カウントダウン5話 三厄神

 閻魔大王は、死神の元に訪れた。


死神「大王直々のお出ましとは何事だ」

大王「他でもない粛清リストの件だ」

死神「あれか?誤解してないか。死を決めているのは私たちじゃ

   ない。期待には応えられない」

大王「分かっている」

死神「ならば、神々に申し出すればいいではないか」

大王「そなたも神ではないか」

死神「それは皮肉か」

大王「それこそ誤解だ。実行者への敬意だ」

死神「実行者か」

大王「日の本の人間は可笑しな者が増え過ぎた」

死神「放置にも意味があるのでは」

大王「ない」

死神「では、なぜ、放置する?」

大王「人間に関心がないからだ」

死神「ふん、そういうことか」

大王「分かってくれたか」

死神「関心がないから、私たちが何をしても咎めないと」

大王「そういうことだ」

死神「それは反逆に当たらないか?」

大王「神々の決める人間の生死には二通りある。ひとつはバラン

   ス。ひとつはトラブルによるものだ。異国の神も酷い。人

   畜無害の人間を増やす。その者たちも食べる。作りもせ

   ずにな。天上界の方々は現場を知らないからな。医療を手

   に入れた者は寿命を延ばし、遅れをとった者は先を行く者

   に施しを受ける」

死神「慈愛か。私には無縁だ。感情がないからな」

大王「弱き者を助ける慈愛も人間どもは神の教えに反している。

   躓いた子に直ぐに手を貸す。子は助けらる事を常とし、自

   ら立ち上がろうとしない。暗いと不平を言うよりもすすん

   で灯りをつけましょうとある神は言った」

死神「情けは人の為ならず、誤って、親切にするのはその人のた

   めにならない、か」

大王「助ける、救うは、自ら立ち上げる事を教える事だ。他力本

   願の他力とは他人の事ではない。努力を支える神の力だ。

   努力失くして神はお力を貸さない」

死神「私に説法を聞かせに来たのか」

大王「そなたが感じた違和感を人間どもは感じない。笊に水を流

   すような誤った慈悲。それを金儲けにする者もいる。その

   者たちを粛清したい」

死神「改心でなく、か」

大王「多くの者を裁いている。改心できる者もいる。しかし、性

   根が腐っている者もいる。心身ともに生まれ変わらせるし

   か術はない」

死神「駆除か」

大王「そなたと産み神とで汚染されたバランスを取りたい」

死神「駆除だけでは同じ穴の狢ではないか」

大王「生き神を魂界の者を使い動かす」

死神「それを人間界では内政干渉とか言うのではないか」

大王「背に腹は代えられない、だ」


 死神は大王の本気度は理解したが、リストを渡されるだけで作成などしていない。それを知っていてなぜ自分に願い出ているか理解できなかった。それを見越したように大王は続けた。


大王「そなたには我らが挙げたリストの者に邪鬼を束ねる餓鬼を

   送り込んで貰いたい。聞けば、そなたと餓鬼は精通してる

   とか。疫病神にうま味のある者を教え餓鬼に喰らわし、自

   害へと追い込み、楽をしてると聞く」

死神「裏の他力本願か、人聞きの悪い事をサラリと言う奴だ」

大王「隣国では広げ過ぎた数を粛清しているではないか。同じこ

   とをこの日の本でも行うだけよ」

死神「疫病神・貧乏神が喜びそうな話だな」

大王「陽の目を見ない厄の三大神。その頭領のそなたに頼むのが

   手っ取り早いと思ってな」

死神「産み神からは子を増やしたいが増やせない、とお門違いの

   愚痴を聞かされたことがある。可笑しな輩が善人ぶって子

   育ての大変さを植え付けている、か。悪い奴ほど優しく語

   り掛け本筋から遠ざけるからな」

大王「裏の社会に通じる者の気持ちはよくわかるな」

死神「五月蠅い」

大王「可笑しな輩が平然と闊歩するこの世だからこそ、そなたら

   三厄神の出番かと。そなたらは悪魔ではない神だ。人間を

   良き道に導くのもまた役目かと」

死神「現代版、丑三つ参り、死神の元に訪れた。


死神「大王直々のお出ましとは何事だ」

大王「他でもない粛清リストの件だ」

死神「あれか?誤解してないか。死を決めているのは私たちじゃ

   ない。期待には応えられない」

大王「分かっている」

死神「ならば、神々に申し出すればいいではないか」

大王「そなたも神ではないか」

死神「それは皮肉か」

大王「それこそ誤解だ。実行者への敬意だ」

死神「実行者か」

大王「日の本の人間は可笑しな者が増え過ぎた」

死神「放置にも意味があるのでは」

大王「ない」

死神「では、なぜ、放置する?」

大王「人間に関心がないからだ」

死神「ふん、そういうことか」

大王「分かってくれたか」

死神「関心がないから、私たちが何をしても咎めないと」

大王「そういうことだ」

死神「それは反逆に当たらないか?」

大王「神々の決める人間の生死には二通りある。ひとつはバラン

   ス。ひとつはトラブルによるものだ。異国の神も酷い。人

   畜無害の人間を増やす。その者たちも食べる。作りもせ

   ずにな。天上界の方々は現場を知らないからな。医療を手

   に入れた者は寿命を延ばし、遅れをとった者は先を行く者

   に施しを受ける」

死神「慈愛か。私には無縁だ。感情がないからな」

大王「弱き者を助ける慈愛も人間どもは神の教えに反している。

   躓いた子に直ぐに手を貸す。子は助けらる事を常とし、自

   ら立ち上がろうとしない。暗いと不平を言うよりもすすん

   で灯りをつけましょうとある神は言った」

死神「情けは人の為ならず、誤って、親切にするのはその人のた

   めにならない、か」

大王「助ける、救うは、自ら立ち上げる事を教える事だ。他力本

   願の他力とは他人の事ではない。努力を支える神の力だ。

   努力失くして神はお力を貸さない」

死神「私に説法を聞かせに来たのか」

大王「そなたが感じた違和感を人間どもは感じない。笊に水を流

   すような誤った慈悲。それを金儲けにする者もいる。その

   者たちを粛清したい」

死神「改心でなく、か」

大王「多くの者を裁いている。改心できる者もいる。しかし、性

   根が腐っている者もいる。心身ともに生まれ変わらせるし

   か術はない」

死神「駆除か」

大王「そなたと産み神とで汚染されたバランスを取りたい」

死神「駆除だけでは同じ穴の狢ではないか」

大王「生き神を魂界の者を使い動かす」

死神「それを人間界では内政干渉とか言うのではないか」

大王「背に腹は代えられない、だ」


 死神は大王の本気度は理解したが、リストを渡されるだけで作成などしていない。それを知っていてなぜ自分に願い出ているか理解できなかった。それを見越したように大王は続けた。


大王「そなたには我らが挙げたリストの者に邪鬼を束ねる餓鬼を

   送り込んで貰いたい。聞けば、そなたと餓鬼は精通してる

   とか。疫病神にうま味のある者を教え餓鬼に喰らわし、自

   害へと追い込み、楽をしてると聞く」

死神「裏の他力本願か、人聞きの悪い事をサラリと言う奴だ」

大王「隣国では広げ過ぎた数を粛清しているではないか。同じこ

   とをこの日の本でも行うだけよ」

死神「疫病神・貧乏神が喜びそうな話だな」

大王「陽の目を見ない厄の三大神。その頭領のそなたに頼むのが

   手っ取り早いと思ってな」

死神「産み神からは子を増やしたいが増やせない、とお門違いの

   愚痴を聞かされたことがある。可笑しな輩が善人ぶって子

   育ての大変さを植え付けている、か。悪い奴ほど優しく語

   り掛け本筋から遠ざけるからな」

大王「裏の社会に通じる者の気持ちはよくわかるな」

死神「五月蠅い」

大王「可笑しな輩が平然と闊歩するこの世だからこそ、そなたら

   三厄神の出番かと。そなたらは悪魔ではない神だ。人間を

   良き道に導くのもまた役目かと」

死神「現代版、丑三つ参りか。ひとつ条件がある」

大王「聞かせて貰おうか」

死神「上手く行けば魂界の関わる者に我らを敬わさせる事」

大王「承知した」


 死神は、疫病神・貧乏神を呼び、事の次第を話した。貧乏神も疫病神も唐突な依頼に苦虫を潰していたが、疫病神に連れてこられた餓鬼だけは涎を垂らして喜んだ。餓鬼は勝ち誇った者が朽ちる姿を餌に邪鬼を囲っている。その肥えた邪鬼を喰らい力をつける。餓鬼は直ぐに標的を口にした。




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