第5話 初戦闘
昨日はあの後、一階の食堂で食事を取り、各々の部屋で休んだ。そして今朝は、二人で朝食を取った後に冒険者ギルドへ向かい、いくつか依頼を受注して森へやって来ていた。
そう、俺が最初に倒れていた場所だ。今いる町から北へ一時間ほどの距離に存在しているこの森には、狼や猪などの獣系の魔獣が多いらしい。
なので受けた依頼も、魔獣の討伐依頼。狼と猪をそれぞれ五匹。初心者向けの依頼を二つ受けてきた。
「初心者向けの依頼ですが、油断をしないように行きましょう」
「了解……で、俺はどうすればいいの?」
「マシロの戦闘の実力を見たい所ですが……攻撃系のスキルを持ってませんでしたね」
サクラが少し悩む素振りを見せる。
そりゃそうか、俺のスキルは回復魔法、補助魔法、全耐性、空間収納と後衛もしくはサポーター系。直接戦闘をするのに向いている構成とは言えない。
けど、たぶん戦える。昨日神器を手にして、不思議と使い方を理解できた。平たく言うとあの神器は繋ぐものだ。繋いで力を行使するもの。
なのでそれを試すべく、サクラに提案する。
「たぶん戦えるよ。危険だと思うまで手を出さないでくれるかな?」
「……分かりました。危険と判断したら、即刻助けに入りますね」
「うん。それじゃあ、
俺は神器、魔道書庫を呼び出す。
「『十二星座の王と巫女』に接続」
神器が出現し本が開かれる。
これで準備は完了。あとは魔獣が出てくれば……。
そう考えているとちょうど、森の中から猪の魔獣が飛び出して来た。
「白銀の機槍!!」
猪の突進を回避すると同時に神器に呼び掛けた。すると神器は本の形から、白銀の機械仕掛けの長槍へと姿を変えた。
「せいっ!」
白銀の機槍を掴むと、冷静に猪の首を斬りつける。猪の首はあっさりと切り落とされた。
「リリース」
俺の言葉を受けて白銀の機槍は姿を本の形に戻った。
続いて森の中から狼の魔獣の群れが飛び掛かって来た。
さっきの猪はコイツらに追われていたのかな?
「っと!」
身体を捻り回避する。群れは五匹。ちょうど依頼数と一致する。逃さす一気に仕留めてしまおう。
「現れよ、
本が輝き、一匹の狼に雷が落ちる。その狼は黒焦げになり死亡した。
雷は形を成していき、やがて大きな雷光の獅子となった。
「
雷光の獅子が吼える。すると雷撃の雨が残る四匹の狼に降り注ぐ。雷撃をまともにくらった四匹は黒焦げとなり倒れる。
残りの狼たちも倒しきった。今度は魔獣が飛び出てくることもなく、ひとまず安全を確保出来たようだ。……しっかし狼が黒焦げとは……加減を少し間違えたかな?
俺は本を閉じる。すると雷光の獅子は姿を消した。それを確認してからサクラへ話しかける。
「ざっとこんな感じかな?どうかな?」
サクラに話し掛けるがどこか放心状態のように見える。どうしたのだろ?
「サクラ?」
「……マシロ、記憶が戻ったの?」
「いや、戻ってないよ?神器に関しては、手にした瞬間に不思議と扱い方が分かったんだよ。この神器は基本、魔道書や物語にある力を顕現させるものみたい。行使する時は、魔力を消費して力を発揮するみたい。で、使用した魔力が多過ぎて狼は黒焦げになっちゃった」
「はぁ……なるほど。てっきり記憶が戻ったから、あれだけ軽やかに戦えたのかと思いましたよ」
「自然と体が動いたんだよ。若干神器が導いてくれた気がしないでも無いけど……」
「そう言えば、神器が形を変えて槍になったのは?」
「接続する本の中に武器があればそれも顕現できる。武器を顕現するだけなら、たいして魔力を食わないみたい。一方で召喚はかなり魔力を消費する。まぁこれは、使用魔力量を調節すればなんとかなりそう」
「では戦闘は問題なさそうですね」
「だね。あ、そう言えば魔石を回収するんだよね?」
「普通はそうです。今回は私が回収しますから、どんどん倒して下さい」
そう言うとサクラは死骸から魔石を回収し始める。
よぉ~し、なら頑張って狩りを行おうか。
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