第2話 違和感
その日も俺はいつも通り学校に行った。陰キャでボッチとは言ったものの、クラスメイトは男女ともにみんな気さくに接してくれるので、友達が居ないわけでもない。今日は、電車で居合わせた
しかし、校舎に入ると、心なしか、いつもより廊下を往来する生徒が多かったり、いつもより騒がしかったりと、違和感を感じる。
「植村、なんか今日いつもより騒がしくないか?気のせいかもしれんが」
「お前みたいな情報通が知らねえのかよ、有名人が転校してきたって噂でこの週末は持ちきりだったんだぞ!」
有名人が転校。ウェブ小説とかをでしか起こらないシチュエーションだとばかり思っていたし、まさか地方のこんな学校でそんなイベントが起こると思っていなかったので、理解が追い付かない。俺はこの週末を仕事に投じたので、クラスのグループチャットはチェックしていなかった。……あと、勘違いされやすいが、パソコンができるだけで、情報通ではない。
「マジ?そんなことあるんだ」
「しかも、なんと学年は俺らと同じ高1らしいぞ!」
ニヤニヤしながら植村が答える。なんで状況を呑み込めてるんだよ。しかもなんだ、そのいやらしい笑顔は。ノリのいい人って、俺みたいに深く考えたりしないから楽でいいのかな、と、大人ぶって何かを悟ったような気分になりながら、俺は教室に入った。
有名人が転校してきても、俺とはそう交わることはないだろう。その人も忙しいだろうし、そもそもクラスが同じになる確率だって低い。俺が積極的に絡みに行くのもおかしな話だし、恋愛小説によれば、そういうことをすれば●意を持った視線が飛んでくるらしい。まあ、なんだかんだ今日も普通に過ごせそうだな。朝の休み時間はそうやって楽観的に過ごした。
朝学習の時間を終えて、先生が連絡事項を淡々と伝えていく。ああ、やはり転校生はこのクラスではなかったのだなと、ぼうっと聞きながら感じた矢先、先生が驚きの発言をする。
「皆さんの間でも、もしかしたら噂が流れているかもしれませんが、このクラスに転校生が来ています」
「え!?」
「「「おおおおお!!!!」」」
俺の予想が一瞬で覆されて、とっさに驚きが声に出てしまったが、ほかのクラスメイトの阿鼻叫喚のおかげで俺が注目を集めることはなかった。
そして入ってきたのは――
「初めまして、石丸彩恵と言います。歌ったり踊ったりするのが好きです」
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