君に聞かせるのはここまで――

「はい、終わり」

「————………っ♪」

「愛花はこのお話好きだな。すこーし難しい話だけど」

「うんっ! みーんながんばってわるいやつやっつけたんだもんねっ!」

「ふふっ。さ、そろそろ寝ましょう。明日から初めての学校でしょう?」

「はーい。じゃあおかあさんいこっ!」


「————部屋に戻ったか。ホントにこれ、好きなんだな。絶対子供向けじゃないと思うんだけどな……。——とはいえこの先はまだ聞かせられないな」


 一人になったリビングで一人、本のページを一つめくる。娘が偶然書庫で見つけてきたかなり昔の伝記。何故か気に入ってるこれを寝る前に読み聞かせるのがルーティンになってきている。とはいえやはり聞かせられるのはここまで。


 ————————


しかし、この物語はここで終わらない。


 その直後、謎の青年デスが現れ今度はガイナを後方から一刺し。様子を間近で見ていた者は魔力反応が消えていたので完全に即死だった、と語っていた。


 それだけでなく、青年は制止する人間全てを振り切ってその遺体を持ち去ってしまう。


 ————————


「——全ての物語がハッピーエンドで終わるとは限らない」


 もう一つのページをめくる。そこには大きくこう書かれていた。


 ——氷水の魔女編、と。


「この話はいずれ、君が成長した時に。——お父さんとしてはこの話を薦めたいけどさ」

「あら、そう? 私はその次の話の方が好きなのだけれど」

「ん、愛花は寝たか」

「えぇ、ぐっすり。————ねぇ、じゃあ今度は私に読み聞かせてよ」

「————俺は明日仕事なんだけど……」

「えー、いいじゃない。そ・れ・に、知ってると思うけれど私、とっても夜行性なのよ?」

「まあ君の場合のそれは仕方ないというか……。————まあいいか。じゃあ、この続きから語ろう」


 改めて、その題目を指でなぞり口を開く。


「氷水の魔女編」

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