始まりの一冊
ある日、私は両親に連れられて書店へと足を運んでいた。
両親が雑誌に手を伸ばしている間、あまりに暇を持て余していた私は店内を散策し、一冊の本に興味を示した。当時はライトノベルという概念すら知らなかった私にとって、それは未知そのものであった。
漫画とは明らかに違う。タイトルや表紙は多少似通ってはいるものの、活字で全てが構成されたその一冊に、私はどういうわけか強く惹かれていた。
その書店では、漫画と違い小説に封をするようなことは無かった。思えば初めに手に取ろうとしたのは「漫画のようなタイトルばかりなのに何故封がされていないのだろう?」というところがあったのかもしれない。
一文字、一行、一頁、一節、一章と読み進めるにつれ、それに比例するように私の意識は物語に惹き込まれていく。
親に呼ばれるまでの一時間足らず。たったそれだけの間に、その一冊を読み終えてしまった。
私は歓喜した。実在しない人物、実在しない場所、実在しない理。何もかもが空想で作られた虚構の書物。作品の面白さは言うまでもなく、そのような世界が存在したという事実に、私は歓喜した。
しかし、当時小学生の私にその作品を購入するだけの予算は無く、断念せざるを得なかった。
次に書店に出向いた際には必ず購入しよう。そう決心した。はずだったのだが。
その本をレジに持ち込んだのは中学に上がって間もない頃まで進む。
何故それほどの時が開いたのかは、もう思い出せなかった。
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