第4話 用意周到なお姉さん

「無事にテイムが終わったようね。おめでとうロキュスさん!」

「ありがとうございますベアトリクスさん。あ、ごめんなさい、僕ってついベアトリクスさんの事をお姉さんって呼んじゃいました。」

「いいのよそんな事は気にしない気にしない!何だか可愛い弟が出来たみたいで私もお姉さんと呼ばれて何だか嬉しいのよ!あ、そうそうごめんね!早速スライム・・・・スラちゃんにお仕事をしてもらいましょう!そうは言ってもスラちゃんが活動するために必要不可欠な事だから、あまり気にしちゃあ駄目よ。」


 そう言ってお姉さ・・・・ベアトリクスさんは薬草の生えている場所に案内して下さいました。


《薬草の生い茂っている場所》


「いい事?これが怪我に効く薬草、そしてこっちが状態異常、具体的にはお腹の調子が悪くなったような症状、つまり内臓に効く薬草ね。そしてこれは人が摂取すれば魔力が回復する薬草。これはスライムにはあまり効果が無いから気にしないでどんどん摂取してもらいなさいね。」


 そう言って、スライムのスラちゃんに指示を出しています。

 スラちゃんがこちらを振り返った気がしますが、

「あのお姉さんの言う通りにしてね。」


 そう言ってみたらスラちゃんがプルプル震えて早速薬草を体内に取り込んでいます。

「一応万能薬ってあるけれど、レベルが低いうちは効果もいまいちなのよね。できれば成分をスライムが排出、この場合は抽出かしら?つまりは薬草の成分を得るまで単一の薬草を取り込ませるようにしてね。万能薬はもっとレベルが上がったら試した方が良いわね。」

 そう言いつつ、お姉さんは背負ったカバンから何かを出しています。

「今回は準備が出来ていないから、私が用意したの。お代は今から得られる成分の売却代から頂くから心配しないでね。この容器の代金ぐらいは、いえいえ、暫くの宿代にも困らない程度のお金が残るはずだから心配しないでね!」


 そう言えば僕は一文無しでした。

 僕と一緒に孤児院からやってきた他の子供達はどうなったのかな?

 尤も僕には他人の事をどうこうできる実力が無いので、心配した所でどうにもなりませんが。


 そうしているうちに、

「いい事?こうしてスラちゃんに差し出すの。こうしたらここに出してくれるから。」


 そう言ってスラちゃんに容器をあてがうベアトリクスさん。

 するとスラちゃんが何かを吐き出しました。

 あっという間に容器が満たされます。

「そしてこの栓で蓋をすれば完成ね。」

 容器は無色、つまり透明。

 そしてその中の液体はほんのりと黄色がかっています。

「低品質の内は色が薄くて、品質が上がるにつれて色が濃くなるの。覚えておいてね。」


 黄色は怪我に効き、赤色は状態異常、緑色が魔力の回復らしいです。


 あと、茶色は状態異常の効果・・・・紫は毒の効果があるとか。


 状態異常や毒と聞くと何やら危険な感じなのですが、この茶色と紫色のポーションは必要悪という訳でもないらしいです。

 何故ならば、レベルの低いテイマーや薬師が魔物を仕留める手段として非常に有用だからだそうです。

 ただ、間違って使用すると自身がダメージを負うので、くれぐれも扱いは慎重に、だそうです。


 そんな感じでスラちゃんが次々とポーションを完成させていきます。

 そうしている間に何か僕は、スラちゃんにもですが、変化がありました。

「あら?もう【レベルアップ】かしら。思ったより早いわね。おめでとう!」


 どうやらレベルアップしたようです。

「もう【レベルアップ】ですか?」

「ええ、レベルアップは【経験】を重ねる事で上がるのだけれど、戦闘の時に敵を仕留める事で【経験】が得られる訳じゃないのよ?こうして何かを成せば【経験】を得、それが一定数に達すれば【レベル】が上がるのよ。そして、【レベル】が低い間は上がりやすいのだけれど、レベル10を超えてくると上がりにくくなるわね。そしてレベル20になるには普通数年はかかるのよ。」


 この後、更にスラちゃんが吐き出した液体を回収し、気が付けばレベル3になっていました。

「そろそろ帰りましょうか。」


 帰りもベアトリクスさんのテンションは変わらず、ひたすら喋っていた事が印象深く、尤もそれは僕の役に立つ事なので有り難かったのですが、この人何か溜まっているのでしょうか?



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