英雄冒険譚 著・クロノア
——これは数多の英雄の活動の記録。その一端である。
第一幕『時間加速』
〇剣士「ガイナ・クォーノス」が魔法使い「マリン・ガブリエラ」が邂逅。共に百年前に封じられ、そして目覚めの予兆が見える厄災獣「タナトス」の討伐に向けて旅に出る。
————彼らの物語はここから動き出したのさ。そう、彼らがこれから紡いでいった物語のその始まり。
第二幕『自然調律』
〇ガイナは山の麓にある町にて魔法使いであり戦闘狂である「ミハエル・エドガー」と遭遇。戦闘を行うもののマリンに介入され中断。改めてエドガー、それと町長の娘である「ツヴァイス・アンデ・シュタイン」の四人で旅に出た。
————正直この時私は反対の立場だったんだが、まさかあの小娘の存在がこの後の歴史に影響を残すだなんて思ってもいなかったよ。
第三幕『狂犬は夜に吠える』
〇とある調査にて無人の村へと寄った四人は死臭漂う裏山にて対厄災獣疑似生物、別名「
————最初のアクシデントとしてはかなりハードだったさ、アレは。特にあの町娘には効いたらしい。
第四幕『熾天使いの苦悩』
〇大都市「サランバーナ」へと寄った四人はそこで催されていたクイズ大会へと参加する。そのクイズ大会に勝てば都市の長がなんでも一つお願いを聞いてくれるとのことだった。そこで邂逅した不思議な雰囲気の少年「ウリア・マスカレイド」とマリンは意気投合(?)する。クイズ大会を無事突破した二人はその後の闘技大会にて数々の激闘を繰り広げ、最終的にはウリアが優勝したものの二人へとこの都市の長である「セキドナ・バーニアス」にお呼びがかかる。
呼ばれた二人は城の地下へと潜り、バーニアスと対面。都市に勤めていた魔法使いが全て失踪したことを伝えられ、スカウトされる。しかしそれは嘘であることをウリアが看破した。そしてバーニアスから語られたのは、全ての魔法使いを対厄災獣疑似生物を作るためのリソースとして消費した真実だった。それによって作られたA・T・Cをウリアは楽々と撃破。彼の行動に激昂したウリアは彼を殺す寸でのところまで追いつめたがマリンによって阻まれ失敗。
立て続けに意識が暴走したウリアを圧倒的力量差に押され追い詰められたところでガイナが介入。エドガーが天井を突き破って登場した騒ぎの最中にウリアはバーニアスを連れて逃亡。四人も逃げるようにサランバーナを後にした。
————この頃だったかな。この世界、いいや箱庭の輪郭がぼんやりと見えてきたのは。やはり『ウリア』の存在が大きかったかな。彼らに主観以外からの視点を与えた存在としてすごく影響を与えた人物だったよ。
第五幕『異端を排するべからず』
〇サランバーナから逃げた一行が向かったのはサランバーナに向かう前に立ち寄り、そしてひと悶着あった名もなき村だった。そこではかつて魔法使いの最高峰である「熾天使い」の卵である「リヒート・モルゲンシュテルン」という齢十年の少年がいた。その少年より対厄災獣用の兵器の投爆実験、その影響内にこの村が入っていることを聞かされる。彼らは補給させてくれたお礼にとその実験を阻止しようと行動したが失敗。
小さな少年はその爆弾を抱えて遥か上空に行くと、その爆弾を作ったと思しき女性と交信。彼女を激昂させ、かつ安全圏にて爆弾を爆発させることで村を守った。村からそれを見ていることしかできなかったガイナ、マリン、ツヴァイスは悔い、それぞれに決意を新たにする。そして事件後、合流したリヒートの母「アンナ・モルゲンシュテルン」と魔法協会より追放された異端の研究者である「アレイスター・クロウリー」と共に投爆実験を行った黒幕の元へと向かうとことなった。
————「魔法」とは異なる技術体系である、後に「科学」と呼ばれるそれが顔を覗かせたことでこの箱庭の在り方、方向性が決定的に定まったような気がするな。
第六幕『人類史誕生』
〇アレイスターの口よりその実験を行っていたのは自身の妻である「ローズ・ケリー」だと明かす。そして彼女がいる場所は「ヴァルハラ」と呼ばれる洞窟。その洞窟では如何なる
その中でガイナとマリンは少しだけ仲を深めることとなった。一方、アンナとアレイスターの組ではアレイスターの口よりリヒートはまだ生きているという真実が明かされる。洞窟内にある罠にかかり神秘の使えない真っ暗な空間に落ちてしまったエドガー、ツヴァイスは謎の老人にこの空間で人間は決して死なないことを聞かされる。いつでも出られる空間だったが、そこを利用して修行をすることをツヴァイスは決意。大好きなあの人と並んで戦うために。それにエドガーも付き合うこととなった。
その頃、アレイスターは遂にローズ・ケリーの元へと辿り着き、夫婦喧嘩と称して戦闘を開始。神秘は使えないのを利用して神秘をあらかじめ封じ込めて使用する「魔法装具」を完成させていたローズに苦戦していたアレイスターだったが、密かに研究していた神秘に依らない人間のためだけの超常「魔術」を行使。辛くも勝利したところで四人は洞窟を出る。その最中、アレイスターよりあの二人はいずれここから出ていくだろうという言葉を聞き、それを信じて次の目的地へと向かった。
————これより神や天使による神秘の時代は、人類による人類のための進化の歴史へと変遷していく。人類史の誕生に相応しい出来事だったと思っているよ。私の敗因としては、おそらくこの瞬間に気付けなかったことなんだろうね。
第七幕『神殺しを成す者達』
〇アレイシウターの助言によりこの世界で唯一、国という仕組みが成立している「シューメンヘル王国」へと向かったガイナ、ガブリエラはそこでガブリエラの兄である「ユゥサー・ウリエル」の出迎えを受ける。二人は厄災獣討伐のために、これからウリエルの元で一ヶ月修行を受けることを伝えられた。そこで共に修行するメンバーとして紹介されたのは百年前の厄災戦を前線で戦い、かつ生還した数少ない英雄の孫である「キール・ダイタロース」であった。ガイナとキールは意気投合。即座に連携を取りながらウリエルの修行を受けていく。
一方、ガブリエラは昔魔法の暴走で兄の顔左半分に癒えない火傷を負わせたことに負い目があり火属性の魔法を扱うことに躊躇があったが、ウリエルとの問答の中でそれを克服。魔法使いとして更に上のステージへと駆け登った。
時を同じくして、ツヴァイスとエドガーは共に修行を重ね常人では到達できないような速度で力をつけていた。特にツヴァイスは「悪魔」と呼ばれる存在と契約をしており、その力を存分に扱うため、身も心も変容していった。しかしどれだけ変容しようとも最初の願いは変わってはいなかったはずだ。
————魔術。その登場により人類史は更に加速する。確実に神の手から人類が離れていった。それが良いことなのか悪いことなのかは、この後の歴史が証明してくれることだろう。
第八幕『ありがとうとさようなら』
〇一ヶ月の修行を経て、更に上の段階へと上がるべく四人は海の都「アトランティス」へと強化合宿に来ていた。ウリエルの献身もあり、ガイナは魔法の行使に耐えうるだけの基礎能力の大幅強化。キールは戦闘経験の無さを補うための装備「魔術展開式自律兵装『アイカ』」を獲得。ガブリエラは熾天使と呼ばれる上位天使の力をもっと深く扱えるようになる「
そして修行最後の日。ウリエルの修行相手はあの三人だけではなかった。ガブリエラ達に牙を剥いたウリア。彼だってウリエルが鍛えるべき少年であった。死闘を繰り広げる二人。その間に明かされたのはウリアがこの世界の人間ではない、並行世界のウリエルだという衝撃の真実だった。それぞれの力がぶつかり合う中、最終局面にて謎の青年が現れ、ウリエルの胸を貫く。
「デス」と名乗る青年の目的はウリエルの力を奪うこと。必要以上に語らないデスに対して、それ以上に兄を殺されたガブリエラ、それに師を殺されたガイナ、キールは激昂し、応戦。それぞれに成長した力を存分に振るい撃退は成功したが、ウリエルは既にこと切れていた。
一行はウリエルの遺言に従い、シューメンヘル王国へと向かう。厄災獣、タナトスを討伐するために。
————彼の死だって無駄なことではなかった。そう言っても彼らは納得しないだろうが、それでも私は悲劇さえも必要な出来事だったと思っているさ。犠牲なしに進むことはできないんだよ、人も、天使や、神でさえも。
第九幕『焦燥と躍進と』
〇シューメンヘル王国に向かう途中、森で休んでいた一行。ガブリエラが眠れず一人で外の見回りをしていた時、運悪く厄災獣の僕、「厄災の子」と遭遇してしまう。その戦闘の最中、危機に陥った彼女を異変に気付いたガイナが身を挺して守ったが、その傷のせいか、はたまた別の要因があったのか。植物状態となって眠りについてしまう。
しかし彼が寝ている間も世界という物語は続いていく。厄災戦に参加するために集まったのは数々の魔装師団団長達。それと独自の修行を終えたエドガーとツヴァイスが合流。作戦会議を行い厄災戦に備える。
それぞれがそれぞれの思惑を胸に戦いへと向かう。さあ、戦いの時だ。
————……まあその節は申し訳ないとは思っているとも。いいや、正確には私ではないのだけれど。勝つためには彼に肉体だけでなく内面的にも成長してもらわなければいけなかったからね。
第十幕『決戦』
〇決戦の時は来た。百年前に封印された厄災獣タナトスの封印が解け、復活を果たした。ある者は両腕を失いながらも。ある者は相棒を失いながらも。ある者は——妹を失いながらも。
最終局面において、ほぼ戦える人間がいなくなった状況でガブリエラは「熾天使ガブリエル」の力を暴走させてしまう。しかしそれを止めたのは長い眠りから覚めたガイナ。ガイナは様々な人からの助けを受けながらもようやっと人類の悲願である厄災獣の討伐に成功した。
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