第3話 幼馴染みと幼馴染の親友と悪友と
「閉めるぞ~!! 急げ~!!」
校門前で先生がまた構えるようにそう言うと、息を切らしながら僕らは最後の追い込みの如く駆けこんだ。
「は~いここまで、後は校門を回れ~」
何とか間に合い息を整えていると、先生はそう言って校門を閉める。
後ろには間に合わなかった者達の残念そうな声が響き渡る。
だが生徒指導の先生で怖いので誰も異を唱えるものなどいなかった。
「はぁ……はぁ……間に合った~!!」
時間は8時半、何とかギリギリ間に合った。
この学校では始業開始が40からなので、半には校門が閉まることになっている。
いわば、ここを通り抜ければ後はゆっくり教室に向かったとしても間に合う良心的なやり方だ。
もう駄目、動けない。
彼女はその場に座り込んだ。
それと同時に彼女のスカートの可愛らしい下着が目に飛び込んでくる。
「おい馬鹿、隠せ」
幸い、周りを見ると誰もこちらを見ていなかった。
「はぁはぁ……え?」
彼女は何を言っているのかわからないといった感じで視線の方向を見ると、事の重大さに気が付いたのか、顔を一瞬で真っ赤にしてスカートを抑える。
「ばか、エッチ!!」
「今のはお前が悪いだろ……」
息を切らしながら理不尽な事を言う彼女に僕はそう言った。
昼休み
いつものように僕達は飯を食べに食堂へ向かう。
「じゃあ、私は席取っとくね」
そう言って彼女は人混みの中に消えていく。
彼女は弁当なので先に席を取りに行ってくれていた。
「はい、これ」
「ありがとうございます」
昼飯のオムライスを受け取ると、奏を探す。
人が多いせいだろう。
中々奏を見つけることができない。
どこに座ってるんだ?
背中にするっと何かが通り抜ける感じがしびっくりして、危うくオムライスを落としそうになる。
後ろを振り向くと、やってやったぜ感丸出しの悪戯っ子顔の奏がにこりとこっちを見ていた。
「落としたらどうするんだよ」
「迷ってそうだろうなっと思ってきてあげたのに、その言い草はないんじゃないかな?」
そう言って正論のようにいう彼女に深く溜息を吐くと、席に案内してもらう。
そして僕はオムライスを彼女は弁当を広げ、手を合わせる。
「「いただきます」」
そう言って食事をする。
「いつも思うんだけど、お前って真面目だよな」
「……何よ突然」
「いや、毎朝弁当作って偉いなって」
正直、面倒くさいなと思ってしまう。
僕だったら偶にはとか言ってすぐにやめてしまうだろう。
その点、基本毎日作ってくるあたり彼女は真面目だなと思ってしまう。
「何? 君の弁当も作ってほしいの?」
「なんでそうなるんだよ」
「そういう意味じゃないの?」
思い返してみれば、確かにそう受け取られても仕方のない事を言っていた気がする。
「いや、純粋に奏のご飯って美味しそうだなって」
「……一つ食べる?」
「お、じゃあ卵焼き貰おう」
そう言うと、彼女はポケットからつまようじ袋を出すと卵焼きに突き刺し僕に渡す。
「はい」
「ありがと」
そう言って受け取り口に含むと、とてもおいしかった。
「……どうかな?」
「美味しいよ」
「そっか」
彼女が嬉しそうな笑みを浮かべたのでドキッとしてしまった。
そうしてご飯を進めると、奏と一緒に教室へ戻ると席替えがあると書いてあった。
この学校はくじ引きの際、学年の成績順だそうだ。
現在は高校一年の六月でこの前の中間試験での結果の結果だろう。
「席替えか」
「隣の席になれるといいね」
「そうだな」
隣になる可能性は低いだろう。
クラスの人数は34人、加えて僕のクラスでの成績は18位だ。
埋まってしまう可能性の方が高い。
そう思っていたのだが。
「よろしく」
奏と隣になった。
確率からしてガチャ単発でピックアップひくくらいの確率だろう。
「よろしく」
そう言うと、席替えが終わり新しい気持ちで授業が開始されるのだった。
放課後になり、いつものように部活動に勤しむ奴やバイトへ向かう奴、帰宅する奴の三種類に分かれる。
「かなちん帰ろ~」
奏での友達の
彼女は中学からの奏の友達で、人懐っこい性格の活発女の子だ。
明るい性格の奏と同じで気が合うらしく、いつも絡んでいる。
「おい佐奈、困ってるだろやめなさい」
黒髪の如何にも陽キャな雰囲気を纏った
彼は小倉さんと中学時代付き合っていて、誰もが羨むほど仲が良かったが別れてしまい、今では犬猿の仲だ。
理由は分からないが、晴斗が言いたくなさそうなので聞かないでいる。
「うるさいわよ、さっさと部活行ったら?」
「今日は自主練だからパース」
「だったらさっさと帰りなさいよ」
「本当お前、俺にきついよな」
ふんっとソッポを向く彼女にあきれ肩をすくめながらそういうと、こっちに視線を向けてくる。
「蓮人、今日暇ならどこか行かね?」
ここで僕に振るか。
っというよりこの状況で誘える神経がわからん。
「行こ、かなちん」
そう言って小倉さんは奏と教室を出て行った。
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「はぁ~」
小倉咲奈は深く溜息を吐く。
理由は奏にもわかっていた。
松本晴斗との関係性についてだ。
「いい加減、仲良くしたら?」
「私だってしたいよ、だけどまだムカついちゃってさ」
松本君は彼女の元カレで、まぁ色々あって別れ、今では顔を合わせれば喧嘩ばかりなのだ。
本当はまだ好きなんだろうけど、素直になれない面倒くさい子だ。
「でも、好きなんでしょ?」
「そうなんだけどさ~」
「はいはい、リア充乙」
そう言って彼女の頭を優しくなでる。
この子は普段はあっさりしているのに、本当に松本君の事になると結構引きずるのだ。
そこがまた可愛い所なんだけど。
「かなちんはいいよね」
「え、私?」
「だって、まだ付き合ってないんでしょ? 彼と」
彼とは蓮人との事だ。
私は彼のことが好きだ。
だけど、まだ踏み出せてはいない。
否、踏み出せない。
「まぁね」
「かなちんが羨ましいよ、近くて丁度いい距離感で」
そんなことはない。
いつ彼が他の女の子に恋するかわからないのだから気が気じゃない。
彼女の場合は踏み出したせいで遠くなってしまったのだから、嫌味ではなく完全なる羨望である。
だけど、私は知っている。
松本君が彼女の事を未だに忘れられない事を。
後は彼女が素直になるだけだとわかってはいる。
だけど、これは私の関与する事じゃない。
「正直、貴方達の方が羨ましいと思うけど」
正直、一度付き合っていた時期を私は羨ましく思う。
私には距離を詰めることができないから。
「なんで?」
「だって、好きな人と一度でも結ばれたんだから」
お互いの思いが通じ合う事など確率的に100はない。
加えて松本君は女子から人気があるので、競争率を考えると通常より半分かそれ以下の確率だ。
確率的に私なら絶対にあきらめてしまうだろう。
「……本気で言ってる?」
「本気よ、二人とも両思いなんてそうそうないもの」
私の場合は……只の友達だろうな。
なんとなくそんな気がする。
これだけアピールしても戸惑ったりしない所を見るに、私を女として見てないだろう。
叶彼方という共通の趣味の友達、ただそれだけの関係だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
そう思っていると、彼女は頬を膨らませ怒ったようにこっちを見る。
「なんか、かなちんってずるい」
「ズルい?」
「だって何もせずに羨ましいとか言ってるのってずるくない? 私の場合は行動を起こしてこうなってるけど、かなちんは何も行動せずに告白を待ってる」
私の前に立ち、私達はその場に立ち止まると彼女はそう言い放った。
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