことをしてもらおうと」
「せっかくだもんねー」
大量の食材を持って、家に戻る。
「男の人がいると、助かるー」
「そうですか?」
「こんないっぱい買えないもん。お世話になります」
寿々花さんが、俺にペコリを頭を下げる。
「いいえ。こんなのでよければ、またお手伝いしますよ」
「また、付き添ってくれるの?」
「寿々花さんさえよければ」
「ありがとー」
料理をしてくれるんだから、こんなのはお安い御用だ。
「ところで、タイムセールに飛び込んでいくのって、勇気がいりませんか?」
あの大集団の中に入っていくのは、相当な根性が必要なのでは。
「ああ、ねえ。ストレス発散と、運動不足解消のためだから」
寿々花さんなりに、考えがあっての行動らしい。
家に帰って、エコバッグを開ける。
寿々花さんが、自宅から取ってきたエプロンを結んだ。料理をするだけなのに、ドキッとなる。後ろで紐を結んだ時、胸が強調されたからだろう。
「どうかした?」
エプロンをつけながら、寿々花さんが問いかけてきた。
「なんでもありません」
視線を悟られないように、俺は後ろを向く。
「ひょっとして、エプロンがうらやましいとか」
ズイッと、寿々花さんが俺に顔を寄せてくる。
「そ、そんなところですよ」
寿々花さんが適度な誤解をしたようなので、俺もソレに合わせた。
「じゃあ、玉ねぎをむしって、刻もうか」
「そうですね」
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