第10話(4) 先輩方とトレーニング
「古墳さん!」
「止めんといてくれ!」
平成の制止を振り切って、古墳は時管局の廊下を走る。平成が叫ぶ。
「時代の先輩として古墳さんの力をお借りしたいんです!」
「⁉ なんやて……?」
古墳は立ち止まって平成に振り返る。平成は笑顔を浮かべる。
「場所を移すとしましょう」
平成たちは大きな空間が広がる部屋に入った。古墳が周囲を見回しながら問う。
「なんやここは……どういう部屋やねん?」
「説明が面倒なんで……要は練兵場です」
「練兵? 何の用があんのや?」
「……こういう用ですよ!」
「!」
平成は七支刀を持って古墳に勢いよく斬り掛かるが、古墳も自らの七支刀でそれを簡単に受け止めてみせる。平成は舌打ちする。
「ちっ、このスピードとタイミングで受け止められるとは……」
「傷心中やからって甘くみてもろうては困るな……ふん!」
「ぐっ!」
古墳は平成を押し返す。古墳は両手をわざとらしく広げて呟く。
「いきなりな気もするけど……まあええわ、軽く揉んでやるで」
「言いましたね!」
平成が再び斬り掛かる。しかし、古墳は華麗に受け流す。
「そんなもんかいな⁉」
「くっ……」
「ほんならこっちからいくで!」
今度は古墳が斬り掛かる。
「むう⁉」
「どうした⁉ 受けるのに精一杯やないか!」
「見たことのない剣さばき! これが古代の剣法!」
「わ独自の剣法や!」
「独自の⁉」
「『
「む⁉」
「『
「ん?」
「『
「ちょ、ちょっと待った! 古墳の形をなぞっているんですか⁉」
「そうや! よく気付いたな! 全ては古墳に通ずるんやで!」
古墳が胸を張る。
「古墳へのこだわりがエグいな!」
「なにごともこだわりが大事やで!」
「ふむ……せい!」
「! ……今のはなかなか鋭い一撃やったで」
「『メガドライブ』!」
「おっと!」
「『セガサターン』!」
「うおっ!」
「『ドリームキャスト』!」
「うっ! 良い気迫やな!」
「SEGAのゲームは決して負けていない!」
「ふん!」
古墳が平成の刀を弾き飛ばす。平成は我に返る。
「はあ、はあ……」
「な、何を言うているかさっぱり分からんかったが、ええこだわりを見せてもろうたで」
「そ、そうですか……」
「今日はこの辺にさせてもらうで」
「ご指導ありがとうございました!」
平成は古墳に頭を下げる。古墳は手を振る。
「別に大したことやあらへんがな」
古墳は部屋を出る。平成は後に続く。
「お送りしますよ」
「いやいや、ここ出たら真っ直ぐ行ったら玄関やろ? ここで構へんよ」
「そうですか、お疲れ様でした!」
「はい、ご苦労さん~」
古墳が廊下を歩いていると、別の部屋から弥生と令和が出てくる。
「貴女が勾玉を使って温度を大幅に上げ下げ出来るとは思わなかったわ。ただ、温度調節が今ひとつ効かないってのはちょっと考え物ね……」
「すみません、加減がなかなか難しくて……」
令和が申し訳なさそうに頭を下げる。
「まあ良いんじゃないの? 要は使い様よ」
「弥生ちゃんと令和ちゃん、何の話をしてるんや?」
「あ、古墳さん……」
「なんだ古墳か、つまんないわね……」
「出会い頭につまらんってひどない⁉」
弥生の言葉に古墳が愕然とする。
「女の話を立ち聞きするなんて趣味が悪いわよ」
「聞こえてしもうたもんはしゃあないやろ……勾玉はわも令和ちゃんから貰うたけど、温度調節なんて便利なことはさっぱり出来へんで?」
「アタシも実はよく分かっていないけど、こういうのは持ち主の才覚にもよるからね……」
「才覚……ということは?」
「アンタの場合は単なる装身具に過ぎないようね。つまりはセンスなしってことよ」
「セ、センスなし⁉ ひ、ひどない⁉」
「事実を言ったまでよ。ああ、令和、見送りはこの辺で良いわ」
「そうですか……?」
「なによ、その心配そうな目は……ここをまっすぐ行けば玄関でしょ?」
「そうですが……せっかくですから玄関までお送りします」
「良いって言っているのに……しょうがないわね」
「ふふっ……弥生ちゃんはこの距離でも迷う危険性があるからな」
古墳が口元を抑えて笑う。弥生が睨む。
「うるさいわね……大体何でいるのよ? 時管局に顔を出すなんて珍しいじゃない」
「それはお互い様やろ。調査結果が出たそうやからその報告を聞きにきたんや」
「調査結果?」
弥生が首を傾げる。
「そっちでも現れたっていうやん? あの白色の連中のことや」
「! ああ……アタシとそっくりな恰好をしていたわね……で、報告は?」
「ああ、連中は……⁉」
時管局の玄関を出たところ、白い影に弥生と古墳の身がさらわれる。令和が驚く。
「弥生さん! 古墳さん!」
「どうした⁉」
「平成さん! お二方が! あ、あれは⁉」
令和が後ろから駆け寄ってきた平成を見てから、改めて弥生たちの方を見ると驚く。弥生と古墳に似たような恰好をしているが、髪や服装が真白な男女が立っていたからである。
「お、お前らは⁉」
「「全てを白に染める……」」
男女は声を揃えて静かに呟く。
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