第10話VSオウム 3−3
「うし、わかった。今から『ゐをん』に行って買ってくるから大人しくしておけよ」
俺が立ち上がり財布をポケットに入れると、目の前にいる緑のオウムはじとっと目を据えて俺を見つめてくる。
「……何だよ、何か言いたいことがあるのか? せっかく俺がお前の餌を買いに行こうとしているのに『いってらっしゃいませ』の一言もねえんか?」
俺が問い詰めると『ウルギ』は喉を鳴らしながら首を傾げて見せた。
『お前…… どういう餌を買うか分かっているのか……? なんか妙なものを買わされる気がしてならねえんだけど』
鋭い奴だな。野生動物じゃねえのにこういう時だけ勘が働くあたり本当に嫌らしい。
「何言ってるんだよ! ちゃんと『オウムの餌』を買ってくるから安心しろって」
『俺が何を欲しているのか分かるのか? ただの『オウムの餌』じゃねえぞ』
どういう意味だ?
「何が言いたいんだ?」
『俺の好物、『スペシャルオウムフード:プレミアムコーンフロマイティ味』にしろ。それ以外は認めん』
は? どういうことだ? そんな名前の餌があるのか……?
すぐにスマホで商品を調べてみる。お値段なんと3,000円!!
「高すぎるだろ! 人間の食費より高額じゃねーか! んなもん買えるか!」
何だよ、オウムの餌のクセして『プレミアムコーンフロマイティ味』って。俺の好物と味が一致しているあたり凄く気味が悪い。オウムの餌なんか無味無臭で十分だろ。何で俺がこのオウムの為にバカみたいな高額な餌を買わなきゃいけねえんだよ!
流石にワガママが過ぎるぞ!
「大体ヨシ君から毎日こんな高額なモノ食わせてもらってるのか!? 嘘つくんじゃねえよ。お前なんて普通の『フロマイティ味』ですら贅沢なのに、『プレミアムフロマイティ味』なんて身の丈に合わねえだろ!!」
俺が手厳しく指摘してやると『ウルギ』はその場でドンドンと足を鳴らしてきた。
『俺が食いたいと言っているから食いたいの!! 買え、買わねえと明日からお前の家をフンまみれにするぞ!!』
なんなんだよコイツさっきから! そんなことされたら気が狂っちまう。
挙句の果てに
『そうだ、寝ている間にお前の口へ実弾投下してやろ』
とか恐ろしいことを思いつき始めるし…… これはやべえだろ。信じらんねえ、人間だったらまず思い付かねえ発想だぞ。
さ、流石に3,000円は高すぎる。たかだか『オウムの餌』ごときでなんでこんなに高いんだよ、本当に謎だぞ……
コイツの提案には拒否したいところであるが、このオウムだったら本当に俺の口へ実弾投下とかやりかねない……
「でもでもでも、3,000円は高すぎるだろ! 考え直すべきだぞ。ただの鳥がそんな高えもん食ってるなんて聞いたことねえぞ。ほら、その横に普通の『フロマイティ味』の餌があるからそれで我慢しろや」
それでもお値段1,000円だ。相当オウムを愛していないと買えない金額である。
『はい、実弾決定』
「少しは考えろ!! 即決すぎるんだよ! 交渉というものを知れよ、交渉というものを!」
ダメだ、考えてもくれない。相手が鳥なだけに『人間じゃねえ』ぞアイツ。人情を知らない、本当に無慈悲だ。
「本当、お前、クソみてえな性格してんな」
『はよ買わねえと、部屋荒らすぞ』
あーもう!! 買えばいいんでしょ、買えば!!
ほんっとうに話聞かねえな!!
ヨシ君、覚えておけよ!!
結局、コイツもお目当ての『スペシャルオウムフード』をちゃんと買ってくれるか心配だからとのことで『ゐをん』まで付いてきた。
ペットショップに着いたら『早く買え』とプレッシャーかけられるし、鳥を引っ提げて店来ている奴なんて一人も居ないためとても目立ってしまい大変居心地が悪くなる買い物だった。
さらば俺の3,000円、愛してもいないオウムの為に消してしまってすまねえ……
・
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「ただいま〜、売木のお兄ちゃんありがとうね。『ウルギ』は大人しくしていたかな?
えっ? どうしたの売木のお兄ちゃん、元気ないよ? あ、分かった、好きな人に告白して振られちゃったんだ、残念だね〜 元気出し…… え、違うの?
『ウルギ』もお利口さんにしていたかな〜? そかそか、偉いねえ〜 でも、僕がいなくて寂しかったでしょ?
え? どうしたの売木のお兄ちゃん、凄くやつれてない? 大丈夫? 『ウルギ』が何かした? あ、違うの……? ならいいけど……
あっ、しまった…… 売木のお兄ちゃんへのお土産忘れちゃった……
まぁ、いいか。また次の旅行も計画しているしその時に買ってくるよ。でも、その時もまた『ウルギ』のお世話をよろしくね、売木のお兄ちゃん。
じゃあね〜 ばいば〜い」
バタン
「ぜっったい世話しねえ!!!」
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