第5話 スライムのスラちゃん
《冒険者ギルド》
ベアトリクスさんと街に戻って、スラちゃんが吐き出した液体を容器に確保した物を引き取ってもらいました。
「色々あると思うけれど、一旦これを使ってね。今回はポーション代の買取金額から引かせてもらったわ。そしてカードに残金が入っているけれど、数日分の宿代ぐらいは残っているから、よかったらまた明日来てね。」
明日、何があるのでしょうか。
居合わせた冒険者の視線が痛かったですが、そのまま引き上げました。
そうそう、スライムのスラちゃんは一応従魔登録と言うのがあって、手続きを済ませてもらっています。
何せ街中に魔物が居たら大騒ぎですから。
尤もスラちゃんはまだ僕の手のひらサイズ、つまり握りこぶしほどの大きさなので、カバンの中に入ってもらいましたが。
《宿》
ベアトリクスさんは先程お金の事を言いましたが、かなりの金額がカードに入金されていたので、内心僕は驚きました。
ポーションって儲かるんだ、と。
何から作られているのかは知りませんが、親指と人差し指で輪っかを作り、その輪っかほどの太さ、そして長さは握りこぶしほどの大きさの透明な筒状の容器。
これが一度に服用するポーションの大きさのようです。
それをベアトリクスさんは20本と専用の容器、まあ腰に巻き付けて使用するカバンですが、それも渡して下さいました。
今後スラちゃんが成長し、もっと薬草の成分を吐き出す事が出来る様になれば、更に容器を追加してみては、との事。
あまりにも大量に吐き出させると、まだ小さな体のスラちゃんには負担が大きいそうです。
僕は比較的設備の整った宿で宿泊する事にしました。
お金はあるし、あまり安い宿だと治安が悪いのだとかでお勧めはしない、との事。
この宿はベアトリクスさんが勧めてくれたんです。
もっと高い宿もありますが、分不相応な所に住むと、他の冒険者のやっかみもあるらしいのでこれぐらいの規模がお勧めなんだとか。
人付き合いって難しいですね。
・・・・
・・・
・・
・
翌朝、宿で食事を取り、再び冒険者ギルドに向かいました。
一応お姉さんに挨拶をしないとね。
《冒険者ギルド》
朝一番だったのですが、建物内の一角が凄い事になっていました。
「てめえそれは俺が今目を付けていたんだ!」
「何言ってやがる、俺が先に取ったじゃねえか!」
あちこちで揉めています。
幸い?ベアトリクスさんが空いていたので向かいます。
「おはようございますベアトリクスさん。あの騒ぎは何でしょうか?」
「ロキュスさんおはよう!来てくれてお姉さんは嬉しいわ!あれはね、朝一番で良い依頼がないかああして確認しているのよ。依頼はね、朝にあそこへ掲示をするのだけど、効率のいい依頼は人気があって、御覧の通り取り合いになるのよね。あ、そうそう、ポーションや薬草の依頼は常時依頼だから、わざわざ依頼を受けなくてもいいから、出来次第ドンドン持ってきてね。それと森の奥深くに入らなければ安全だから。それと昨日はスラちゃんも色々覚えたと思うから、語り掛けながら試してみてね。あ、ごめんなさい、今から忙しくなるからまた後でね。」
見ると掲示してある依頼の争奪戦が終わったようで、紙きれを手にし受付に並んでいる冒険者の人々。
冒険者の方々に睨まれているので、僕は軽くお辞儀をし冒険者ギルドを後にしました。
・・・・
・・・
・・
・
《平原と森の境》
僕は昨日と同じような場所に来ました。
「昨日の薬草、覚えている?」
スラちゃんに話しかけると、
何だかうんうんと言っているような、そんな身振りを。
「じゃあ・・・・傷に効く薬草からやってみようか?」
ピョンピョン跳ねています。
そして想定より素早く移動していくスラちゃん。
速いよ?僕は駆け足で追いかけました。
暫くすると、スラちゃんは薬草を見つけ、体内に取り込んでいきます。
昨日は気が付きませんでしたが、何やら体の色に変化があります。
そう、ほんのりと【黄色】に変化しているのです。
動きが止まったので、容器をスラちゃんに差し出します。
すると何かを吐き出しました。
昨日より若干色の濃い液体が採れました。
これを何度か行い、今度は【赤色・状態異常】、そして【緑色・魔力の回復】を吐き出してくれました。
20本全て採取した頃どうやらレベルが上がったような感覚がありました。
するとスラちゃん、ブルブルと震え始めたので僕は驚きました。
そして・・・・なんと動きが止まってしまったではありませんか!
スラちゃんの体が硬くなっていき、遂には全く動かなくなってしまいました。
何て事!
どうやら無理をさせ過ぎてしまったようです。
ご、ごめんねスラちゃん!
この後暫く何か変化がないかその場で見ていましたが、残念ながらスラちゃんが動き出す事はありませんでした。
僕は仕方がないので、穴を掘って埋める事にしました。
何がいけなかったのか、昨日と同じ量を採取したので無理をさせているとは思っていませんでしたが昨日の今日で、身体の小さなスライムには負担が大きかったのでしょうか。
今後の事もあるのでこの事は教訓として、今後のテイム時に、そしてテイムした従魔の扱いには気を付けなければいけません。そしてスラちゃんのような犠牲は二度と出すまいと心に誓いました。
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