第10話 道中の会話

 馬車旅の間いろいろな事を話す。


「マシロさん記憶が無いんですか!?」

「まぁそうなるかな。だから本当の名前もわからなくて、マシロって名乗ってる。見付けてくれた人の話だと、森で倒れていたとか」

「よく死ななかったですね」

「その人の話だと、一応B級と同等のステータスみたいよ?攻撃系のスキルはないけど、幸いなことに神器がいろいろ出来る便利な物でね」

「お強いんですね、マシロさん」

「ん~?強いのかな、俺?神器が想いを汲み取って、最適な力を貸してくれているだけなんだけど」


 レオナさんの何気ない言葉に疑問を抱く。

 神器持ち特有の感覚……いや俺だけなのかもしれないが、神器はただの道具ではないと思っている。神器自身が俺に力を貸してくれている。


「まぁ要するに、使い手と神器は共に成長していく、って事かな」

「それって意思の疎通が出来るって事ですか?」

「どうなんだろ。俺はそう感じてるってだけで……。意思の持ち神器があっても不思議ではないと思うけど」

「あり得る話だと思いますよ。神器の中には、何らかの生物を象ったもの、生物の魂を封じた物などが在るそうです。それらの神器は大抵意思の疎通が可能だとか」

「へぇ。そうなのね」


 マリヤさんの説明に、レオナさんと同じく感心する。

 そう言えば、疑問と言えば……


「そう言えばマリヤさんは何で俺が、敵じゃないって信じてくれたの?最初は警戒してたのにさ?」

「あぁそれは、お嬢さまの魔眼スキルで判別したからですよ」

「魔眼スキル?」

「魔眼のスキルと言っても、人によって能力が違います」


 レオナさんの話によると、魔眼のスキルの効果は使用するまで分からないそうだ。発現しても、目に見えて効果が分かるものなら良いが、抽象的な効果のものも存在する。むしろ大半がそう。なので、効果が分からず使いこなせない人が多いと。

 しかし例外として、鑑定スキルで分析する事で効果を確認できるらしい。まぁ鑑定持ちは希少で、かなりお金が掛かるらしいが。


「私の持つ魔眼は感情を感じとる、と言ったものです。喜怒哀楽に始まり、悪意や敵意と言うものも感じ取れます。あの時のあなたには、悪意も敵意も感じませんでしたので、敵ではないと判断しました」

「へぇなるほどね」


 そんなあれこれを話しているうちに、馬車は目的地である王都間近まで来ていた。


「さすがにここからは歩きかな。狼が馬車を引いているのは、目立ちすぎるから」

「それはその通りですけど、到着が早すぎません?」

「……種明かしは無しで。一言言うなら、賢狼ですから」


 賢狼に引いてもらって、実はかなりのスピードで進んでいた。馬車の揺れが無かったのは、馬車が地を走っていなかったから。風の繭に包まれ宙を走っていた。

 ……いや自分でもよく分からないけど、賢狼の思念を読み取ると、そんな感じのイメージであった。

 風属性の魔法をうまく利用すれば空を飛べるという事だろうか?

 ともかく一同馬車を降りる。


「お疲れ様、賢狼」


 ここまで馬車を引いてくれた賢狼にお礼を伝え、 魔道書庫アーカイブを閉じる。すると賢狼はたちどころに姿を消す。

 次に馬車をどうするかと言う話しになったが、俺のスキル空間収納へ入れて運ぶことに決まる。


「それじゃ馬車は俺の空間収納アイテムボックスへ入れておくね」

「希少スキルに未知の神器とは……まるで神様の眷属ですね」

「予言の眷属の話?確か聖女様が神託を受けたのよね」

「はい、世界を救うべく眷属を送り出した。その者は、本を手に物語を紡ぐ者とか……神託の内容はそんな感じだったかと」

「それがマシロさんだと?」

「それは何とも。しかし神器は本です」


 馬車に触れ空間収納の中へとしまう。

 マリヤさんとレオナさんはなにやら話し込んでいる。何か変なことでもあったのだろうか?


「二人とも、そろそろ出発しよう」

「あ、はい」

「分かりました」


 話を切り上げさせ、王都へ向けて残りの道を歩き始める。

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