第15話 ボス撃破と展示会



 ダンジョンにエリアインして、既に1時間以上の経過である。アスレチックエリアで掛かった時間を加えると、ボス攻略の時間で本当に丁度良いくらい。

 ヒーリングしたり、途中に湧いた雑魚を倒したりしながら最終エリアに進んで行く2人。ダンジョン手前まで戻ったので、ボス部屋までの到達に時間が掛かるのは仕方が無い。

 そしてはたと気付くのは、ボスエリア手前で魔法を詠唱して来る獣人NMだったり。


「うおっ、2匹目のNMが湧いてる~!」

「さっきのは3匹連れ立ってたから、これは正確には4匹目だよね」


 魔法に焦げ目をつけられたハズミンに回復を行いつつ、冷静な口調で訂正する瑠璃。何と言うか、時間に追われているのに邪魔が入る、デジャヴな感じが心地良い。

 ハズミンは、さっきのNMでめでたくレベルが上がっていた。ルリルリも今度の戦闘で、間違いなく上がるだろう。ボス戦に向けて、まぁ弾みの一戦だと思えば良い。

 さっきのマラソンに較べると、温過ぎると思える瑠璃だった。


「もはやお約束なお邪魔虫だよね、ボス前のこの子」

「いいから、一緒に殴れ!」


 一緒に殴った結果、敵の魔法攻撃も尻すぼみの結果に。2人掛かりのスキル技の使用は強力で、割と呆気なく勝利の運びに。

 ルリルリは戦闘終了時に入って来た経験値で、目論み通りレベルアップ。


 残り時間をかんがみて、あまり考える暇も無いままキャラの補正ポイントの振り分けを行う瑠璃。ステータスのポイント補正は器用さに、スキルも細剣に振り込む事に。

 器用さを上げると防御時に回避が、攻撃時にクリティカルが上がるらしい。弾美の話だと細剣使いは、クリティカルの出やすい華麗な前衛を目指すべきなのだそう。


 時間も残り少ないので、さっさとボスエリアへ入る2人。下の層のまるっきりパクリの、鏡と足を乗せる仕掛けだけが存在する部屋が視界に入って来る。

 敵影がまるで無いのも、下の層と全く一緒。


「まるっきりおんなじだね~、ここもドッペルゲンガーかなぁ?」

「ん~、でもちょっと……足を乗せる位置が近くないか?」


 言われてみれば、確かにそんな気もして来た。鏡のすぐ前にある、仕掛けを作動させる為の足裏の形の黒いペイントマーク。

 くっきり目立つそれは、下の層より鏡に近い位置に描かれてあるような?


 だからと言って、見ているだけでは何も始まらない。ハズミンはボスを湧かせるために、用心しながら鏡の前のマークに移動を果たす。

 離れた位置でそれを見ていた瑠璃だが、ふと下の層との差異を他にも発見。もう一箇所、正確には二箇所ほど、部屋の両端の壁が何故か鏡張りになっている。

 ステージ2でも、そんな造りだったっけ?


 弾美に確認を取る前に、仕掛けは既に作動してしまっていた。目の前の鏡は無反応、代わりに割れたのは、瑠璃がいぶかしがっていた左右の壁の鏡のほう。

 2体同時のドッペルゲンガーの出現は、2人の度肝を抜いた。


「うわっ、騙されたっ! しかも……弓攻撃してくるぞ、コイツ!」


 湧いたドッペルゲンガーはその場を動かず、弓での遠隔攻撃をハズミンに見舞い始める。しかも左右両側からの同時攻撃なので、何とも始末が悪い。

 弾美は左のドッペルゲンガーを、最初の標的に定めたようなのだが。瑠璃も同じ敵を殴りに駆け寄った途端、戦況に次なる変化が訪れた――しかも悪い方向に。


 真ん中の鏡が割れて、もう1体のドッペルゲンガーが出現! そいつは何故か、仕掛けに全く触っていない筈のルリルリのコピー、つまりは水属性の分身だった。

 そいつは、弾美が二段斬りで削ったばかりの敵のHPをちゃっかり回復。それから分身元のルリルリに向けて、やっぱり遠隔攻撃を開始する。

 この敵も、どうやら弓がメイン武器らしい。


「うわっ、なんで私のコピーッがっ!?」

「ひどっ、回復されたぞ、おいっ!」


 弓は本来とても強い武器で、熟練するとその削り能力は計り知れない程である。目の前のドッペルゲンガー達は、それ程まで凶悪な削り能力は無いらしいけれど。

 それでも、3体同時の遠隔攻撃はさすがに堪える。じりじりと、成す術もなく下がって行く2人のHP。逆に敵は離れた位置から回復が飛ぶので、なかなか削り切れない有り様だ。

 このままでは、何も出来ないまま倒されてしまうのは必至だ。


「うわっ、このままじゃジリ貧だっ……瑠璃のコピーから倒すしかないか!」

「りょ、了解……って、うそっ? 2時間過ぎちゃった!?」


 再々度の戦況の変化は、何と妖精の加護切れと来たもんだ。2時間縛りのペナルティである、その効果はバットステータスの毒状態のHP減少。

 妖精がピヨッとカバンから飛び出して、2人の周囲を飛び回って危険を知らせているのだが。はっきり言って、それ所では無いし気が散るだけと言う。


 中央の割れた鏡前に引き戻った2人は、接近戦で回復魔法の詠唱を無理やり止めつつ。辛うじて5分程度で、水属性のルリルリのコピーを激破する事に成功。

 弓は距離を詰めると、撃てなくなる事も幸いしたようだ。


 それでもその時間の間に、支払った代償は大きかった。ハズミンは2体によって矢ぶすま状態、回復に追われたルリルリのMPはほぼ枯渇していて。

 しかし魔法を温存などと、甘い事を言っていられないこの苦境に。瑠璃はアイテムメニューを開いて、虎の子のMP回復のマナポを使用する。


 勿体無いなどと、悠長な事は言っていられない。毒状態のHP減少は、今もじりじりと効いているし、回復の為のMPはどうしても必要なのだから。

 延命のために、出来る手は全て打たないと。


 立ち止まっていちいちウィンドウを開いていたせいで、2体目のコピーとの戦闘に出遅れたルリルリだったが。弾美は今度こそ順調に、自身のドッペルゲンガーを追い詰めていた。

 瑠璃は弾美に、その場所から回復支援を送る。更に目前に辿り付いてからの細剣スキル技使用の援護で、程なく2体目との戦闘にもケリが付く。

 ここまで来たら、毒状態と言えど余裕が出て来る2人。

 

「よしっ、何とかなりそうだなっ!」

「冷や冷やしたよ~っ、3体同時の遠隔攻撃で、しかも時間切れはズルい~!」

「まだ終わってないぞ、瑠璃。こいつらの近距離攻撃も、割と痛いんだからな!」


 そうは言いつつ、3体目は軽口を叩き合いながらの余裕の表情の2人。もはや数に勝る攻撃を駆使して、怒涛の圧勝へと持ち込む事に成功する。

 ハイタッチも軽やかに、しかし戦闘後は慌ててエリア脱出に奔走されたりして。ペナルティのHP減少は、体感した感想では結構侮れない模様。


「う~ん、水属性の敵は敵に回すと怖いなぁ。回復が超ウザイ」

「そうだねぇ、でもルリルリを後衛仕様にしちゃうと、回復量はこんなもんじゃないよ?」


 自分の選んだ属性を褒められて、何となく鼻高々な瑠璃だったり。攻略も思ったより順調、って言うかまだ一度もライフポイントを失っていない事実が嬉しい。

 駄目かもと思った瞬間は、この短いイベント中何度かあったのだけれども。やはりパートナーの弾美のフォローに、その都度助けられている結果だろうと瑠璃は思う。


 静香と茜のチームは、早くもイベント期間の序盤で全滅したとの報告が上がっていた。そんな彼女達のゲームの腕前は、自分とどっこいどっこいだと思う。

 やっぱりそこは、頼れるパートナーの存在の違いかも。


「あっ、しまった……! せっかくボス戦前にスキル注ぎ込んで魔法覚えたのに、肝心のボス戦で使うの忘れてた!」

「……そうなの、ハズミちゃん?」


 ……ちょっと、性格的には抜けてる所もあるかもだけど。弾美は全く気にしていない様子で、ボス戦のドロップ品の分配に忙しい様子。

 ちなみに中立エリアに戻った途端、毒状態は解除されている。


 安心して時間を使いながら、ドロップ品の鑑定を行う弾美。今回の敵からも武器のドロップはあるとは思ったが、何と遠隔系の弓と矢のセットと言う嬉しい誤算である。

 後は闇と水の術書が1冊ずつと、攻撃力がアップする妙薬の『炎の神酒』など。


 さっそく術書を使用する2人、キャラの成長もなかなかに順調な感じだ。各々自分の属性のスキルを上げて、弓矢の方は弾美が持つ事に。

 これで遠くの敵を釣るのがずっと楽になると、弾美はちょっと嬉しそう。もっとも、本気で弓の熟練度やスキルを伸ばす気は無さそうだが。


 それから2人は、中立エリアのアイテム屋さんで安めの薬品を補充に掛かる。これは明日以降のための作業で、つまりは落ちる作業に入っている。

 何しろ、今日は思わぬ苦戦でたくさん薬品を使ってしまったし。薬品系は、値上がりしない内に買っておかなければ。


 更に落ちる前に、弾美は進たちにメールを打っている模様。瑠璃はテーブルの上を片付けて、昨日買ったばかりの『読み間違えやすい漢字、熟語500選』を取り出す。

 嗚呼、何て楽しそうなタイトルの本だろう……♪




 勉強の途中にトイレに立った弾美は、今日もリビングのテーブルの上にお小遣いが置かれているのを発見してご満悦。ただし、今日はメモの文字が父親のものらしい。これは父親のポケットマネーから出たお金だと、弾美は瑠璃に推測を口にした。

 共稼ぎなのに、弾美の父親はお小遣い制である。その中から身を切るように捻出してくれたのだろうと聞いて、瑠璃は思わず会社ビルのある方向に、手を合わせて拝んでしまった。

 どちらの親も、連休なのに構ってあげられない心の重荷は同じらしい。


 今日は文化会館の開催展巡りと言う事で、マロンとコロンは連れて出歩けない。昨日のような外食案も出たが、結局は瑠璃が作る事に。お小遣いは、いざと言う時のへそくり用に回す算段だ。

 ただし、勝手の違う台所は怖いと瑠璃が言うので、津嶋家に弾美がお邪魔する事に。


 弾美が瑠璃の家を訪れるのは、実はそんなに多くない。瑠璃の母親の恭子に捕まると、大変な苦行が発生するからだ。瑠璃の父親も、弾美を見ると何故だか妙にそわそわし始める。

 男親と言うのは難しいのだと、いつかの恭子さん談。


 そんな訳で、弾美のラーメンが食べたいと言う案は却下され、うどんが2人分、15分も掛からずテーブルに現れた。ちゃんと肉と卵とかまぼことネギが、綺麗にトッピングされている。

 まずまずの及第点だと弾美が評価すると、瑠璃はにこりと笑った。


 食べ終わって、しばらくは雑談しながら胃を落ち着けていた2人だが。やがて瑠璃が、着替えへと自分の部屋に上がって行って。

 それを機に弾美も出掛ける準備をと、一旦家に戻る事に。


 連休初日と同じくジョギングの為に家を出、そのまま弾美の部屋にお邪魔した瑠璃。つまり部屋に戻るのは、何だかんだで早朝以来の事。

 だから母親が今日の外出用の服を、わざわざ出して用意していてくれたのを、部屋に戻って初めて知ったのだが……。手にとって確かめて脱力。

 持っている中で、一番可愛くて丈の短いスカートだったり。


 瑠璃はしばし考えて、この衣装を着用するのと、母親からうるさく小言を頂く事態を天秤にかける。脳内でシュミレーションする事数秒、答えは割とすぐに出た。

 他の衣装をわざわざ出すのも面倒だし、母親の顔を立てる事も大事だろうし。そうと決まればさっさと着替えて、頭は楽しいお出掛けのイメージへと移行させる事が大事。

 ……あれ、でも夕方にはバイトも入ってるんじゃなかったっけ?


 まぁ、マリモは文化会館とは反対方向だし、一度着替えに戻るのもアリかも知れない。そんな弁解も、瑠璃の心中の照れから来るものなのだけれど。

 肝心の弾美は、瑠璃の格好を見て明らかに驚いていたが。何と言うか、微かに面白がっているようにも見えた。


 目的地の文化会館は、運動公園の敷地の向こう側でちょっと遠い。朝はジョギングで毎日走っているだけに、昼くらいは自転車を使おうと車庫から出していた弾美だったが。

 元の位置に戻しながら、ちょっと皮肉めいた言葉で瑠璃をからかう。


「それじゃ自転車乗れないな、歩いて行こうか」

「う、うん……」


 何となく照れながら、ついて来ようとするコロンを強引に敷地に押しとどめつつ。瑠璃は俯き加減のまま、曖昧な返事を返す。それでも歩き出してしまうと、いつもの位置取りに瑠璃は平常心を取り戻した。

 弾美の隣で、マロンとコロンこそいないが、散歩気分で歩を進める。




 目的地の文化会館に着いてみると、既に入り口付近で群集が結構な賑わいを見せていた。2人は催し物の案内板を頼りに、吹き抜けのロビーから取り敢えず2階を目指す。

 会館は結構な敷地面積を誇っているせいもあって、催し物展が重なったりすると、一度に5つの展示会があったりする。今回も連休のせいか、そんな感じの盛況振りらしい。

 それでも案内板を見れば、簡単に展示状況は把握出来る。


「結構人が多いな、どっちから見ようか? 両方、2階の展示室らしいけど」

「ん~、書道展からにしようか? 司書の永田さん、会場のお手伝いでいるかも知れないって」

「へえっ、じゃあそっち先に行こうか」

「んっと……2階のF会場だって、ハズミちゃん」


 書道展示会の会場は、それ程大きなスペースでは無かったモノの。展示の数は結構あって、小学生の賞を取った作品から、先生と呼ばれる人の作品まで様々のよう。

 作品も授業で使う半紙のサイズから、畳1畳のサイズのものまで幅広い。中には板切れのようなものに直接書かれていたり、色画用紙に書かれていたりと趣向も多様な感じである。


 作品群に法則があるとすれば、この街の住民の応募作品からの選出がメインという事だろうか。知っている人の名前がチラホラ出て来るのは、案外この街が狭いせいかも知れない。

 残念ながら、会場に司書さんの姿は見えなかった。会場入り口で案内役の人が、住所と名前の記入をお願いして来たので、いたらここで目にしたのであろう。


 瑠璃はひたすら残念がったが、それはそれで仕方が無い事態である。取り敢えずは、後でちゃんと司書さんに感想を言えるように、作品をじっくり見て廻らなければ。

 そんな訳で、取り敢えずは弾美と一緒に見学に集中する事に。


「瑠璃、これ何て書いてるんだ?」

「ん~、草書で書かれていることはわかるけど……」

「どこかで習った気がするなぁ、草書とか楷書とか。そもそも読めない字って、果たして価値があるのかな?」

「昔の人は、ちゃんと読めたんだよ。それでもやっぱり、崩して書いてるのには変わりないけど」


 2人は書道の基本とか良し悪しが、そもそも良く分からないので。評価するのはもっぱら取り上げられている言葉や文章とか、バランスの感じとか。

 たまに、書かれている素材などにも感心してみたり。


 ただついて来た感じの弾美も、それなりに書道展の雰囲気を楽しんでいるようである。瑠璃の分かる範囲での展示物へのウンチクに、なるほどと耳を傾けている。

 おおよそ30分で全てを見て廻り、次のエリアへ。


 押し花・折り紙展になると、会場は3倍くらいの大きさとなっていた。展示品も圧倒的に書道展より多く、さすがに入場料を取るだけはあると思わせる催し物になっている。

 とは言っても、学生はたったの200円で、しかしその分物販は充実している感じ。出口付近に設置されているお土産売り場の人だかりは、入り口の2人から見てもビックリする程。


 入った途端、賑やかな色彩や華やかな展示物の数々に圧倒される。2人は作品を見て廻りながら、感心する事しきり。弾美も正直言って、押し花の手法がこんなに多く存在するとは思っていなかった。

 ただ綺麗な色の花を、花束のように並べて作品としているものもそれなりに綺麗なのだが。自然に咲いている花々で絵画のような作品に仕上げたり、1つの物語のような表現力の演出があったり、パッチワークやキルトのようなパターンの作品があったり。

 瑠璃も感動を全身で現しつつ、見学にも自然と熱が入る。


 折り紙のコーナーは大作は存在せず、それでも細々とした作品は見応えがあった。季節柄なのか、こどもの日にあわせて鯉のぼりや兜などの作品が、目立つコーナーとして設えてある。

 それでも折り紙を使った立体的な作品は、何とも迫力があって面白い。くす玉のようなカラフルで小さな折り紙の集合体を合体させたものなど、見応えは充分である。

 出口の物販にも折り紙の本や色紙セットなど、結構な数が取り揃えてある模様。


 瑠璃はその物販で、しっかりお土産品を購入してホクホク顔。花の絵の便箋セットや、メモ帳や折り紙セットなども買い込んでいた。

 弾美にもお小遣いをくれた両親へのお礼に、何かお土産を買って帰るべきだと主張。何故かその品を、瑠璃が選んで行くという運びに。

 弾美も結構、同じ事を瑠璃にするので文句も言えない。


「そうだ、明日一緒にお兄ちゃん達に手紙書こう!」

「はっ、何で?」


 唐突の瑠璃の言葉に、弾美は思わず変な声を上げてしまう。弾美の姉は県外の大学に、瑠璃の兄は何と海外の有名工科大学に在籍しており、それぞれ今は別居中。

 家を出てから1~3年経っていて、連休中も戻って来る予定は無し。


 兄弟で連絡は取っているが、メールでの遣り取りがメインである。随分前から、連休休みには帰郷しない事は聞いているので、それなら心のこもった物を贈りたいとの瑠璃の考え。

 直筆での手紙など、今まで出した事は無い2人だし。


「せっかく便箋セット買ったんだから、出さないと駄目だよ! この感動を直接届けなきゃ」

「買ったのはお前だけだろ! 変だぞ、その理論!?」

「変な事ないよ、たまには直筆で遣り取りするのもいいじゃない?」


 瑠璃の瞳は、明らかにキラキラと輝きを発している。自分の立案した計画の素晴らしさに、既にどっぷり浸かっている感じだ。こうなってしまうと、弾美が幾ら理論立てて言い包めようとしても無駄な事。

 瑠璃の意志は、ちょっとやそっとじゃあ揺るがない。


「私が清書してあげるから、ハズミちゃんは文章考えるだけでいいよ!」

「そんな手間を掛ける必要あるのか? メールで書けば済む事だろ!」

「メールなんて味気ないよ、手紙貰った方が絶対嬉しいってば!」


 瑠璃には子供の頃からの付き合いで、ちょっと変わった所があるのは知っていたけど。さすがはあの恭子さんの血を引いてると、弾美は何ともなしに血の気の引く思い。

 会場を出ても会館を出ても、二人の論争は止む気配も無く。





 ――幼馴染故の垣根のない言い争いは、バイト場に着くまで続いたそうな。







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