第3話 名前
「まっしろ、だけど?」
「そんなはずは……」
「俺の見る限りたぶん、空白なんだけど」
「初めて聞きましたよ。持ち物も有りませんでしたし……そうですね、冒険者ギルドで、ギルドカードを作ってしまいましょう。ギルドカードは身分証の役割にもなりますし」
「じゃあそうするか」
「では私について来て下さい」
立ち上がりサクラについて部屋を出る。
廊下をしばらく歩くと広い場所に出た。そのままついて行くと、カウンターに行き着く。そこにはにこやかに微笑む受付のお姉さんがいた。
「あ、サクラさん!その人目が覚めたんですね!」
「ええ、それでこの人をギルド登録したいのだけど」
「了解です!じゃあ簡単に登録の説明をしますね」
「お願いします」
説明によると以下のような話だった。
基本的に依頼者の仕事を紹介してその仲介料を取る。
仕事はその難易度によってランク分けされており、下級ランクの者が上級ランクの仕事を受けることはできないようになっている。
依頼を完了すれば報酬がもらえるが、もしも依頼に失敗した場合、違約料が発生することがある。
数回依頼に失敗、悪質と判断できる行動等でランク降格、またはギルド登録を抹消というペナルティが存在しているそうだ。登録抹消までなると、どの町のどこのギルドも再登録はしてくれないらしい。
基本、ギルドは冒険者同士の個人的な争いには不介入、ただし、ギルドに不利益をもたらすと判断された場合は別と、等々。
「大まかには以上になります。何か質問があれば、その都度聞いて下さい。」
「分かりました」
「ではこのカードに血を一滴、お願いします」
受付のお姉さんは、ピンとカードを差し出す。言われれるがままにピンで指の先を刺し、カードに血を垂らす。するとカードから文字が浮かび上がってくる。
しかし……
「カードに表示されるのは、名前とギルドランクになります。ステータスを見る時はカードを手にして、ステータスオープンと言えば他の人も見える形で表示されます。……なんですけど」
「……名前欄が空白ですね」
やはり名前欄が空白だった。
俺は本当に何者何だろう?
「本来こんなはずはないんですけど……」
「この人、記憶無いみたいで、名前も覚えてないって言ってたのだけど、本当だったのね」
「けどどうしましょう。名前が無いのは不便ですよ」
サクラと受付のお姉さんが頭を悩ませている。
名前かぁ。空白、まっしろ、ノーネーム……ん、そうだ。
「じゃあ、本当の名前を思い出すまでは、マシロと名乗ることなするよ」
「あ、安直だけど、まぁ本人がそう言うなら」
「マシロさんですね!分かりました」
受付のお姉さんがカードに手書きで、マシロの名前を書く。
「取り敢えず登録は以上になります。それで……しばらくは、サクラさんが面倒をみるんですよね?」
「こうなった以上、そうするつもりです。今日はもう遅いし、依頼は明日ね。マシロ、ついてきて」
受付のお姉さんにお礼と別れを告げ、サクラの後をついてギルドを出たのだった。
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