第3話 肺

 私の凶行は激しさを増していった。

誰でも良かった。“人間が食べたい。人間が食べたい。”その一心であった。

 しかし、私は、正義の元に人間を食べる。そのポリシーだけは守りたかった。

 私は、帰り道、女性を殴りつけている男を見つけた。男は相当酔っているようだ。男は、「お前がいけないんだ!!」と言いながら、女性の顔が腫れ上がるまで殴っていた。「愛がない、、、。愛がない、、、。」私はそうつぶやきながら、男に襲いかかった。馬乗りになって、男の顔を殴り続けた。女性が言った。「止めて!私が悪いの!全部私が悪いの!」私の耳には届いていなかった。男の顔を何十発殴ったであろうか。私の拳は男の血か、私の血か、分からない位グチャグチャになっていた。女性は隣で泣き続けていた。

 私は、男を、家まで連れ帰った。そして、意識のない男をリビングに放り出した。私は、キッチンからナイフを取ると、男の胸を切り開いた。肋骨を外すと、ピンク色の肺が顕になった。私は、動いている肺のまま、両手でもぎ取った。

 私は、我慢出来なかった。すぐさま、男の右肺にかぶりついた。食べ終わると私は、男の死骸に向って、こう言い放った。

 「お前には、この世界で呼吸する資格がない。そうだ、、、。お前には、肺が、ない方がいい、、。その方がずっといい、、。」

 そう言うと、また、私は男に馬乗りになり、顔を殴り続けるのであった。

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