四つ目 向日葵
暑い日、珍しく外に出た私たちは黄色が鮮やかに咲き乱れる畑にやってきた。
太陽に向かって話しかけるように咲く向日葵は、沢山ありすぎて妙な迫力があった。
日常と少し離れた光景に、目を瞑った。
唐突に彼が向日葵を掻き分け、畑の中に潜り込む。
ちょっと待って、と慌てて着いていくが彼を見失ってヒヤリとする。
ねぇ、どこ!? と叫びながら歩いていくと、一際大きな向日葵の下で、うずくまっている彼を見つけた。
具合が悪いのでは、もしや熱中症ではと心配してしゃがみ込むと、彼は土をふさりと触って呟く。
「桜の木の下」
その伝承は私も知っているが、小説が元だということも知っている。
じっと覗いていると彼は土をいじりだした。
表面を撫でるようにさらりといじる彼に、何だか愛おしさが溢れてきた。
綺麗なものは、綺麗でいいんだよ。それだけでいいの。
そう言うと彼は立ち上がる。辺りを見回し、ため息を深くついて肩を落とした。
「大丈夫」
どちらからともなく言って、賑わいの方へと目を向ける。
ただの惰性であっても確かな一歩を、歩き出した。
後に残ったのは、鋭い賑わいと、ただの生臭さだけだった。
深く埋めたそれと、私たちの秘密は、誰かによって暴かれたらしい。
無数の種が目のように私たちを見つめていて落ち着かなかったのは、そのせいかもしれなかった。
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