その後。

君がいなくなってからも、僕はしばらくその場所に佇んでいて、暗闇の中で、君の言葉を反芻していた。


「私がいなくなっても、ちゃんと生きてね。お願い。約束。」

僕が1番好きだった笑顔で君はそう言った。


最初は頭が真っ白になって理解出来なかったが、だんだんと理解してきた。


君は中学生の時に幽霊になってもういないこと。


交通事故で死んだ君は、どうしても死にたくなくて、僕やクラスメイトに嘘をついてまで1年間存在したこと。


君は僕に生きていてほしいこと。君はもっと生きたかったこと。


君は夢を諦めきれなかったこと。


不思議と涙は出なかった。ただ、喪失感で何も感じる事が出来ない、言葉にうまく表せない感情だけが僕の心を渦巻いていた。


♦︎♢♦︎♢♦︎


数ヵ月経って、君がいない毎日が回り出す。

先生からの説明があって、クラスメイトは最初こそ驚いたり悲しんだりしていたが、もうみんな、まるで何もなかったかのように笑っている。


僕も君が居ない毎日をクラスメイトと同じように振る舞ってなんでもないように過ごす。


でも、


僕はまだ、君との時間にとらわれているようだ。

放課後、僕は毎日屋上で、君との思い出を思い出している。


"死んだ人は他の人の思い出の中でしか生きられない" この言葉は、何処かで読んだ言葉かもしれないし、言われた言葉だったかもしれない。この言葉を僕は実感した。


そして、君があの日、屋上で僕を振り向いて言った言葉が今ならわかるような気がする。

僕の記憶の中の君が言う。


「ああ、この世界は泣きたくなるくらいに残酷でキラキラしているんだ」

 

どうやら、僕が立ち直るにはもう少し時間が必要みたいだ。







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