第8話この国の希望
新任の騎士団長としてもう古い元テファリーザ王国時代の砦の大国の騎士団長に挨拶に行った。テーブルに足を乗せてカードゲームに興じている。声を書けても反応なしだった。とんでもない不良騎士団長だと思う。実際これが当たり前で、騎士団長とは名ばかりで、元王国の女達を娼婦のように扱い、侍らしている。税をごまかして自分の懐に入れていた。『ハザン商会』の名でも「こっちは好きなようにやっている。お前達まだ十五歳だろう。あまり生き急ぐなよ」にやにや、煙草の臭いをまき散らしながら、アリアとセイラを物色している。
「どうだ、お前達も加わらないか、いい思いをさせてやる。顔の綺麗な坊ちゃん、お前もこの地方のやり方を学ぶことだ」と
「お前達は騎士団長失格だ、これからは僕達のやり方で統治を変えていく。お前達はいらない。大国に逃げ帰るがいい、部下も全員いらないぞ、この地方は力あるものの物だ」
僕達は怒り、喧嘩を売り女達は悲鳴を上げて逃げていく、何かを期待しているかのような目だ。全員抜刀していた。殺し合いが今にも始まりそうだった。
「おいおい、こっちが親切丁寧に教えてやっているのに賄賂のやり方の一つも知らないのかよ。今なら、詫びを入れれば本国に知らせずに済ませてやるぜ」
「好きなように報告するがいい、『ハザン商会』の物資がお前達のせいで
「ちぃ、少しだけ御曹司に痛い目を見せてやるぜ、おらっ!!!」
いらだちを隠さず、テーブルを蹴倒して剣を振り下ろしてくる騎士団長達に、ゆっくりとしか勢いを感じない。すかさず、手首と首筋、左胴と足首に四連撃を打ち込む、くるりと回転して、吹き飛ばされる騎士団長の頭、後の三人は実力差に怯えて剣を手放して落とす。
「おっと、アリアとセイラに害をなすものは手加減しないぜ」カイルが残り三人を叩きのめす。鎧部分を狙った峰打ちだが、怪我をするには十分だったようだ。
残りの部下の騎士が集まってくる。僕達四人は背中をお互いに守り、今日一番にすることは人事の刷新だなと思い、百人はいる砦の警護の騎士を叩きのめしていく。弓矢を奪い、肩口を狙い正確に射貫いていく。鎧の隙間に正確に射撃していく。セイラは儚げだった時には考えられないような、正確な剣技で騎士を叩きのめしていく。アリアは足技も使い蹴り倒し、手足の腱を切り裂いていく。弓矢を撃って来るが当たる前に剣で叩き落す。しばらく経つと全員うめき声をあげて動かなくなってしまった。
「初めまして、今度赴任してきた外大陸のハザンだ。『ハザン商会』の責任者でもある。弱卒はいらない、本国には貴族の知り合いもいる。君達のことは細かく報告させてもらう。お前達は騎士失格だ。荷物をまとめてこの砦から出ていけ!!!」
「くそ、何でこいつらこんなに強い、ああ、出て行くよ、こんな場所あぶれ者の集まる所なんかなもう用があるものか!!!」騎士たちは立ち上がり剣を杖代わりに砦から出て行く。
「わっ!!!」と歓声が上がり、住民は騎士団長達に石を投げつける。
「お前ら、覚えていろ、くそ、財力でもみ消されてしまう。俺達好きでこんな土地に来たわけじゃねえ、好き勝手やりやがって、必ず殺してやる、また女子供から犯しつくしてやるぜ」
ぶつぶつ文句を言いながら去って行く騎士団。ここまで国土を荒れ果てさせた騎士団に魔法薬をくれてやるような慈悲も持っていなかった。
近くの村の村長が這いつくばって礼を述べる。
「ハザン殿、今回の件誠にありがとうございました。『ハザン商会』の支店の商品も出回るようになり助かっております。農作物の新種の種も荒廃した土地で根付き生産しています。騎士団の荒くれたちの暴挙も収まりそうです。まだまだこの地方にはあああいう輩がたくさんいます。改革をしてくれるハザン騎士団長を私達は喜んで受け入れます」
涙を流して両手を握る。ふと村長は気づく、「ハザン殿どこかで会ったことは……いや、今日が初めてでしたな、亡き女王様に良く似ておられる。これも巡り合わせでしょう、食料を大量輸送する計画も立てておられるとか、子供は食えず、女達は身を売るしかない、この地方をどうか助けてください。男達も労役に取られ家庭は貧困の一途をたどっていました。そして大国から送り出されてくる荒くれの騎士団にいいようにもてあそばれる日々、あなたたちは絶望のこの地を救う救世主です。力になることならいつでもお申し付けください。いつでもこの命かけますぞ」村長はまた泣いて農作業で大きくなった手でこちらの手を握りしめる。亡き女王、お母さんはやはり亡くなっていたのか、残念に思う。
「村長さん達には苦労をかけました。騎士団長として新たな編成と『ハザン商会』の財力でこの土地を豊かに住みよくして見せます。だから、諦めずに頑張りましょう。豊かな農地を蘇らせましょう。物資の運搬は順調に運んでいます。後は人集めですね。大国との人脈を使って良く働く騎士団を作り上げます。蒸気機関車計画も話し合いで持って行きます。期待して待っていてください」僕は安心させるように微笑む。アリア達もその様子を見て安堵したように見守っている。
「それで、村長さんあの忌み土地ついて教えてくれませんか?知っている限りでいいです」
「それだけは、ハザン殿でもこの元テファリーザ王国に伝わる神話です。決して立ちいってはいけないと代々の当主の方々の聖地です。幾ら何でもお教えできません」
「いや、噂で聞いたくらいで、興味はないのです。失礼しました。男手が労役で取られているなら、大国の騎士身分で品性方向な人材を集めるべきですね。女性でも扱いやすい農作業機械車の導入も検討中です。薬草薬も程なくしてこの地方に出回るでしょう」
「そうですか、そんな農地を開墾する機械車があるのですか、ありがとうございます!!!あなたはこの地方の一生の恩人です」感激で胸が震えている村長。
周りにいる住民もカイル達が説明をしている。
「ハザン、実験も兼ねて試薬品で動く車は検討中よ、もう実用段階にこぎつけていたのね。この元テファリーザ王国に使うなんていいことだけど、あの連中戻って来やしないかしら?『ハザン商会』の支店から指示したほうがいいわ。近隣の町や村に声をかけて動きましょう。四人じゃ危ないわ。副責任者としてアリアは守ったほうがいいわよ」
「セイラ、私も騎士団長よ、ハザンの妻として後れを取るつもりはないわ。今日は家に帰りましょう。ハザン。仕事が待っているわ、人も集めないといけないし色々これから大変よ」
「僕もそう思うよ、大国の騎士身分で食い
「そうだな、これから忙しくなる、人材も新たに募集しよう。村長さんこれからこの地方は良くしていきます。一緒に頑張りましょう」
「はい、まず、食料問題と不良騎士団を解決して欲しいです。尽力なさると思いますが体には気をつけて下さい、騎士団長殿」
「では、僕達はこれでこの砦にある物資は自由に使ってください。年を越せるよう頑張りましょう」四輪車に乗って『ハザン商会』の支店に帰っていく。
「まだ若いのに素晴らしい才覚の持ち主だ、皆農作業に移るぞ」
「村長、この砦ため込んだ物資が山の様に積んでありますよ、本当に戻していいですかね?」
「ハザン殿が許可した、いいはずだ、大国に名をはせる『ハザン商会』の責任者の言葉だ。救い主が現れた、呪われ子が生まれて十五年こんな日が来るとは、夢にも思わなかった」
老人と女子供は次々と砦から物資を運び出す。
「しかし、ハザンさん、女王様に似ていますね、横顔がそっくりでしたよ」
「それは他人の空似だろう、女王様がまだ生きていることはまだ話しては駄目だぞ、女王様はこの国の希望なのだ」
「わかっていますが、忌み土地を聞くなんて数奇な運命があるとしたら、呪われ子が帰って来たかもしれませんよ。ハザンさんがそうなら国のためにこんないいことはないのですけど」中年の女達は十五年前の誕生を知っている。
「私もそう思いたい、贅沢は言わないことだ。『ハザン商会』の責任者として帰って来て欲しいと思っているよ」
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