第15話 釜でピザ作り

「着いたよヒデくん」

「おお、広いですね!」


 キャンプ場に到着した。


 クルマを止めた後、すぐに朝食の準備へ。


 予約しておいたピザ工房で、ピザを作らせてもらう。


 生地にケチャップを塗って、広げていく。このケチャップの段階でうまそうだ。間を開けた瞬間から、新鮮なトマトを使っているってわかる。ホントに市販なのかよと。缶から直接、飲みたいくらいである。


「好きな具材とかあります?」

「サラミ大好き」

「じゃあ、投下しますね」


 薄くスライスされたサラミを、ピザに。もうこれだけでいいのでは、食えるのでは、と思えるほどの完成度だ。


「トマトとチーズを、たっぷり乗せましょう」

「いいね!」


 俺の提案に、寿々花さんが乗ってきた。


 彩りのバランスとか考えない、バカみたいな乗せ方だ。


 周りを見ていると、もっとバジルを乗せたり、テリヤキチキンやコーンを乗せたりと、バリエーションが豊富である。


 それでも、こっちだってうまそうなのには変わりない。


 シンプルイズベストだろ。初めてだから、失敗もしたくないし。なにより、誰かと一緒に作るって体験が大事なんだ。こういうのは。


 チーズと、新鮮なトマトをトッピングして完成だ。


 できあがった生地を、釜にブチこむ。


 焼いてる風景を見られるところが、ピザ窯のいいところだ。


「見てみて。釜の中でチーズがボコボコってなってる」

「できあがりが、楽しみですね」


 火を見つめている間に、腹が減ってくる。


「ピザトーストとか作るときって、こんなにドキドキしませんよ」

「私もー。なんか楽しいよね」


 キャンプで食う物は、アウトドア効果もあって三倍はうまく感じると聞く。


 これも、キャンプ飯効果なのだろうか。ワクワクが止まらない。


「ああもう。いいよね出しても。来る前にガム噛んでたじゃん。胃がふやけちゃってガマンが効かないの」


 寿々花さんが、お腹を押さえる。いやもうかわいいな。 


 ピザを釜から出す。


「いただきまーす」


 寿々花すずかさんが、ピザにかぶりつく。


 チーズがビローンと伸びた。


「んん! おいひいね!」

「うまい! これ、最高!」


 トマトが口の中で弾けて、それをトロトロのチーズが包む。


 生地とチーズの香りが鼻から抜けて、ピザの弾力が歯に心地よい。


「あっという間に、こんなおいしいピザができるんだね」

「ピザ窯は、憧れますけど」

「これは、お店ならではだよね」


 お腹が空いているのか、寿々花さんは一枚をペロリと平らげてしまった。


「ごちそうさまでした。おいしかったぁ。予想外だった。こんなにおいしいなんて」

「菓子パンのピザとは、また違った趣がありますよね」


 寿々花さんが、他のピザ体験者たちを、名残惜しそうに見つめている。


 釜の利用者は、自作のピザを食べて楽しげだ。


 チーズの焦げた匂いが、より食欲を刺激する。「もっと食っていい」という誘惑に、思わず負けそうになった。


「わーん。もっと食べてみたいけど、お昼もあるからお預けだぁ」


 たしかにな。ここでまた食べてしまうと、昼食が食えなくなる。


「もう一回来ましょう、寿々花さん!」

「それで解決だ。よかったぁ」


 再度、このキャンプ場で遊ぼうと約束をする。


 いつの間に、こんな関係になれたんだ?


 まあいい。寿々花さんが楽しそうなら、なによりである。


 次は、動物を見に行こうとなった。


 農園が近いので、さすがにトラなどの猛獣はいない。


 羊を間近で見たり、モルモットの大行進を見たり。


 寿々花さんが、ウサギのエサやりコーナーを見つけた。


 ニンジンスティックを購入し、寿々花さんはウサギへと近づける。


 ウサギが、スティックをカリカリとかじりはじめた。寿々花さんの指まで噛んでしまいそうな勢いだ。


「かわいいねえ」


 モリモリとニンジンに食らいつくウサギを、寿々花さんはトロンとした目で見つめていた。


「さて、キャンプ所へ行こう」

「ですね」


 昼と夕方で、キャンプ飯を行う。

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