順調すぎるのでリフレッシュデート
順調に登録者数が伸び続ける中、イセルは雑談配信をしていた。
平日の夜で、特に新しさなどはない。
だからこそホッとするような憩いの場となるのが雑談配信だろう。
会社勤めで帰ってきた社会人、勉学に勤しみながら聞く学生、この時間でも働いている〆切り前の憐れな作家などが耳を傾けていた。
「こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフVTuberの森焼イセルだ! 今日もエルフの森のために配信するぞ~!」
●こんくっころ~!
●こんくっころ~!
●こんく!
●コォンクゥッコロゥォオオオオ!!
●オーク語がいる
●くっ、殺せ!
●ついえら
「今日は雑談の予定だが……。牙太からもらった台本によると、ここで普段の生活などを話せと書いてあるな」
●草
●台本言っちゃったw
●牙太社長の苦労が忍ばれる
●エルフの普段の生活ってどんなの?
「他に何も書かれてないから、自由に話せと言うことか。そうだな……今の住所は……」
●おいばかやめろ
●だから住所は言っちゃダメ!
●牙太社長きてー!!
「イセルぅー!! それはNGだぞー!!」
●社長リア凸キター!
●これがオフコラボですか
●男でもコイツだけは許せる
●牙太社長のファンです
「だ、大丈夫だ。自分も成長している。住所なんて言わない……言わないぞ……!」
「それならヨシ! 失礼しました、リスナーの皆様! さらば!」
●帰っちゃった
●帰ってくれキバトラマン
「……というわけで詳細な場所は言えないが、住んでいるところは狭いがそれなりに快適だ」
●日本って狭いからね
●田舎は広いぞ
●企業Vはスタジオの関係で都心なんじゃね
●ちゃんと寝られてる? お母さん、心配です
「お母様!? いや、見ているはずないか。ん~、そうだな……ベッドの質がなかなか良くて、全裸で寝られるので文句なしだ。戦場で作る簡易ベッドだとチクチクしたり、最悪なときはここでは言えないような劣悪さが……」
●全裸!?
●まさかの全裸
●www
●やったぜ!
●これはセンシティブ
●ベッドになりたい
●俺が! 俺たちがベッドだ!
●お前ら、ファンアート頼んだぞ!
●やめなー
●コメント欄が急加速して草
●マジメなコメントしろw
●エルフの国と日本の家って他にどんなところが違うの?
「基本的にそこまで大きくは変わらない。地球世界は科学技術が進んでいるが、天球世界は魔術方面が進んでいるからな。こちらでいうエアコンやコンロ、水回りなどは魔道具でやっている」
●魔道具はエコそう
●魔石とか消費するオチw
●俺ニートで今月の魔石代が払えなくて魔道具が動かないよ~!涙
●異世界でも働かなくちゃ……
●食べ物はどうしてるの? エルフは野菜しか食べないイメージ
「食べ物は、天球から持ってきた携帯用食料を食べている。まぁ、貴様ら人間に言ってもどんな物かわからないだろうが、特殊な木の実などをすり潰し、固めて乾燥させたもので……」
●レン○スだ
●レン○ス! レン○ス!
●レン○ァ”ース!!
●レン○スやん
●みんな大好きレン○ス
「妙にコメント欄が統率されているな……。そうか、地球でも似たようなものが知られていたのか。世界の成り立ちからしたらそうなるか」
●世界の成り立ち?
●地球の食べ物は何か食べないの?
●肉食え肉
「地球の食べ物は食べる必要がないだろう。エルフの携帯用食料は完全栄養食だ。これだけで生きられる。野菜ならともかく、肉を食え? あんなマズい物、食べている奴の気がしれん」
●きたー! エルフの肉嫌い!
●いいから食ってみな。飛ぶぞ
●ベジタリアンってこと?
●肉は美味しさでカロリーが消費されるから実質カロリーゼロ。ヘルシー
●肉を食わないと人生損してるよ
●バランス良く食べろw
「な、何か肉を食わせようというアピールがすごいな……。これが人間の世界か……」
●みんな、異世界のエルフさんに自分の世界を知ってもらいたいんだよ
●レン○スだけじゃ心配
「に、人間共……おまえら……心配してくれて……」
●泣いてる?
●泣かないで……
●泣きのポイントがわからねぇw
●草
「よし、わかった。今度肉を食べてみて、その感想を伝えよう。約束だ!」
***
「――と、その場の勢いで約束をしてしまったのだ……どうしたらいい……? 牙太……」
「うーん、外に肉でも食いに行くか? 俺も三年ぶりに外食したいところがあるし」
というのを事務所で二人話していると、秘書子が真顔で言ってきた。
「登録者数も増えて魔力収集も順調なので、ここはリフレッシュデートですね」
「ぶほぁっ!?」
牙太は思わず噴き出してしまった。
男である牙太と、女VTuberであるイセルがデートをしろという頭のおかしい言葉。
イセルだけは意味がわかってないらしく、首を傾げながら訊いてきた。
「デート?」
「お、お前まさか……デートをしたことがないというのか……?」
「ふんっ! 女騎士の日々にそんなものはない! うっすらと聞いたことがあるような、ないような感じだ! それで、どんな意味だったか?」
ここで言うと絶対に面倒なことになる。
牙太はデートの意味を誤魔化すために、強引に話を進めようと決めた。
「よし、明日は外へ遊びに行こう! 配信のネタ集めにもなるし、俺もエルフが肉を食ったらどうなるか気になるしな! あとはクソダサTシャツ以外の服も買え! スタジオへ出かけることになったらどうするんだ!」
「何か急に早口でグイグイ来るな……牙太、どうしたんだ……?」
「はははははイセル気のせいだ!」
何とか危機を脱出できたと思ったのだが、笑顔の秘書子が解説をしてしまう。
「デートとは一般的に『好きな者同士が出かけて仲を深め合う行為』です。これを繰り返して結婚するケースが多々あります」
「な、ななななななななな!?」
「うわああああああ秘書子くぅぅぅぅん!!!!」
とても気まずくなった牙太とイセルだった。
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