第8.5話 狐美の魔人(2)

 元気を取り戻したマイラは、タクミと共にサフィラとアルフを倒す為に校内の最上階まで登る事にした。そして、ユリシアはその光景を見ていたのでナルミにも突撃命令を出した。


 ナルミは、もう一度サフィラに攻撃をする様に言われたので下半身だけを煙化してサフィラに攻撃を仕掛けた。しかし、サフィラは強風を出してナルミを追い払おうとしたが、それでもナルミはサフィラの元へと進んだ。


「うおぉぉぉ!!!」


 ナルミは、サフィラの側まで近付く事ができたので叫びながら手にしている日本刀を振り下ろした。しかし、ナルミはサフィラに避けられたのと同時に回し蹴りを受けてしまった。そして、その反動で最上階の窓を割りながら建物の中に入ってしまった。


「ナルミ!?」


 ユリシアは、サフィラの攻撃を受けたナルミを追いかけようと最上階まで煙化をした。しかし、ユリシアの前に怪人化したデモルスが飛び出してユリシアの首を鷲掴みした。


 デモルスは、コウモリの様な羽を伸ばして烏の様な足に虎の様な手をしていた。しかも、顔には鬼の様な角を生やしており、鋭い目つきに尖った牙が目立っていた。


「邪魔をしないで貰えますかね」


「ど、どう言う……。意味、よ……」


 ユリシアは、煙化を全身に発動して避けようとしたが、アルフが背後でユリシアの能力を一時的にリセットしているので能力を使う事ができないでいた。


 デモルスは、セデスの指示で使い魔である怪人を指定の場所に設置しており、サフィラはナルミをその一体の怪人が居る所まで吹き飛ばしていた。しかも、デモルスは怪人を解放して暴れさせようしているので折角のチャンスを無駄にしたく無いとユリシアに告げた。


「彼には、私の可愛い使い魔と戦って貰いますので貴方には死んで貰いますよ」


「私が、死んだら……。彼は、能力が……。使えない、でしょ……」


「知ってますよ。なので、貴方が死んで彼にも死んで貰うのです」


 デモルスは、そう言ってユリシアを締め殺そうとした。その刹那、タクミとマイラがアルフの首とデモルスの両手をナイフで同時に掻き切ってユリシアを助けた。デモルスは、いきなりの事で焦ってしまい、ユリシアをそのまま手放してしまった。そして、アルフは首を掻き切られたので能力が切れてユリシアと一番隊の能力が使える様になった。


「よし! 今だ!」


 ユリシア達は、アルフが死んだ事を確認して即座に能力を行使した。すると、生き残っている相手の部下達は能力が使えなくなり、そのまま六番隊のメンバーに拘束された。そして、その光景を見たサフィラは術を使ってアルフの死体をセデスの所へと運ぼうとしていた。


 しかし、マイラはサフィラに目掛けてナイフを投げつけてサフィラの思惑を阻止した。サフィラは、投げられたナイフが右腕に刺さってしまい、集中が切れてアルフの死体が地面に落ちてしまった。


 サフィラは、セデスの能力を使ってアルフを蘇らせようとしていた。セデスの能力は、死んだ人を一時間以内であれば蘇生させる事ができる。しかし、マイラはタクミの恨みを晴らす為にアルフの遺体を粉々に切り裂いた。


 こうなった場合、セデスは蘇生する事ができなくなった。蘇生させるには、五センチ以上の肉片が残っている事が条件である。しかし、マイラは僅か数秒の間に一センチ以下程度の粉状態にさせた。


「わ、僅か数秒の間で……。あ、ありえないわね。ま、まぁ、まだ手はあるから良いのだけれど」


 サフィラは、そう言いながらまた新しく部下を突入させた。そして、サフィラはセデスの元へと戻って代わりにロズが先頭に立った。しかし、ユリシアとマイラはサフィラが下がるのと同時に引き止めようと攻撃をしかけた。


 その刹那、ユリシアとマイラの身体が動かなくなった。しかも、メグミやミサキなどの女性戦闘員が同時に動けなくなっていた。


「何で、か、身体が!?」


「ふん。お前らは、そこで大人しくしてろ」


 ユリシアを含めた女性戦闘員は、ロズによって身動きを支配されていた。ロズの能力は、女性を自在に操る事ができる能力だが、男性は操る事ができないでいた。なので、その光景を見たタクミは術を解かせる為にロズに攻撃する事ができた。


「おりゃぁぁあ!!!」


 ロズは、インキュバスと言う悪魔なのでコウモリみたいな羽を生やす事ができる体質になっている。なので、タクミは近くにある壁を蹴りながら空中を飛んでいるロズにナイフを振り下ろした。しかし、ロズは一人の魔人討伐団体の女性戦闘員を操るかの様に宙に浮かせて攻撃を防いだ。


「きゃっ!?」


「んなっ!?」


 タクミは、思わず盾にされた女性戦闘員を切ってしまった。そして、切られた女性戦闘員は声を上げながら気絶してしまった。ロズは、思わず仲間を傷つけてしまったタクミに向けて盾にした女性戦闘員を投げつけた。


「うわっ!?」


 タクミは、混乱しながら隙を作ってしまったのでロズに攻撃されて地面に落とされてしまった。そして、それを見ていたマイラは誰よりも叫んでタクミに駆け寄った。


「タクミ、大丈夫?」


「あぁ、俺は大丈夫だ。それより、何でマイラは動けるんだ?」


「分からない、気付いたら動けてた」


 タクミは、ロズによって支配されていたマイラが動けている事に驚いていた。これに関しては、術者のロズも驚きを隠せずにマイラに喧嘩を売っていた。


「ただ単に、貴方の術が弱かっただけでしょ」


「弱かったら、ユリシアと言う奴も術を解いてる筈だ! だが、お前が俺の術を解けたのは本当の様だな。更に強い術を掛けなければいけないな」


 ロズは、そう言いながら先程よりも強い魔法を発動した。この魔法は、女性なら誰でも虜にできる魔法である。しかし、マイラは避けずに魔法を受けても身体や意識を乗っ取られずに済んでいた。


「んな!? や、やはり、お前は女ではないな!?」


「そうだね。私は、あんたにとっては女では無いのかもね」


「なんだと!?」


「ただ、タクミだけの女だからね。あんたの安っぽい魔法にはかからないって事よ」


「貴様……。こうなったら、別の方法でお前を苦しませてやる」


 ロズは、そう言いながら両手を失ったデモルスに指示を出した。しかし、デモルスはマイラに両腕を切られた事で戦意喪失していた。ロズは、それでもデモルスに声をかけてマイラを設置している怪人の所に追いやる事を告げた。


「ロズ、様……。私は、両腕を切られたのでどうする事もできません」


「ちっ! 使えない奴だ! こうなったら、俺がやってやる」


 ロズは、戦意喪失したデモルスに指示するのを諦めて自身でマイラを相手にした。そして、ロズは八頭身の長さをしているムチを自身の腰から出してマイラに突撃した。しかし、マイラはロズの攻撃を華麗に避けてロズの右側の翼を掻き切った。


「うがっ!?」


「あんたらも、まだまだだね」


 マイラは、そう言いながらデモルスに攻撃を仕掛けた。その刹那、サフィラがセデスに怪我を治して貰った状態でデモルスをマイラの攻撃から庇った。


「ロズとデモルス、貴方達は下がって良いわ」


「すみません、サフィラ様。すぐに戻って来ます」


 ロズは、サフィラの指示でデモルスと共にセデスの元へと向かった。マイラは、それを止めようと攻撃を仕掛けたが、復活したサフィラに防がれてしまった。


「貴方には、借りを返さなくてはならないわね」


「そんなの結構だよ」


「ふふふ、面白い子ね。なら、貴方には最強の奴を相手にして貰うわ」


 サフィラは、今まで以上の魔力を注いでマイラに攻撃した。すると、マイラは妖術をかけられてしまい、身体が浮いて別の場所へと連れて行かれた。


「マイラ!!」


 そして、それを見たタクミも追いかけようとしたが、サフィラに妖術をかけられてマイラとは逆方向の場所へと連れて行かれた。


「な、何をするのよ!」


「ふふふ。彼達には、今から私達の秘密兵器を相手して貰うわ。これからが楽しみね」


 ユリシアは、サフィラの言葉があまり分からなかった。しかし、ユリシアはデモルスの言葉を思い出して危険を察知した。サフィラは、これから三体の怪人を解放してナルミとマイラ、タクミの三人を殺させると言う魂胆をユリシアに悠々と語った。


「私が、貴方を殺して三人を助けるしか無いわね」


「ふふふ、面白い事を言うのね。貴方こそ、ここで死んで貰うわ」


 ユリシアとサフィラは、お互いの命をかけて戦う事になった。そして、ユリシアはサフィラを倒してナルミ達の所へと迎う事を決意しながら女同士の戦いが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る