遊びに。

君と僕は小学校からの同級生で家も近くて、そこそこ仲が良かった。


「ねね、大輝くん、今度また遊びに行こうよ!」


いつもと同じ、キラキラとした目と満面の笑みで、僕の机に手を置いて少し乗り出すようにして、僕に問いかける。


「いいよ」


僕はいつものようにすぐに快諾する。


というように。


高校一年のある日


「今度、ショッピングモールに行かない?」

「久しぶりだね。いいよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いつもの待ち合わせの駅


「お待たせーじゃあ行こっか!」

「着いたら、とりあえず本屋さん行ってもいい?私欲しいのあるんだ〜」

「いいよ」


そう言って本屋に入る。


君はとてもご機嫌に漫画を見に行く。


「あった〜 ね、これすっごい面白いんだよ!」

「大輝くんも好きな感じだと思う!大輝くんの最近のオススメは?」


君と一緒にああだこうだ小説や漫画について話すのはいつになっても飽きない。


「僕はこれかな、物語が複雑で濃密な感じのやつ」


「面白そう!今度買ってみる!!」

「貸すよ?」

「いいの!何回も読みたいから!」

「わかった。りょーかい。」



まあ、こんな感じだ。


ーーーーー


「あっクレープ食べよう!もうすぐおやつの時間!」


君は食べる事が好きで、おやつの時間は絶対忘れない。


「もうそんな時間か。まあ、午後から集合だったからね」

「うん!行こっ!」


少し前を歩く君が振り向いてニコッと笑って言う。何かの映画のヒロインのようで、少しドキッとした。


「何がいいかな〜あっ決めた、チョコバナナクレープでお願いします。」

「僕はオレンジジュースで」


君は子供のように無邪気にクレープを頬張り、僕は甘いものが苦手なので飲み物を頼む。これも毎度恒例の光景だ。


ーーーーー


「んー美味しい!」

「それは良かった」

「うん!」


これも毎度恒例ながら君が食べる姿を微笑ましく眺める。


「大輝くんはさ〜将来の夢とかってあるの?」

「僕は.....まだわからない。」

「そっか〜。私ね、叶えたい夢があるんだ〜」

「どんな夢?」

「それはね〜中学校の先生になること。」


いつのまにかクレープを食べ終えて、目をキラキラさせた君が言う


「中学生の時にさ、国語の後藤先生っていたじゃない?たしかその時はクラス違ったから大輝くんは面識あまりないと思うけど」


「うん」


「後藤先生の授業すっごく好きだったんだ〜尊敬してた。こんなに楽しい授業できるんだ!って。しかも内容はちゃんとしてたのがまたすごいって思った。」


たしかに僕は先生の顔は覚えているくらいだ。ただ、君がこんなに人を褒めているのは初めてかもしれない。


「私、頑張るよ!」

「うん、応援してるよ。」


その笑顔がいつも、僕の心を温める。


ーーーーー


夕方になって、そろそろ帰ろうかという流れの時間。


今朝の待ち合わせ場所の駅


「今日も楽しかったよ〜ありがと!」

「こちらこそ」


「また遊ぼうね!あっクレープ食べてた時に言ったことはまだ誰にも言わないでね。」

「なんで?」


「まだ親にも友達にも言ってないの!大輝くんが一番最初!それに自分から言いたい!」

「分かったわかった、そんなに詰め寄らないでよ...」


「そのくらい私には大切なの!」

「りょーかい」


「じゃ、また学校でね〜!」

「うん、バイバイ。」


別れの挨拶をすると、君は軽やかにスキップでもするような勢いで帰路を進む。


"また、学校で。"


その言葉が不思議と、僕の心を温めた。




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