第13話 キャンプ用品探し

 寿々花すずかさんは、俺をキャンプに誘いたいという。


「といっても、バーベキューだよ? それに日帰りなんだけど」


 キャンプというより、アウトドア用品がほしいようだ。


 前に寿々花さんは、下の階に住む松川まつかわ家に誘われてバーベキューをした。それ以来、屋外で料理を目一杯したい熱が高まったそうである。


「松川さんから、一緒にお花見をなさったと聞きました」

「そうなの! 火を使ってもいい公園に誘ってもらって」


 なんでも松川家の旦那さんがアウトドア趣味らしく、連れて行ってくれたそうだ。


「いいですね! やりましょう」


 さっそく、ホムセンに行って炭と火熾し用品を買いに行った。あと、紙の皿やコップなども揃える。


「食器類って、紙でいいですかね? 洗わないでいいから便利ですが、自分用のカトラリーがあるといいのかなって迷います」

「こういうのってね、結局紙に戻るらしいよ。松川さんの旦那さんが言ってた」


 寿々花さんが、クスクス笑う。どれだけカッコつけてギアを揃えても、結局はサイズや重量の関係で持っていかないそうだ。紙は偉大である。


「カトラリーも、普段使うタイプになっていくってさ」


 調理器具も専門的なものは買わず、家のありものを使うらしい。


「熟練キャンパーでも、そんなもんなんですね」

「慣れてくるほど、案外そうなっていくらしいよ。効率が重視されるって」


 というわけで、焚き火台くらいしか買うことがなかった。折りたたみ式だ。


「俺が担いで帰ります」

「それだと、他に色々回れなくなるよ。宅配をお願いしてくるね」


 配送代も安く済み、だいぶ予算が抑えられたなと。


「レンタカーは、こちらで用意するね。お肉は、当日に買おう」

「ありがとうございます。なにからなにまで」

「私が言い出したんだもん。ヒデくんに出してもらうのは悪いよー」


 日付は、GWの間となった。さすがに社畜でも、GWは休む。休める。おそらく……。



 夕飯も、外で取ることにした。


「ハンバーグが食べたい」というので、専門店へ。

「結構ボリュームあるね」


 サラダメインのセットのつもりが、ボリュームがあった。アラカルトのポテトセットも、ホクホクでうまいが、ちょっと量が多すぎたか。


「でもおいひい。パクパクいけちゃう」


 結構な量のコンソメスープと格闘しつつ、寿々花さんはハンバーグをペロリと平らげる。


 俺も、ハンバーグカレーをモリモリと食う。ああ、たしかに寿々花さんの言うとおりかも。スイスイ腹に入る。思っていたより重くない。


「ごちそうさまでした」


 いやあ、ハンバーグもウマいがカレーライスも最高ってのが反則である。あやうくおかわりしそうになった。追加のイカ姿焼で妥協したが。


「ヒデくん、パフェ食べていいですか?」

「どうぞどうぞ! 俺もアイス食お。ああ、このアフォガードってなんですか? よく耳にするんですが食べたことなくて」

「エスプレッソをかけて食べるソフトクリームだって。頼んでみようか」

「いいですね」


 二人でアフォガードをいただく。ほろ苦くいのに、甘え。最高だ。なんか、大人になった気分だな。もういい大人なんだが。


「松川さんとも、よく遊びに行くんですか?」

「バーベキューに行ったきりだよ。ちょうどお子さんの保育園が春休みだったから、行きませんかって誘われて」 


 寿々花さんが、例の下着ドロ事件で落ち込んでいたときのことである。気分転換にちょうどいいだろうと、奥さんが誘ってきたらしい。


「桜そっちのけで焼肉のお手伝いしちゃって。やっぱり塞ぎ込んでいるときは、なにかに集中するのがいいんだなって思いました。で、私もバーベキューしたいなーって。どうかな?」

「いいと思います! 楽しい思い出にしましょう」

「だね! ありがとうヒデくん!」


 キャンプに行く日を楽しみにしながら、俺は楽しい休日を終えた。


 明日からまたデスマだが、なんとかやれそうである。

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