第4.5話 闘神の魔人(2)
自身の能力を使って裏口に入る事が出来たナルミは、依頼者の弟を探す事にしたが改造されている事しか聞いてなかったので全く分からずにいた。ナルミは、その魔人の顔も正体も分からない事に気付いた時にはもう遅かったと悔やんだ。
何も考えずに突っ走ってしまった事に、もう少し詳細を聞いておけばと頭を抱え込む。しかし、そのまま突っ立っていても許可もなしに入っているので関係者に見つかれば追い出されると思い近くの男性トイレに潜む事にした。男性トイレには、五つの小便器と二つの水洗便座の個室がある。片方の個室には誰かが使っていたので、空いているもう片方の個室に入り込んで身を隠す事にした。ナルミは、携帯を取ってマイラに電話をかけようとした刹那、隣の個室で独り言が聞こえてきた。明らかに、独り言としては隣まで聞こえる程の音量であった。
「あのジジィ達のせいで、こんな身体に……。怖いよぉ、姉ちゃん」
その事を耳にしたナルミは、依頼者の弟なのではないかと悟った。『姉ちゃん』というワードと『あのジジィ達のせいで』と言う二つのワードがナルミの中の決定打であった。
ナルミは、迷う事なく隣の個室で独り言を呟いてる男性に声をかけた。自身の事と話しかけた要件に手助けをする事を手短に話した。
「だ、誰なんだよぉ! そんな事言われても分かんねぇよぉ!」
「貴方の身体を弄いじくった魔人から救い出させて欲しいと言っています。なので……」
「だからぁ! 怖いんだよぉ! 救ってくれるって言っても、あいつに追いかけらそうだし意味分かんねぇ馬鹿力だし!」
ナルミが、どんなに救いの手を出す為に説得しても個室に入っている男性は大声でナルミの声かけを拒んでいた。
「そこの兄ちゃんよぉ、俺らの邪魔をせんどいてくれんかね?」
すると、見知らぬ男がナルミに声をかけてきた。長い白髪を後頭部に寄せて結んでおり、黒肌で顔に小さな傷跡が残っている。それだけで、威圧感が増しているのにも関わらず筋肉質で高身長である。さらに、威圧感が強まっておりナルミに対して威嚇している。
「あなたは?」
「いいからどけ」
「いえ、どきません」
「てめぇ、関係者じゃねぇだろ。どうやって入った?」
「貴方が喋らないと私も喋りません」
「ほぅ。俺の威圧に負けじと話しかけてくるとは、いい度胸じゃねぇか。いいだろう、教えてやる」
ナルミの根性に、男は興味を示して自身の情報を口にした。その男の名は、『闘神の魔人ガレッズ』と言う魔人会の最高幹部の一人だという事を胸を張りながら語った。
「魔人会っていう事は、『酒豪の魔人ユボルグ』という魔人と同じ組織なんですね」
「ユボルグ? あぁ、俺の組の幹部ではねぇが確かに強い魔人だったな」
「組? という事は、貴方は魔人会の組長の一人なんですね」
「そうだぜ。ちなみに、魔人会四天王の一人がこの俺様だ!」
「そうなんですね。なら、他に三人の組長がいるという事ですね」
「理解が早い兄ちゃんだな。まぁ、知ったところで殺すだけなんだけどな」
その刹那、ガレッズはナルミに向けて拳を上げた。素早く危険を察知したナルミは、紙一重に躱すことができたが風圧で眼前の壁が割れてしまい、その破片がナルミの頬を掠めてしまった。
後ろに回り込んだナルミは、自身の魔力を用いて刀剣を生成してガレッズの首を掻き切ろうとした刹那、ガレッズは反応してその刀剣を握り潰した。血が一滴も出らずに、掌にある刀剣の破片を見せびらかしながら、地面に払い落とした。
「いい反応じゃねぇか」
「いえ、私はまだ未熟者ですが」
「ふん、そう言ってる割りにはユボルグよりかは強い魔人じゃねぇのか?」
「え? 私は非魔人ですけど」
「なに? なら、契約した魔人は誰だ?」
「洋灯の魔人ユリシアの非魔人であるナルミという者です」
「ユリシアだと……」
自身の名を名乗ったナルミは、攻撃態勢をとった。しかし、ユリシアの名を聞いたガレッズの様子が急におかしくなり、攻撃する素振りを見せずにいた。
「という事は……。あいつもいるんだな?」
「ユリシアさんは、いないです。代わりにマイラさんがいますけど」
「マイラという奴は知らねぇが、ユリシアの非魔人がいるというのなら話が早いぜ」
「何か、恨みでもありそうですが?」
「あいつは、俺の幹部を殺した魔人だ。計画の邪魔ばかりして、お前らの組織はほんとにめんどくせぇんだよ」
「なるほど、そうなんですね。だけど、その恨みは私たち非魔人の方が恐ろしいですよ」
「それは、面白い。だが、時間がねぇからそこまでだ」
すると、ガレッズは依頼者の弟が入っていた個室をこじ開けて掴みだした。弟は、大声で泣きながら拒んでいたが、ガレッズは弟を引っ張り出して連れ出そうとした。
「やめろ!」
止めようとしたナルミだが、ガレッズの方が一つ上手であった。近くの壁を粉砕して、近寄れなくなるほどの煙と障害物を作り、隣の女子トイレの方から依頼者の弟を担ぎ上げて逃げていった。逃げられた事を確認したナルミは、すぐにマイラと電話を繋げた。
「なによ?」
「敵の正体が分かりました」
「だから?」
「なので、すぐに合流しましょう。もうすぐ試合が始まると思いますし、相手が逃げて仕掛けられてもしたら……」
「あのね、ナルミ君。モルサの予想は的中しやすいし、万が一の事があればジヤルドのおっちゃんに頼んでるから、相手の思惑通りにはいかないよ」
「そうじゃなくて、人が亡くなるかもしれないんですよ! 魔人の思惑なんて、そんなの知りませんよ!」
マイラの言動に怒りを覚えたナルミだが、マイラとの電話にタクミが仲裁に入った。
「ナルミ、頼みがある」
「何でしょうか?」
「マイラはそう言ってるが、お前のためでもあるんだ。誰も亡くならないようにはするし、大事にはならないようにもする。だから、お前は得た情報を六番隊の基地に戻って、本部に報告してくれ」
「分かりましたが、戻らなくても携帯で情報を流せば良いのでは?」
「戻って報告してくれ」
タクミの強い口調で発した頼み事に、ナルミは何かいい作戦があるのではないかという気持ちに駆られ何も言えずに承諾をした。ナルミは、もう何も考えずに六番隊を目指すことにした。下半身を煙と化して、人の視界に入らない程の速さを意識して素早く移動した。
ナルミが指示に従った事を確認したタクミは、マイラに声をかけて作戦へと移行した。タクミとマイラは、周りにいる一般市民の後頚部に催眠効果のある注射器を素早く刺した。目に見えない速さで、マスコミの人や闘技場の関係者、観客の人達を無差別に刺し続けてマイラが洗脳しやすいように仕掛けた。
「タクミは、中にいる人を刺してきて。私は、今からこの人達を安全な所へ移動させてもう一度来るから」
「分かった。念の為、マイラが持っている魔法袋をくれ。多分、足りない」
「分かった」
マイラは、自身が持っている魔法袋をタクミに渡した。魔法袋とは、『魔法の袋』の略で数多くの物を入れる事が出来る袋だ。持ち主の魔力と連帯して、入っている物の数の確認もできる優れた物資で本部に申請すれば誰でも貰える。
タクミとマイラは、別々で行動した。マイラは、闘技場のすぐ近くにある公園に一般人を移動させた。かなり広くて集めるのに丁度いい広さの為、その公園に決定した。しかも、誰もおらず邪魔にならないとマイラは思った。
タクミは、観客専用入り口に入って中に居る人達を徹底して注射器を後頚部に刺し続けた。洗脳をかけれた一般市民は、マイラが移動命令をしているのでそれに釣られて移動を始めた。
闘技場は、そこまで広くなく市民体育館程の大きさである。円形の設計であり、観客席は二階に設置されている。約一万人の観客席があり、一階は関係者しか入れない所である。観客席に、何人かいたが申し訳ない気持ちを嚙み殺して後頚部に刺した。さっきまで、笑っていた女性二人がいきなり黙り込んで持っていたジュースを置いてマイラに指定された公園へと移動した。
それを、何度も続けて観客席にいる人を全員洗脳させる事に成功させた。後は、一階にいる闘技場の関係者達を洗脳させるだけだ。カメラを持ったマスコミ関係者からスーツを着た警備員に、リングを設置している闘技場関係者の人達を目掛けて二階から注射器を投げ続けた。
後頚部以外にも、肘や肩、太もも等に刺さっても洗脳させる事が出来る。賑わってた一階も、タクミによって静かになり早く事が片付いた。一階に降りて誰もいない事を確認したタクミはマイラと合流しようとした刹那、誰かの声が聞こえた。
「おいおい、折角盛り上がると思ったのに、誰もいねぇじゃねぇかよ」
「あらぁ、ほんとねぇ。私の輝きが表にでるというのにぃ。どういう事よぉ、ガレッズ~」
「ケケケッ。俺ちゃんには、良い予感しかしないっすよ、ガレッズさん」
その声に釣られて振り向いたタクミは、明らかに一般市民ではなく今回の元凶だという事が一目で理解した。黒のタンクトップを着たチャラそうな男と女装をしている高身長で筋肉質の男に、二人からガレッズと呼ばれている男が選手入場門から姿を現した。
ガレッズと呼ばれている男は、別の男を担いでいた。それは、見ているだけで骨が折れそうな程の細い身体に無数の傷跡が目立っており、惨めな気持ちになる程に身体を弄られている事が分かる。そして、その男は担がれながら大泣きしているが、男達はそれらを無視してタクミに話しかけた。
「先手を取るとは、さすがは魔人討伐団体っていうややこしい組織だな。クマちゃんよ」
「あらぁ、クマのぬいぐるみだなんて可愛いじゃなぁ~い」
「何を企んでいる?」
「ふん! 公の場で魔人の素晴らしさを披露したかっただけさ」
「貴様……。世の中が混乱する事を分かってやろうとしたのか?」
「当り前だろ? 魔人と契約すれば非魔人となって陥れたい奴を好き放題に陥れるんだぜ? 素晴らしいじゃねぇか」
「そのためには、周りを不幸にしなければならないんだ。だから、公に発表しても批判されるに決まっている」
「不孝にならない為に、非魔人として契約するんだよ。俺らの世界では、弱肉強食の世界だからなぁ。強い力を求めて手に入れれば幸福に満たされるんだよ」
「だったら、その自己中な力を潰してやる」
「ケケッ! 可愛いクマちゃんがどうやって潰すんだっすよ!」
その刹那、タクミはタンクトップの男にめがけて攻撃を仕掛けた。反応できず顔面に直撃したタンクトップの男は、軽く吹き飛ばされた。
「ギョヘッ!?」
「あらぁ、クマちゃん早ぁ~い」
「ふん。ユリシアの非魔人の奴よりかはいまいちだがな」
「それって、ナルミの事か?」
「あぁ、そうだぜ。ほんとは、この場であいつとやりたかったが、クマのぬいぐるみならば仕方ないか」
「挑発するのが上手い魔人だな。もしかして、お前ら挑発しかできない魔人だろ?」
「可愛い意地を見せてくれるじゃなぁ~い」
攻撃を仕掛けたタクミだが、女装している男に攻撃を素早く受け止められ、跳ね返された。距離を取られたタクミは、マイラの魔法袋から赤い瓶を取り出して、中身を全部飲み干した。すると、身体が大きくなり人並み以上の力と重さを手に入れた。
「へぇ〜。折角、可愛かったのにぃ〜」
タクミの身体強化に、女装の男は興奮していた。だが、ガレッズと呼ばれている男は、タクミの背後から睨みつけている二つ結びの金髪をした黒肌の女性に注目していた。
「あんた達……、良くも……」
「あ? こいつがマイラっていう奴か?」
「マイラ!? もう来たのか!?」
「タクミの事が心配だったから来てみれば、良くもタクミを本気にさせたね……。タクミが本気になっていい時は、私の前だけなんだから!」
苛立ったマイラは、太ももに忍ばせていたナイフを取り出してガレッズと呼ばれている男の首元をめがけて突き出した。しかし、ナイフの刃先が首元に当たったが、すぐにナイフが粉々に折れてしまった。
「な、何でよ!?」
「ふん! たかがナイフだけで、倒そうとしても無駄なんだよ」
攻撃に失敗したマイラは、一度距離を取って態勢を整えようとしたが、マイラの左足に黒蛇が嚙みついてきた。
「いたっ!」
「ケケッ! この俺ちゃんを忘れるなっすよ!」
「マイラ!!」
タンクトップを着たチャラそうな男が、腰の方から黒蛇を出してマイラを足止めした。嚙まれたことで痛みを覚えたマイラの姿を見たタクミは、その男の腰から出ている黒蛇の首を掴みだして、黒蛇とマイラを突き放した。
「くそ野郎! 殺してやる!」
黒蛇を持って引っ張り出して、タンクトップを着たチャラそうな男を攻撃しようと考えていたが、その男の手足には虎の姿をしていた。それが原因で、ビクとも動かなかった。
「ケケケッ! この『黒鵺の魔人コリス』を侮るなっすよ!」
コリスの能力にタクミは、思考を巡らせていた。コリスは、黒蛇を掴ませた状態でタクミに襲い掛かった。高いジャンプ力と鋭い爪でタクミを困惑させている。
マイラは、タクミの危機に気づきそっちに行こうとしたが、女装している男に止められ戦いを申し込まれた。
「貴方は、この私の相手をしなさぁ~い」
「何なのよ! あんたは!」
「私は、あの『闘神の魔人ガレッズ』の部下である『異花の魔人マリコア』って言うのよ。可愛いでしょ~?」
「マジで、キモイんだけど」
「やだぁ。なら、私の技を受けてみなさい。
桃色の炎に輝いた弓矢を生成して、マイラに向けて矢を放った。何発も繰り出される中、マイラは躱しながらマイコラに近づく。外れた弓は、地面を割る程の威力である。爆発音が激しくなるが、マイラは気にせずマリコアに挑む。
マイコラの遠距離攻撃に対して、マイラは近距離攻撃を得意としている為、マイラにとって相性が合わない。しかし、近づいてしまえばマイラにとっては、好都合なのかもしれない。
一方のタクミとコリスは、近距離攻撃を得意としている為、お互い戦いやすさはあった。コリスの爪の鋭さから、タクミの布地は剥ぎ取られていく。ボロボロになりながらも、タクミは渾身の一撃をコリスに喰らわせた。
「ケッ! ぬいぐるみの分際でよくやるじゃないっすか」
「うるせぇ。俺の身体は、マイラに預けてるからな。本来の身体であれば勝てるはず」
「タクミ! 私の魔法袋返して!」
「あぁ、分かった」
コリスとの距離を測っていたタクミに、マイラは貸していた魔法袋を返すよう要求した。承諾をしたタクミは、マイラに向けて投げ飛ばしたが、それを見計らったマイコラは先程の攻撃で魔法袋を撃ち破った。
撃ち破られた事によって、魔法袋に入っていた物が全て溢れ出た。先程の注射器に赤い瓶、たくさんのゴミ袋が散らばってしまった。
「何やってくれてんのよ!」
「ケケッ! 変なのばかりっすね!」
しかし、その一つのゴミ袋から生身の男性の遺体がはみ出てしまった。その場に居た全員が目を見開きながら注目していた。
「やだぁ、こわぁ〜い」
「俺の身体をマイラが大切に魔法袋に入れてたのに、よくも壊してくれたな……」
マイラの魔法袋には、タクミの物が幾つも入っていた。タクミの髪の毛や爪など、タクミが生活する上でいらなくなった物を大切にゴミ袋に纏めて、それを魔法袋の中でお互いが知った上で大切に保管していた。それを、マイコラによって壊された挙句、タクミの本当の身体が周りに晒されてしまった。
「タクミ……。もう解放していいよね」
「勿論、そのつもりだ」
マイラは、タクミの元の身体に近づいて唇を交わした。ガレッズ達は、何をしているか分からずに傍観しているとタクミが憑依していたクマのぬいぐるみが小さくなり、タクミの元の身体が光り輝いた。
「何が、起きてるんだ?」
「ケケッ!? ま、眩しいっすよ!」
タクミは、マイラの行動によってぬいぐるみから元の身体へと乗り移る事が出来た。マイラは、常にタクミの身体を魔法袋で保管しながら持ち歩くことで安心していた。しかし、解き放たれることでタクミは、本来の力を手にすることが出来たのと同時に、マイラは豹変してしまった。
「キャハハハッ! タクミー!」
タクミは、元の身体で武器を取ってマイラの側へ移動した。豹変していたマイラだが、タクミの身体に触れることでいつも通りに落ち着きを保つことが出来る。
「おかえりなさい、タクミ」
「あぁ、ただいま」
「やだぁ、尊すぎるんだけどぉ」
「ケッ!? どこがっすか!? こいつらやばいんすけど!?」
「ふん。逆に見物だな」
その状況を見ていたガレッズ達は、訳が分からず反応に困っていた。その刹那、先程まで小馬鹿にしていたコリスの首が地面に落ちてしまった。
「ケッ?」
「み、見えなかったんだけどぉ」
「私達を馬鹿にした奴は、こうなって当然よ」
タクミの身体に触れないでいるマイラは、とても不機嫌のようにガレッズ達の目からそう見えた。コリスは、そのまま何もできずに倒れることしかできなかった。しかし、部下を一人討伐されたガレッズは、握手しながらマイラを称賛していた。ガレッズとマイコラは余裕の笑みを浮かべており、タクミとマイラは不吉に感じた。
「俺の作戦がこれだと思ってたら、大間違いだぜ」
「はぁ?」
「あらぁ、まだ思いつかないのぉ? これは、あくまでも囮作戦なのぉ」
マイコラとガレッズは、コリスが死んだ後でも平然な顔で本来の趣旨を語った。魔人の正体を公にしていない魔人討伐団体が、世間に知れ渡るのを一番恐れている。それを、利用して本当の狙いを隠す事にしたのだ。
「私達が、本当に狙っているのは『人間派』の魔人を殲滅する事なのぉ」
「あぁ、その作戦の一つとして六番隊の基地を俺の組員で取り囲んで破壊する事だ」
「まさか、私達みたいな主力がこちらに来ると分かっていて、この作戦に出たって事?」
「そうよぉ」
「お前らの基地が悲惨な事になれば、ネットに上げられ俺らは有名人となる」
「だとしたら、ナルミが危ない!?」
マイラとタクミは、迷っていた。ナルミと依頼者の弟、どちらを取るのかを考えていた時に、ガレッズは二人に選択肢を与えた。
「お前らに条件を言い渡そう」
「何よ?」
「ナルミっていう奴を救いたいなら、組員に言ってやめさせる。ただ、魔人の正体が晒されない代わりにこの男は悲惨な状態になる」
「もし、この子を選択したら?」
「ナルミっていう奴も魔人討伐団体も悲惨な目に遭うかもしれんなぁ」
誰もが戸惑うように選択肢を与えたガレッズだが、二人は戸惑う事なく即答した。
「今、目の前に救える命があるのなら救ってみせる」
「あぁ、ここは一つナルミに賭けるしかないかもな」
二人の決意にガレッズ達は、笑みを浮かべていた。ガレッズは、泣き崩れている依頼者の弟を手放して本格的にタクミとマイラに勝負を挑む事にした。
「ふん。どっちの作戦が上手くいくか勝負するって事だな。望むところだ!」
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