10‐1

「うん、どっちか何とかしてみる」


 ずっと一緒だからわかる。

 明らかに何か予定があり、厳しい表情だ。


「無理しない方がいいぞ」

 

 恋人同士のデートでもなければ二人きりでもないのだ。

 むしろ無理な方が二人っきりにした方が面白くていい。


「ううん、大丈夫……それより土曜日でいいかな?」

「僕は構わないよ」

「うん、咲奈ちゃんも大丈夫だって、晴斗君にも伝えとくって」

「早いな」


 毎回思うのだが、彼女の判断力は速すぎる。

 即断即決と言った感じで生徒会に勧誘されていたほどだ。

 だが、彼女は目立つことを極端に嫌う性格の為、断っている。

 面倒くさいというのではなくなんて贅沢な話である。

 目立ちたくても目立てない僕みたいな人間がいるというのに、仕事も出来て顔もいいのにもったいないなと思う。

 

「蓮人ってバイトしないの?」

「バイトか、探し中なんだよな」


 正直、バイトはしたいと思っている。

 社会経験もそうだが、一番の理由は彼方ちゃんに赤スパを投げたいそれだけだ。

 だけど、高校生の出来るバイトでは彼方ちゃんの朝活やよるラジオにリアルタイムで間に合わない可能性があるのだ。

 

「だったら、私のやってるバイト一緒にやらない?」

「バイト?」

「そう、のバイト」

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