第6話(3) 馬子、妹子、マツコ
「寝具をともにする……? う、羨ましい、じゃなくて、ふ、ふしだらな!」
「ほら、やっぱり誤解を招いている!」
「事実を言ったまでなのだけどね」
「言い方ってもんがあるでしょう!」
「……」
「す、すげえ、睨まれているぞ……」
「……どなたなのですか?」
「飛鳥さまから離れろ! 怪し気な賊め!」
小柄な男性が飛鳥と平成たちの間に割って入る。平成が戸惑う。
「怪しげな賊って……」
「平成さんが怪しいのは合っていると思います」
「令和ちゃん、さっきから酷くないかな?」
「率直な意見を述べているまでです」
「だからそれが酷いって……」
「何をこそこそと話している!」
小柄な男性が声を上げる。飛鳥が落ち着かせる。
「落ち着きたまえ……こちらは平成くんと令和さんだ」
「平成、令和……時管局現代課の?」
「そうだよ」
「そ、それは失礼した……私は時管局古代課の『
小柄な男性が頭を下げる。平成たちは驚きながら頭を下げる。
「は、白鳳⁉ 実在したのか……」
「ご存知なかったのですか?」
「ああ、全く……」
「……何度か顔を合わせたことはあるはずだぞ」
「そうだっけ?」
白鳳の呆れ気味の言葉に平成はすっとぼけながら頭を上げる。飛鳥が笑う。
「まあ、会合の類はほとんど私が顔を出していたからね、彼はシャイだから……」
「シャイ&飛鳥か」
「どこぞのアーティストみたいに言うな……」
「そう言われると、何回か会ったことがあるな、飛鳥さんと似たような恰好だから、『ジェネリック飛鳥』かと思ったぜ」
「リングネームみたいに言うな……」
「冠は織で縁取りし、金銀の鈿で飾っていますね。服の色は浅紫です」
「お二方揃って、『冠はワイン色』だな」
「『恋人はワイン色』でしょう……いい加減某アーティストから離れて下さい」
令和が冷たい視線を向ける。
「へーい……」
平成が首をすくめる。白鳳がムッとした表情で呟く。
「前から思っていたが……何故に貴様のような間抜けが時代なのだ?」
「間抜け……俺のこと?」
「他に誰がいる?」
「これはまた随分な言われようだな……」
「貴様が飛鳥さまと親しげに話すなど……」
「別に良いだろう? 俺だって時代だ」
「例えば……有名人などおらんだろう?」
「おいおい、あんまり舐めたことを言ってくれるなよ。一杯いるぜ」
「ほう……」
「むしろそっちがいるのかよ?」
「『
「む……マ、『マツコデラックス』!」
「『
「う……イ、『IKKO』!」
「『
「ぐ……お、『おすぎとピーコ』!」
「へ、平成さん! 対抗に挙げる人選のクセが凄い!」
令和が思わず口を挟む。平成が首を傾げる。
「なにか間違っていたか?」
「わりとなにもかも間違っています!」
「ふっ、やはり大したことはないな……」
「いや、白鳳、君の人選もどちらかと言えば、私の時期の人選ではないか?」
「む……」
飛鳥の冷静な指摘に白鳳が顔をややしかめる。平成が声を上げる。
「ほらっ! 自分だって大したことないじゃないか!」
「大したことないとはなんだ! 『
「ぶ、文化を推してきたな……」
「まあ、主に美術史上や文化史上の区分ですからね……」
気圧され気味の平成の横で令和が呟く。
「文化や美術だけではない! 『
「645年から650年にかけて行われた一連の大規模な国政改革……」
「そうだ、なかなかよく知っているじゃないか!」
令和の呟きに白鳳は満足気に頷く。平成が首を捻る。
「さすがに大化の改新は知っているが、具体的には何をしたんだ?」
「この改革によって豪族を中心の政治から天皇中心への政治に移行したとされています」
「ほお……」
「『日本』という国号、『天皇』という称号が正式なものになりました」
「へえ……」
「日本史上初めて、『大化』という『元号』も制定されました」
「めちゃくちゃ重要じゃん!」
「ふん……どうだ? そのような重要なトピックスがそちらにあるか?」
「うう……『たまごっちブーム』くらいしか思い付かん……」
「何故にそのチョイスなのですか……」
平成の言葉に令和は呆れる。白鳳が飛鳥に尋ねる。
「飛鳥さま、畳み掛けてもよろしいですか?」
「ふっ、加減してやりなよ……」
「646年に宣下された『
「コーチコウミン⁉」
「土地や民の私有をやめ、全て公のものとした! そして『
「コクグンリセイ⁉」
「さらに、戸籍・計帳を作成し、『
「ハンデンショウジュノホウ⁉」
「最後に、税制改革の実施だ! 『
「SO! YO! CYO! ZOYO⁉」
「ん⁉」
「ラップバトルか! 受けてたつぜ!」
「な、なんでそうなるのですか⁉」
令和が戸惑う中、平成がラップバトルの準備に入る。
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