第10話 2体目の従魔

《引き続き冒険者ギルド》


「ロキュスさんはスキルレベルが上がったばかり。私も同行しましょうか?」

 ちょっと不安があったので、

「時間があるのであれば是非お願いします。」

「今の時間は手が空いているのよね。ではすぐに出発しましょ?」

 ベアトリクスさんの行動は早かったです。

 そのまま2人で草原へ向かいました。


《草原》


 そう言えばベアトリクスさんには小さなスライムを見せていませんでした。

 周囲に誰もいないのを確認し、カバンから出していきます。


「これが件のスライムちゃん達ね。スラちゃんと違って小さいままなのね。」

 そう言ってベアトリクスさんは小さなスライムに手を差し伸べます。

 それに反応したのが青いスライム。


 見る見るうちにベアトリクスさんの差し出した手に掴まりどんどん登っていきます。

「え?なになに?どうしちゃったの?」

 訳が分からないベアトリクスさんを尻目に、青いスライムは既にベアトリクスさんの胸元へ。そしてそのまま躊躇なく顔に飛びついていきます。

 一瞬の事に、何も対応できずに固まってしまうベアトリクスさん。

 そのまま青いスライムはベアトリクスさんの顔全体を覆ってしまい・・・・


 混乱するベアトリクスさん。

 どうやら恐怖心が芽生えたようで、失禁してしまったようです。股間はずぶ濡れ。その後失神したようで、ベアトリクスさんがその場に崩れていきますがスラちゃんが受け止めています。

 

 そしてそれに反応する白いスライム。

 白いスライムはベアトリクスさんの濡れた足元からどんどん登って、股間に入り込んでしまいました。


 暫くビクンビクンとしているベアトリクスさん。

 一寸異臭がしていましたが、そのうちその臭いもなくなり、白いスライムは少し離れた場所に何かを吐き出しています。

 そしてベアトリクスさんから離れていきます。そしてカバンの中に戻っていきました。

 驚いたのですが、先ほど失禁したのが嘘のように、ベアトリクスさんの股間から足にかけては綺麗な状態で、異臭もしません。

 そして青いスライムは顔から胸元へと戻り、服の中へ入り込みベアトリクスさんの肌に張り付いていきます。

 そのまま暫くもぞもぞとしたと思うと、やはり胸元から出てきて、カバンの中に戻っていきました。


 え?どういう事?僕の時は顔だけだったのに。


 やがてベアトリクスさんは意識を取り戻し、立ち上がって直ぐに顔をペタペタとさわり、体のあちこちを触っていきます。


「あ、あら?わ、私さっきその・・・・あ!ちょっと戻りますね!」


 何だか急いで街の方へ戻っていきました。

 2体のスライムの行動が原因だよね。

 さてどうしよう?と思っていたら、

ねえごしゅじんねえご主人じめんになにかいるよ地面に何かいるよ!】


 何だろう?

 暫くすると地面から何かが出てきました。


 巨大ミミズ?

 いえいえこれは確か孤児院の畑にも住み着いていた【ワーム】若しくは【ウォーム】と呼ばれる魔物ですね。

 あ、もしかして【アースワーム】でしたっけ?

 土の中にいるので【アース】が付く種類だった気もしますがいまいち自信がありません。。

 スラちゃんがワームの近くでピョンピョン跳ねています。

このこがごしゅじんをこの子がご主人をきにいっているんだって気に入っているんだってぼくとおなじ僕と同じじゅうまにしてほしいっていっているよ従魔にして欲しいって言っているよ!】

 うーん、ワームって従魔にしたとして、何の役に立つのでしょうか?

 テイムするからには、役立ってもらわないとその存在理由が問われるので、悩みます。

 しかし・・・・ミミズにしては大きすぎるんです、この子。

 スラちゃんと同じぐらいの大きさ?

 両手を握り、こぶしをくっつけた感じの大きさ。

 しかもワームっていくつか種類があって、目の前のワームはどう見てもドラゴンの幼体とも言われている、謎の生命体なんです。


 口を見れば区別がつくようで、大きな口を持ち、目が無い・・・・あるかもですが、分かりにくい種は見た目もちょっと気持ち悪いんです。

 幸い?な事に目の前の種はまだ幼いようで、可愛らしい顔つきをしています。

 目もわかりますし、やっぱり口はワニのような大きな口。

 これで翼があって手足があればドラゴン!なのですが、この子の種類は何でしょうか。


 何だかこっちを見て首をかしげている、そんな気がしてきました。

「ねえ君、僕の従魔になりたいの?」

 何だかうんうん言っているような、そんな身振りを示しています。

「ただ、人の従魔になるには何かの役に立ってもらわないと駄目なんだ。君は何が出来るかな?」

 すると何だか急に地面に潜り、地面がもこもこし始め、また現れました。

 そしてこの地面の周囲を回りはじめます。

 何かを訴えているようですが、テイムをしていないと意思の疎通が図れません。

 何だか必死に?なっています。

「分かったよ、君をテイムするからこっちにおいで?」

 すると僕の足元にやってきたワーム。

 僕はおっかなびっくりとしながらも、ワームの頭?に触れます。

 何だか蜥蜴みたいだな、そう思ったのですが、


【ワームのテイムを開始します。】

 スラちゃんの時と同様、頭の中に何か情報が入ってきます。

 暫くすると、

【ワームがテイムを受け入れました。従魔にしますか?はい/いいえ】

 と出ました。勿論はいです。


【ワームのテイムを完了。名前を付けて下さい。】

 

 うーん・・・・わむでは駄目な気がしてきました。なんだかそれは既にある名前だと?

【アース】と【ワーム】のいいとこどり?

【アスワム】にしよう。

 あ、なんだか嬉しそう。

 頭の中でそう思った瞬間、

【【アスワム】と命名します。】




あるじのじゅうまになれたんだね主の従魔になれたんだねがんばっていいつちにするよ頑張っていい土にするよ!】


 どうやらワームは土をよくする能力があるのかな?

 畑の土を良い土にしてくれるのでしょうか?

 農家の方が喜べばいいのですが。

 ベアトリクスさんだったらワームの能力が分かるのかな?

 畑の土を作物がより育つようにしてくれたら、収穫量か品質が上がると思うので、若しくは収穫期間の短縮かな?そうなれば助けになるよね。あれ?もしかして薬草の周囲をアスワムちゃんが頑張ってくれたら、もっと立派な薬草が生えてくれるのかな?今後が楽しみです。


 こうして僕はこの日、2体目の従魔をテイムしました。

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