得意なこと、苦手なこと
森焼イセルの初歌配信。
結果から言うと
「も、もう自分は二度と歌わない……」
「リスナーは喜んでくれたじゃないか……うん……、悲惨だったけど……」
イセルが歌う可愛い曲は、若者に人気のボーカ○イド曲から、アニソン、一昔前のアイドル曲まで幅広く揃えられていた。
選曲としてはあまり奇をてらわずにド鉄板のストレート。
どう転がっても平気だと思っていた。
しかし――
***
『こんくっころ~! 異世界からやってきた姫騎士エルフVTuberの森焼イセルだ! では早速だが〝メルトン〟を歌うぞ。~♪ ~♪』
●こんくっころ~!
●こんくっ……歌声が酷いw
●地球世界(笑)で初めての歌だししゃーない
●謝って! 作詞作曲の人に謝って!
●コイじゃなくてコエが融けてるw
●想いも届かないやろなぁ……
●わはは! いいぞもっとやれ!
『に、人間共には理解できなかったようだな……!』
●草
●ヘタ可愛い
●万病に効く
『ふんっ、今にこの森焼イセルの歌の上手さをわからせてやろう! 次は〝うまぴょん伝説〟だ! 乗馬は得意だからな! これなら文句を言わせまい! いくぞ! ~♪ ~♪』
●二頭身の白い馬が脳内に浮かんだ
●歌詞以上に歌声が意味わからないw
●レースで負けそう
●おぉっと! 森焼イセル! ここで逆噴射だー!
『こ、こんな屈辱は初めてだー!』
●プルプル震える動く立ち絵が可愛すぎる
●チャンネル登録高評価RTいいねしました
●はぁ~……癒やされるわぁ~……
●ガチ恋しました
***
「ああああああああああああああああああああああ」
イセルが初歌配信を思い出し、頭を抱えてゴロゴロと転がっている。
とても愉快な動きだったので、牙太はTwiitterで実況してみた。
RTといいねが付きまくってバズった。
気付かれる前にスマホをしまう。
「初歌配信は大好評だったな!」
「あんなものが大好評なわけあるかああああ!!」
「でも、次のFPSゲーム配信は上手かったじゃないか」
二人はその配信をホワホワホワンと思い出した。
***
『こんくっころ~! 今日は人気のバトロワFPS? という
●こんくっころ~!
●待ってました!
●VTuberの定番だよね
●エルフを狩るプレイヤーたち(56人)
●へただったらゆるさない
『操作方法は頑張って覚えてきたぞ……! このマウスとキーボードで動かして……』
●エルフなのに機械に適応できるって設定おかしない?
●でも、歌は適応できず下手だぞw
●歌の才能を失った代償として……
『うるさいぞ、人間共! ええと、キャラは誰にしようかな……』
●好きなのでええで
●最強移動キャラのブリュンヒルデ以外ありえない。絶対にブリュンヒルデにしろ、それ以外はダメ、他は無能
●指示厨おじさんキター!
●PUPEXになると沸いてきて草
『見た目が気に入ったからアイアンゴーレムみたいな奴にしよう』
●ガン無視で草
●なんで俺の言うとおりにしないんだこの馬鹿VTuber!
●指示厨……キレちまったよ……!
『……銃という魔術を放つ道具、すごく扱いが難しいんだが』
●即倒されて最下位ワラタ
●だから俺の言うとおりにしておけばよかったのに! 許してやるから次はブリュンヒルデを選べ! ランクエイリアンからの最後の忠告だぞ!!
●コメエイリアンこえーw
『お、このアリシャという女勇者は剣を持っているな! 騎士の自分にピッタリだ!』
●それは近接特化のネタキャラのザコ
●FPSにそそそそそそそそソードw
●オイオイオイ、死ぬわアイツ
●でもイセルちゃんが失敗するシーン見たくない?
●可愛いから見たい
●また失敗してもお決まりのパターンで飽きる
●うるせぇ黙れイセルを見に来てんだ
●なんで俺の言うとおりにブリュンヒルデを選ばないんだこのちょうしにのりやがっててめぇえらそうに
●PUPEXって本当に荒れるよね……
『よくわからないが、コメント欄が盛り上がっているな! よし、その声援を受けて、勝利の剣を捧げようではないか!』
●約束されし敗北の剣w
●負けフラグ乙!
●あーあ、本当に銃を拾ってない
●前回のチャンピオンっぽい三人組が迫ってきたー!
●終わ……アレ?
●一人無傷で倒した
●二人に撃たれてるけどノーダメ? チートを使ったのか?
●おいおい、弾丸を剣のシステムで弾くのって1フレーム(0.03秒)の判定だよな……
●ありえねー
『実戦で魔術や矢を斬るのより簡単だな』
●こんなときまでロールプレイを忘れずに草
●ガチでネタキャラを使いこなして無双してやがる
●ウッソ、オカシイゾ、オカシイゾ
●チーターや! こんなのチーターや!
●これはリアルキ○トさんかな?
『全員を斬り殺したぞ。これでいいのか?』
●チャンピオンになっちゃった
●姫騎士の名に偽りなし
●PUPEXに新たな戦術を作りだしてしまった……
●前世がプロゲーマーか?
●プロゲーマーでもありえないって!!
●ガチ恋しました、女だけど結婚してください
『楽勝だな。次も同じように――……ん? 何か異常な操作を検出してBANされたと出たぞ?』
●チーターきたー!
●大炎上不可避
●いつかやると思っていました
●チャンネル登録解除しますね……
●幻滅しました
●汚いなさすが女騎士きたない
『ま、待て!? 自分は何も汚いことなどしては――』
『突然、失礼致します。社長の牙太です。こんなこともあろうかと、操作しているところを撮影しておきました。どうぞ、こちらです』
●いきなり実写が流れて草
●手元と画面しか映ってないけど反射に気を付けてー!
●メチャクチャ綺麗な手
●危ないから実写は手袋つけなー
●女騎士ならもっと手が荒れてるイメージw ロールプレイちゃんとしてw
『ボロボロになるまで鍛練を積んでも、妹が回復魔術をかけてくれるんだ。どうだ、優しくて最高の妹だろう?』
●たまに出る妹エルフちゃんの話好き
●そんなことより操作がすげぇ
●本当に反応して操作してるよ
●人間業じゃねぇ……
●レッツゴー! イセル!
***
「あの配信も、チートとかいうズルを疑われたんだぞ!? 不名誉すぎる!!」
「でも、俺が出した動画でどうにかなっただろう? イセルの反射神経はそこらの人間を越えているから、チートとして検出されるんじゃないかと思っていたんだ」
「そこは……まぁ……牙太に感謝する」
牙太はすかさずTwiitterにイセルのデレ実況をしてバズらせた。
「牙太、何をしている?」
「いや、何でもない。それにすぐBANが解除されて、ゲーム会社の方から謝罪と案件を回されたじゃないか」
「それはそうだ。自分は何も悪いことはしていないのだからな!」
「しかも、登録者数がメチャクチャ伸びた」
歌配信とFPS配信で、35万人→45万人という信じられないくらいにチャンネル登録者数が増加したのだ。
ある程度は伸びると思っていた牙太も想定外だ。
「……BANされたとき、すごく焦ったんだからな!」
「イセルでも、そんな風に焦るときがあるんだな」
「こ、この! 馬鹿にしてー!!」
「ははははは、叩くな痛い痛い……ゴフッ」
クソダサTシャツのイセルにポカポカと殴られる牙太であったが、その見た目からは想像も出来ないくらい攻撃力のある打撃だったので、病院へとかつぎ込まれたのであった。
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