チュンチュンネットワーク

@ramia294

   

 スズメさんは、日本全国にいます。

 とっても可愛らしい姿は、みんなに愛されています。

 農家だって、稲の実が、ふくらむまでは、虫を取ってくれる大切なお仲間です。

 

 チュンチュン、チュンチュン。


 みんな大好き、朝の鳴き声は、実はスズメたちの読み聞かせのお勉強のお時間。

 信頼できる文献(ザ・インターバル)には、その記述が。

 https://kakuyomu.jp/works/16816927863265967779

 オノマトペのお勉強中です。

       (^^)

 

 ところで、スズメさんたち。

 地域密着型と思いきや、長い距離を移動するものもいます。


 春には、花が咲き乱れ。

 夏には、緑が萌え立つ。

 秋には、赤や黄色の裾野。

 そして、冬には、白銀の帽子かぶる山々。

 美味しいお蕎麦とちひろの博物館。


 美しい山々の夢のような世界から、ふらっと飛び出した、スズメの男の子。

 冒険好きで、空を飛ぶことが大好き。

 彼も新しい世界をその目で見てみたい。

 そんなスズメさんでした。


 西に向かって、飛んでいくと、海のように大きな湖が、ありました。

 この湖には、たくさんの鳥たちが、暮らしていました。

 嬉しくなった旅するスズメさんは、湖の鳥のお仲間に入れてもらい、しばらく楽しく暮らしました。

 ところが、この湖の鳥さんたちは、渡り鳥が多く。

 メンバーの入れ替わりが激しいアイドルグループのようで、お友達になったと思った頃には、みんな北や南に飛んでいきます。

 大人になったスズメの男の子。

 少し落ち着きたいと思い、終の棲家を求めて再び飛びました。


 降り立った土地は、とても変わった土地でした。

 人の生活と密着してくらしているスズメとしては、人の姿が多いほど、暮らしやすいものなのですが、その町には何故か人よりもシカの数が多かったのです。

 

 その日もまじめに仕事を終えたお日さまが、帰りがけのちょっと一杯で、顔が赤くなった頃、旅するスズメさんが、馬酔木の枝で、羽を休めてました。

 しばらくすると、その樹の洞から寝ぼけ眼のムササビ君が顔を出しました。


「ムササビ君、ちょっと教えてくれませんか。僕は、終の棲家を求めて、旅の途中のスズメなんですが、ここは、いったいどんな場所?人よりシカさんたちが多いなんて、今まで見たこともない場所です」


 するとムササビ君は、答えてくれました。


「ここは、忘れられた都。人々の記憶から失われた都。遠い、遠い、昔。ここに、都があったらしいよ。シカさんたちもいたけど、人の姿も多く賑やかだったらしい。でもね、ある時、都に住んでいたある人が突然、鬼に、変わってね。たくさんの人が襲われて、亡くなったらしい。鬼は、退治されたらしいが、二度と鬼が出ないように、優しい人しか住めない土地にしてくださいと、ここに住む人々が神様に願うと、人の数が、減ってしまい、さびれていったということさ。人という獣は、楽園を追い出される運命に、あるらしい」


 ムササビ君は毛づくろいをして、夜のお出かけの準備を終えると、スズメさんに、お勧めの一言を。


「でもね。ここにいる人たちは、優しい人たちの末裔。みんな優しい人たち。君たちスズメさんのように、人が大好きな鳥さんには、住みよい土地かも」


 ムササビさんは、出かけていきました。


 チュンチュン、チュンチュン。


 翌朝、忘れられた都。

 その町を探検中。

 賑やかなスズメの声に誘われて、降りたった旅するスズメさん。


 シャッターばかりの商店街。

 小さなお店。

 スズメさん達、たくさん集まっています。

 でも、鳴いているのは、スズメたちでなく、お店のスズメの置物。

 置物さんは、スズメ世界の情報通。

 いろんな話をスズメたちに。

 北のスズメは、まだまだ寒く、ダウジャケット手放せません。

 南国のスズメたちは、早くも海開き。

 人間たちより、一足先に、海水浴を楽しんでいます。


 スズメさんの置物。

 置物同士は、繋がっています。

 スズメさんの置物がある場所の情報は、置物世界のネットワーク。

 置物の間のネットワークがスズメたちの味方に。

 チュンチュンネットで、どんな事でも調べられます。

 もちろん、遠く離れたスズメ同士で、会話も出来ます、チュンチュンネット。

 スズメさんの置物は、日本各地に。

 旅するスズメさん。

 優しい人々が、集うこの町が、気に入って、終の棲家に決めました。


「おじさん。チュンチュンネットで、安曇野にも連絡出来ますか?」


 旅するスズメは、お店のおじさんに訊いてみました。


「大丈夫。何年か前に、とても上品で美しい安曇野の女性が、お土産にスズメさんの置物を買って帰られたからね」


 美しいふるさと。

 懐かしい安曇野のお父さん、お母さんに、ご報告。

 チュンチュンネットで、おしゃべりします。


「僕は、この町が、好きになりました。ここで暮らしていこうと思いまチュン」


 お父さんが、言いました。


「そうか、少しさみしいが、新しい土地で頑張っていくんだチュン」


 お母さんが、言いました。


「時々、連絡してチュン」


 旅するスズメさんは、今日から、古い都のスズメさん。

 楽しい仲間と、可愛いお嫁さんと、楽しく、楽しく、暮らしました。


         おわり



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チュンチュンネットワーク @ramia294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ