第6話(4) 白鳳と平成、ラップバトル、開催
「YO、YO! マイクチェック、1,2……」
平成はマイクを取り出し、呟き始める。令和が戸惑う。
「ど、どこからマイクを……⁉」
「HEY! SAY! 俺様のライムに震えな! 文字通り時代のレペゼンだ!」
「……」
「ビビってんならかましていく! ミレニアムをまたいでいく!」
「よ、よく分からないですけど……あ、白鳳さんもマイクを手に取った⁉」
「『キトラ古墳』に描いていく! 遥かなる宇宙への天文図!」
「た、確かにキトラ古墳の壁画には天文図が描かれていますが……意外とノリが良い⁉」
「案外負けず嫌いなのだよね……」
令和の隣で飛鳥が呟く。
「向井千秋は日本初の女性宇宙飛行士! スキーが特技!」
「『
「私の時期の気もするが……初の女性というフレーズにアンサーしたのだね」
「は、はあ……」
何故か慣れた様子でラップバトルの解説を始めた飛鳥に対し、令和が困惑する。
「様々な文化の隆盛! 広がる多様性!」
「蘇我氏の専横を許さない! 立ち上がる朝廷!」
「!」
「平成さんが戸惑った!」
「白鳳がいきなりパンチラインをかましてきたね」
「パ、パンチライン?」
「白鳳のバイブスが段々と上がってきたようだね」
「え、えっと……」
「先攻後攻が入れ替わるようだよ」
黙り込んでしまった平成に白鳳が畳み掛ける。
「『
「お、おう……」
「平成さん、おうって!」
「フロウに乗れていないね」
令和が肩を落とし、飛鳥が苦笑する。
「
「……なぎさとほのか! ふ、『ふたりはプリキュア』!」
「二人に反応しただけじゃないですか!」
「う~ん、ちょっと弱いかな?」
飛鳥が微笑みをたたえつつ小首を傾げる。
「始まる大化の改新! 国家体制を一新!」
「広がるインターネット通信! 『ニコニコ動画』の配信!」
「大化の改新にニコ動で挑む⁉」
「少しばかり無謀かな」
「くっ……」
平成が苦しそうな顔を見せる。白鳳が笑みを浮かべながらさらにボルテージを上げる。
「停滞同然の沈黙! 見ていられない体たらく!」
「ああ! 平成さん、ついにディスられてしまった!」
令和が頭を抱える。飛鳥が呟く。
「いや、ここからのようだよ……」
「対外戦争での敗北! 失う権益と影響力!」
「おおっ! 平成さんがやり返した!」
「……『
「白鳳も負けていないね」
「同盟国である百済の復興を目指した日本は、645年、白村江の戦いで
「西日本の各地に朝鮮式山城を築いて防備を固め、都を飛鳥から内陸の大津に移し、安全を確保するととともに、中央集権化を推し進めた……」
「転んでもただでは起きないということですね」
飛鳥の言葉に令和が頷く。
「む……」
「また平成さんが黙ってしまった!」
「白鳳のカウンターが見事だったね」
「また白鳳さんのターン!」
「中大兄皇子が『
「木村拓哉、『キムタク』はかっこいい! 加山雄三は『バイオハザード』が得意!」
「平成さん、ずっと何を言っているんですか⁉」
「『
「『加藤の乱』が不発! 永田町にはため息が多発!」
「おおっ! ちょっと悪くないかも!」
「この流れを続けられるかな?」
「いや、まだ白鳳さんのターンです!」
「大海人皇子が『
「仙道は『スラダン』! 律は『けいおん!』!」
「それを言うならスラムダンク! というか、律に反応しただけ⁉」
令和が愕然とする。
「刑罰を定めた『
「平成さんは全然整っていませんが!」
淡々と説明する飛鳥に対し、令和が呆れた声を上げる。
「身分制度『
「未曾有の好景気『バブル』は崩壊! 本格的に経済は停滞!」
「もう自分で自分をディスっちゃっていますよ⁉」
「国史の編纂命ず、国内向けに『
「コンテンツの充実、国内向けに『セカチュー』! 対外向けに『ピカチュウ』!」
「『世界の中心で愛を叫ぶ』! 通称『セカチュー』! 確かに日本向け感は強いですが! ピカチュウはもはやジャンル違いでしょう!」
「古事記は
「大学入試は科目内容を暗記! 新歓コンパで一気!」
「暗記被っちゃっているし! 一気コールは悪しき慣習でしょう!」
「『
「『ひとつなぎの財宝』は『ワンピース』! 『名探偵コナン』は『真実はいつもひとつ』!」
はあはあと肩で息をする白鳳と平成。
「……ふん、どうしてなかなかやるようだな」
「いや、あんたのライムの一つ一つがまるで白鵬関の張り手のように強烈だったよ」
白鳳と平成が拳を突き合わせる。飛鳥が微笑む。
「互いに良きマイメンになれたようだね」
「もはや何がなんやら……」
令和は両手で頭を抱える。
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