GIRL'S SIDE

大輝くんとは、小学校からの同級生で家も近くて、仲が良い。


少なくとも、私はそう思ってるし、馴れ馴れしくしても大輝くんは嫌な顔1つせずに遊んでくれる。とても....とても、優しい人だ。


♦︎♢♦︎♢♦︎


キキーツ ドンツ


中学三年生のある日、暴走した車が背後から走ってきて、私は死んだ。


轢かれた時、直感的に思ったの。「あっ死んじゃったんだ」って。そして、同時に「まだ死にたくない」と思った。


強く、強くそう思っていたら誰かが語りかけてきた。


「生きたいか?」


「生きたいよ。まだ、やりたい事もなりたいものも沢山ある。」


「しょうがない。あと、一年だけだ。ただし幽霊として。生きている者には君が生きているように見えるが、君が意識しない限りは触れられない。そして、一つペナルティーを付ける。それでも良いな?」


「いいよ」


そして私は、幽霊になってもう一度生きることになった。


♢♦︎♢♦︎♢


「ねね、大輝くん、今度また遊びに行こうよ!」


机に手が透けないように注意して、身を乗り出し、いつも通りに笑顔で大輝くんを誘う。


今日も同じように

「今度、ショッピングモールに行かない?」と言ってみる。


大輝くんは優しいから、先約が無ければ必ずと言っていいほど快諾してくれる。


いつもの待ち合わせの駅


「お待たせーじゃあ行こっか!」

「着いたら、とりあえず本屋さん行ってもいい?私欲しいのあるんだ〜」

「いいよ」


そう言って本屋に入る。


本を取る時も意識して、透けないように。


「あった〜 ね、これすっごい面白いんだよ!」


前は単純に面白い物を知って欲しくて薦めてだけど、今は私がいなくなっても、大輝くんの世界が広がるように本を薦める。


「大輝くんも好きな感じだと思う!大輝くんの最近のオススメは?」


「僕はこれかな、物語が複雑で濃密な感じのやつ」


「面白そう!今度買ってみる!!」

「貸すよ?」

「いいの!何回も読みたいから!」

「わかった。りょーかい。」


少し駄々をこねるように言うと、大輝くんは眉を下げて微笑んで受け止めてくれる。


「あっクレープ食べよう!もうすぐおやつの時間!」


「もうそんな時間か。まあ、午後から集合だったからね」

「うん!行こっ!」


甘いもの好きなんだよね〜!


「何がいいかな〜あっ決めた、チョコバナナクレープでお願いします。」

「僕はオレンジジュースで」


どうやら周りの人にはパッと見て、身体が透けてる様には見えてないらしくて、普通に食事もできる。


「んー美味しい!」

「それは良かった」

「うん!」


やっぱり甘いものはいい!


♢♦︎♢♦︎♢


それから、話に花を咲かせる。


「大輝くんはさ〜将来の夢とかってあるの?」

「僕は.....まだわからない。」

「そっか〜。私ね、叶えたい夢があるんだ〜」

「どんな夢?」

「それはね〜中学校の先生になること。」


なれないから本当に夢物語。まだ大輝君には秘密だけどね。


「後藤先生の授業すっごく好きだったんだ〜尊敬してた。こんなに楽しい授業できるんだ!って。しかも内容はちゃんとしてたのがまたすごいって思った。」


「私、頑張るよ!」

「うん、応援してるよ。」


少しだけ、演じる。私がいなくなる事を予感させないために。


♢♦︎♢♦︎

夕方の、解散の流れ。


今朝の待ち合わせ場所の駅


「今日も楽しかったよ〜ありがと!」

「こちらこそ」


「また遊ぼうね!あっクレープ食べてた時に言ったことはまだ誰にも言わないでね。」

「なんで?」


絶対に実現出来ないから。


「まだ親にも友達にも言ってないの!大輝くんが一番最初!それに自分から言いたい!」

「分かったわかった、そんなに詰め寄らないでよ...」


「そのくらい私には大切なの!」

「りょーかい」


「じゃ、また学校でね〜!」

「うん、バイバイ。」


ごめんね。少しだけ、嘘をついちゃってる。







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