謎の答え その①

「数字と数字のあいだにあった記号は、引き算を意味するマイナスだ。計算してみたまえ」

 なぎちゃんのいうとおりに計算していったが、おかしなところがある。同じことに鮎村あゆむらさんも気づいたようだ。

「……なんか変。「1-2」と「2-4」は計算できないわ。引かれる方の数字が大きいもの」

「それはすうになる。中学一年から教えはじめる内容だから、わからないのも無理はない。0より小さい実数はマイナスをつけて表すのだ。結果は以下の通りになる」


・問題

 お宝は「5」「3」「6」「-1」「-2」「5」「5」「4」

 かならず「3」「6」にとりにいくこと


「ごく簡単な換字かんじ式暗号だ。数字はひらがなに変換へんかんできる。変換へんかんにはヒントの五十音表をつかう。表の「あ」を1として、数字がプラスになるごとに「あ」の次の文字となり、数字がマイナスの場合は「あ」の前の文字――つまりわ行のまつから数えた文字となる。結果はこうだ」


・問題

 お宝は お う か ん を お お え

 かならず う か にとりにいくこと


「おうかん……王冠おうかん?」

 そう読み上げると鮎村あゆむらさんが声をあげた。

王冠おうかん公園よ! あそこの像には王冠おうかんがついていたわ」

 王冠おうかん公園。たしか以前に、両親とみたま池に釣りに行くときに通ったことがある。明けのかみ駅から徒歩で15分ほどのところにある児童じどう公園だ。あそこの像をなにかでおおえということだろうか。

「うかにとりにいくことってどういうことだろう」

「それは雨下うか――雨がふるときにとりにいくこと、という意味だろう」

「わかったわ! きっと雨の日になったらカサで像をおおってあげればいいのよ。あまざらしなんてかわいそうだものね」

 さっそく調べてみると、一番ちかい雨の予報は来週となっていた。

なぎちゃんありがとう! 商品がもし分けられるものなら、みんなで山分けね。でもすうなんてズルいわ。まだ学校で習っていないんだからわかるわけないじゃない」


 あれ? 鮎村あゆむらさんが口にしたことばの何かが引っかかる。


「君が満足したようで何よりだ。なんならオープンチャットに謎はもうとけたと書きこんでみたらどうかね。きっと他のメンバーもおどろくだろう」

「そうね。本当にありがと!」

 それから鮎村あゆむらさんと別れたあとで、なぎちゃんはそっとぼくに耳打ちした。

「さて。今日の夜は君にも手伝ってもらうことにするよ」

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