第10話 映画談義と、ハプニング!?

 デート当日。俺はできる限りの服装にして、寿々花すずかさんの連絡を待つ。


「もうすぐ出ます」とメッセージが来た。


 玄関を開けると、オシャレな寿々花さんが現れる。


「おまたせ、ヒデくん」


 いつもおさげな寿々花さんだが、今日は髪をポニーテールにまとめていた。服装も、薄手のタートルに薄茶色のカーディガンを合わせている。


「じゃあ、行きましょう」

「はい」


 寿々花さんと二人、徒歩で、ピオンへと向かう。


「誘ってくれてありがとうございます、寿々花さん」

「いえいえ。ヒデくん、とっても似合ってるよぉ」

「ありがとうございます。寿々花さんも、きれいです」

「わあ、ありがとー。よかったぁ」


 俺のために、服まで選んでくれたなんて。


 歩きながら雑談していたら、いつの間にかピオンに着いていた。


「どこか行きたいところとか、ある?」

「えっ」


 ヤバイ。デートプランとか、まるで考えていなかった。


「そうですね。お話が、したいです」


 普通のデートプランなら、おそらく映画とかなのだろう。


 寿々花さんとオレの共通の話題も、おそらく映画メインになる。


 しかし、俺と寿々花さんの好みが合うかわからない。


 映画は映画で楽しいんだろうが、静まり返りすぎるから除外している。もっと、お互いをよく知ってからがいいなって思ったのだ。


 一言で映画と言っても、ワイワイ感想を語り合うスタイルもアレば、その場で大声で大円するという視聴スタイルもある。今では、寿々花さんがどのタイプを好むのかわからない。


 それでは、お互いに映画好きなのに楽しめなくなる。


 距離を近づけるには、お互いにもっと会話がしたいなと。


 ご近所だし、もっとよく知っておきたいのだ。せっかくのデートなのだし。


「そうだ。今日のお夕飯は一緒に外食でいいかな? ベランダで食べるなら、お買い物になるけど」

「はい。外で食べましょう。楽しみです」

「わーい」


 最初は、軽くお茶をすることになった。騒がしいフードコートを避けて、ちょっと高めのカフェへ。


「会話だけなら家で」、というわけにもいかないからな。


 ファミレスやドーナツショップだと、これまた子連れで騒がしいだろう。かといって昔ながらの純喫茶だと、案外店主が常連客と話し込むことがある。分煙されてない可能性も高かった。


 寿々花さんは、タバコを吸っている気配はない。もちろん俺もだ。


 昼食があるので、コーヒーだけで済ませる。


「映画を見に行くとしたら、どんな映画がいいですか?」

「恋愛映画は好きです。でも、アニメもアクションも嫌いじゃないの」


 なら、今やっている邦画のアクションモノとかいいかも。いや、あれはB級臭がして、大量に血が出るんだよな。ダメだ。


「ヒデくんは、どんな映画を見るの?」

「まんべんなくですね。教養ものとかも見ますし、人間ドラマ系も嫌いじゃないです」

「ヒューマンドラマ系かぁ……人とは見に行きたくないなー」


 寿々花さんが、苦笑いした。


「気分が重たくなっちゃうからですか?」

「いや、その。お恥ずかしいんだけど、泣いちゃうの」

「わかります。しみじみしちゃうときってありますよね」


 映画賞を取った邦画とか、日本人監督の韓国映画とかは、やばそうだ。デートで見るとしたら、その辺りなんだろうけど。


「印象に残っている映画ってあります?」

「ミステリかなぁ」


 大御所海外作家が書いた小説原作の洋画が、たまらなく好きだという。


「今でも、あのサプライズはすごいなって思うよ。記憶をなくしてもう一度みたいもん」

「ボクもです。いい作品ですよね」


 その後、会話は順調に進んだ。


 やはり、映画を話題にしてよかった。


「少し歩こう」となり、一階のホームセンターを巡る。


「あれ、先輩!」


 グレーの茶トラを抱いた村井むらいが、こちらに手を降ってきた。 


 どうしてここに村井がっ!?

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