其之五 シミュレーションゲーム

 ――やっと手に入った。

 発売してから早三年、もうとっくの昔に中古と化してしまったこのゲームだが、

今年貰った高校の入学祝いのお小遣いでやっと購入する事が出来た。ちなみにその内容は所謂シミュレーションRPGで、僕好みの可愛い女の子達が広大な舞台ステージで、時に過激に、時に血肉を巻き散らしつつ、様々な謎に満ちたダンジョンを

突き進んでいく。といったものとなっている(事前に情報は調べてあるし、勿論体験版もプレイしてある)。

「っと、そんなのはあとあと。早速プレイしないと!」

 僕はワクワクとした気持ちでソフトを本体に挿入し、電源を入れた。その途端、

 ――あれ?

 唐突に眠気に襲われた、そのまま机に突っ伏してしまった。


 目覚めると、

「ヤッホー!」

「あら、やっとお目覚めですか?」

 そんなふうに、目の前にはどこかで見覚えのある女の子達が……、

 ――女の子?

 「ひょっとしてキミ達……」

「口利いてる暇なんてねぇぞ!」

 そう言って、一人の女の子が僕に向かって突進してきた。

「いってぇな、何しやが……」

 そこには先程つい一瞬前に僕を庇ってくれた少女の、何だろう? 腕? が転がっていた。

「ったく、いてぇのはこっちのほうだっつうの。で? お前は大丈夫か?」

 その子の腕の傷口からは夥しい量の出血が見て取れた。それでも尚、少女は笑顔を向けていた……ハイライトの消えた、張り付いた笑顔が。

 それにも関わらず、或いはヒーラーだろうか? その少女が、「全く、仕方があり

ませんわね?」などと言い、詠唱を口にした。すると、その傷口は徐々に癒えてい

き、次第に元の綺麗なそれに戻っていた。その代わり、

 ――見なかったことにしても、いいよね?

 どこぞのナントカマンよろしく、その見てはいけなかったが転がっていた。

 そしてゲームは進み、ラスボス戦。その間僕は何度も吐き気を覚えたが、どうにか堪え、ここまで辿り着くことが出来た。

 ――この一戦さえ乗り越えればエンディングだ。そうしたら真っ先に売り飛ばしてやる。

 そんなふうに内心で決意と覚悟を固め、僕達は最後の戦いに挑んだ。

「これでやっと終わりですわね? ……何もかも……」

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短編集―恐怖彩る九十九物語― 三点提督 @325130

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