この世界は泣きたくなるくらい輝いている
苺の子
ある日のこと。
「
「もちろん」
「今日の帰り、一緒にカフェに行こうよ!」
「うん!行こう!」
「私ね、叶えたい夢があるんだ〜」
「どんな夢?」
「えっとね、.........」
なんともない会話をして僕達は過ごしていた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
ある日のこと。
夕方の学校。放課後。僕と君だけの教室で、僕の恋人である君は自慢の黒髪のサラサラな長い髪を触りながら、突然言った。
「ね、大輝くんに教えたい所があるの。」
彼女に誘導されていくと、そこは、学校の屋上だった。
初めて上がった屋上。いちご色に染まった雲一つ無い空はとても綺麗だった。
「ここ、綺麗でしょう?私が見つけた、穴場。」
同じくらい綺麗で、どこか自慢げな笑顔で君が言う。
とても景色の良いこの場所で君は僕の方を向いて言葉を紡ぐ。
「私はね、夢を見過ぎていたんだよ」
君の顔から表情が消えて、あまりに唐突に、重い言葉を君が言うから、僕は何も言えなかったけど君は続ける。
「私はこの世界を諦めているの。」
「私はそれでも生きようとするし、生きていなければ大輝くんにも会えていなかった。」
感情的になってきて、君は少しずつ声を荒げ始める。
「でも、私は輝きたかった。光があると影があるってよく言うけれど、私は影の世界の住人。本当に光の世界にいる人は自分が輝いていることに気づけないの。」
そこでようやく声を出した。
「君は十分輝きに満ちた人だよ。」
「ありがとう。大輝くんは優しい人だね。でもね、」
また君は続ける。
「私にはもう、夢は見られない。怖くなっちゃったの。変わるのが。」
「大人達は私達学生の背中をおせっかいなくらいに押してくる。目まぐるしく日々は回って半ば強制的に大人になることを考えさせられて、"大人"にされる。」
「それに上手く順応出来た人が輝けるんだよ?私には無理だった。変わりたくない。変わってほしくない。」
「そんな時に思ったの
"ああ、この世界は泣きたくなるくらいに残酷でキラキラしているんだな"
って。」
「大輝くんは光の世界へ行ってね。」
真剣な目で、でも笑って、何かもっと伝えたい事があるかのように君は言った。
僕は「一緒に光の世界に行こうよ」と清々しく言いたかったが、言葉を間違うと、君が何処かへ行ってしまいそうで、何も言えなく、何も出来なくなった。
そうしていると、君はとても寂しそうに笑った。
「ごめんね、こんな話。なんか急に言いたくなっちゃったの」
僕はやっと口を開いて、今僕が考えられる精一杯の言葉を君に届ける。
「大丈夫だよ。話して楽になれるなら。なんかあったら、またこうやって話をして。」
「うん。ありがとう。もう暗くなってきちゃったね。そろそろ行こっか?」
「そうだね」
またいつもの空気になって、二人並んで、家に帰る。そんな日々だった。
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