第11話 春のバイト先のゲーム仲間



「店長さんの話って、やっぱりお店を手伝ってって事みたいだったね~」

「本当に忙しそうだったしな……まぁ、たまには働く気が出ていいんじゃないか?」

「それもそうか」


 お店を出た後の会話でも、同情の余地は無いと軽く流されしまった店長。2人はアーケード通りにある本屋へと向かいつつ、いつもより多目の人の流れにちょっと戸惑う。

 どうやら世間も、連休真っ只中のようである。


 ようやく辿り着いた本屋では別行動、弾美はコミックコーナーや若者向けライトノベルを中心に見て回る。瑠璃の方は、真面目な本の置いてあるコーナーや文学小説が中心。

 ハードカバーの新刊にも目を通すが、値段を知っているので購入には至らない。


 瑠璃の方は、とにかく目が真剣。あらゆるジャンルからバランス良く購入しないと駄目だという、よく分からない使命感がメラメラと湧き起こっている様子。

 まるで栄養士が食材を選ぶ時のようだが、実際に似たような感情なのかも。瑠璃の脳内思考はそれに関して、一片の疑う余地すら見出せていない。

 本能すら全肯定、これが正しい本の選び方だと。


 先にお気に入りの新刊コミックを購入し終えて、焦れ始めたのはやはり弾美だった。店内を見渡して瑠璃を発見するが、その手の中に既に4冊も本があるのを確認し、会計を急かす。

 最近は本も高いし、幼馴染みの懐を心配しての行動なのだけれども。


「ちょっと待って……もうちょっと見たい」

「お前、何冊買う気だっ!」

「あ、あと1冊買わないとバランスが……」


 結局瑠璃は、5冊目の小説や参考書を10分掛けて選ぶと、そそくさとレジへと急ぐ。弾美と本屋に行くと、大抵はこんな感じになってしまうのだ。

今日に限っては、貰ったお小遣いが多かったせいで気が大きくなった模様だ。そんな後押しもあって、いつもより時間を掛け過ぎてしまった。

 離れた場所で怖い顔をしている弾美を見て、瑠璃はちょっと反省。


 本屋の斜め前にゲームセンターが建っているせいなのか、この辺りは若い人の集団が多い気がする。ちょっとだけ覗いて見ようと言う事で、2人はその店内へ。

 瑠璃はゲームセンターなど、数える程しか入った事が無い。興味津々で店内を見回すが、結構混んでいてゲームの奏でる騒音と人の喧騒がとてもうるさい。


 人混みを避けつつ彷徨っていると、ファンタジースカイの宣伝ポスターが店内に貼ってあるのを発見。弾美がその前で立ち止まったので、瑠璃もつられてそのポスターを注視する。

 かなり大き目の、最近貼られた物らしい。


 と言うのも、それは期間限定イベントの宣伝ポスターだったのだ。敵役の魔女と冒険者達が対峙している美麗なイラストで、瑠璃もちょっと欲しくなる。

 背景には大きな樹が描かれており、小さな妖精が飛び回っている。


 ポスターの一番下に、実施期間や参加条件など、イベント条件の細々した事が要約して書かれてあった。但し、賞品のところは曖昧で、10位から7位までしか発表されていない。

 その辺りはオリジナルグッズや音楽CD商品券など、当たり障りの無い賞品だ。


「弘一の言ってた限定イベントのポスターって、これの事か。過去最大級のオリジナル大規模広大ステージと、豪華賞品だってさ!」

「でも、賞品は7位から10位までしか書かれてないねぇ?」

「それに対応して、販促グッズも充実って……クレーンゲームの事かな?」

「ハズミちゃん、取るの得意……?」

「やった事がほとんど無いからなぁ……欲しいのか?」


 2人は揃って、問題のクレーンゲームの場所まで移動する。それから大きな透明ケースの中に入っている様々な景品を、時間を掛けてまじまじと品定め。

 元々のゲームのキャラを、更に3Dデフォルメされたぬいぐるみ群達は。その可愛らしさを減じるどころか、大幅アップした感さえある。


 クレーンゲームは結構人気があるようで、高校生らしき10代の若者の列が順番待ちの状態。瑠璃は自分の使用している水属性キャラを探すが、残念ながら見当たらない。

 代わりに、メイン世界で有名なモンスターを発見した。


「ハズミちゃん……ヘソクリにゃんこがいる!」

「あぁ、いるな……あれにも招福効果があるのかなぁ?」

「ちょっと欲しいかも……」


 しばらく2人で見ていたが、順番待ちの列は増えこそすれ、なかなか減らずな状況。その間ずっと、ヘソクリにゃんこはチャレンジャーの挑戦をことごとく跳ね返していた。

 焦れる弾美の横で、瑠璃は何となくホッとしていたり。


「ああっ、爪掛かってたのに……アーム緩いのか?」

「あ~、もうゆうに1時間過ぎてるよ……ハズミちゃん、そろそろ出よう」


 店長の存在を思い出し、弾美も渋々諦める事に。とは言っても、今回は順番待ちに並んでさえいないのだが。ゲームセンターを出ると、大きな音に順応した耳が暫くは変な調子。

 こんな場所に足しげく通う人達の気持ちが、弾美にも瑠璃にも良く分からない。



 時間はようやく3時を過ぎた程度で、遊ぼうと思えば中学生でもまだまだ宵の口の時間帯。けれどまぁ、約束は約束だと2人はペットショップ・マリモへと舞い戻る事に。

 店に入ると、歓迎してくれたのはもちろん兄弟犬の2匹。それに負けず劣らず、店長も熱弁を振るい始める。マロンとコロンは、ふれあい広場に入れられていたのかと思いきや、店内を自由に闊歩していた。

 ふれあいが売りとは言え、客もさぞかし驚いたであろう。


「バイトの子が、2人も同時に連休休み取っちゃってさぁ! シフトがどうにも回らなくなって、本当に困ってるんだよっ!

 2人は連休暇らしいから、良かったら手伝ってくれないかなぁ。いや、暇な時に商品補充とか配達とかしてくれるだけでもいいんだよ。

 バイト料はずむからお願い!」

「…………えっと」


 話の内容は予想通りだったのだが、普段は温厚な店長のマシンガントークに、2人はやや怯み気味。カウンターの中の店長はどこか切羽詰った様子で、さながら天敵に怯えるシマリスのよう。

 弾美は店内をそれとなくチラ見。お客の姿はちらほら見えるが、確かに店員の姿は全く見えない。どうやら朝から、本当に店長一人での操業らしい。

 店長がキレ掛けているのも、何となく理解出来る。


「ひょっとして、朝から1人なの、店長?」

「そうだよっ! 夕方から潮崎君が来てくれるんだけど、それまでは僕1人だよ。お昼とか、隣の姉さんの所のスタッフさんに来て貰ったり、大変だったんだから!」


 まるで大変なのは自分達のせいみたいな言われ方だったが、一応心情は察してあげるべきであろう。2人は目と目で相談して、不定期バイト員として店の手伝いをする事を了承。

 店長の喜びようは、獲物を捕獲したサバンナライオンの如し。


「エプロンどこだっけ? タイムカード打たなくてもいいよね、店長。潮崎さんって何時に来るの?

 商品補充からすればいいかな、バックヤードどうなってる?」

「エプロンあったよ、ハズミちゃん。マロンとコロンはどうするの、広場に入れておいた方が良くないかな? 店長がバックに入るなら、私レジやるけど?

 店長さん、商品発注までした方がいいかな?」


 やると決まったら、途端にてきぱきと働き始める弾美と瑠璃。1ヶ月前の春休みには、結構仕事を任せて貰っていたので、ある程度の勝手は分かっているのだ。

 マロンとコロンは、商品補充作業に邪魔なので、ふれあい広場に収容の運びに。小型犬の可愛さに和んでいた利用者に、思い切りびびられていたりして。

 それでも、子供達には意外に好印象なのか、途端に数人の子供が集って来ていた。


 弾美と瑠璃はバックヤードから手を付ける事にしたのだが、いきなり昼に届いた荷物が手付かずに放置されているのを発見。その量の多さに、ちょっとやる気を削がれそうに。

 瑠璃は商品管理のパソコンシステムを立ち上げて、バックにも店の商品棚にも在庫の無い補充商品を告げて行く。バックに古い在庫があったら、そちらから先に出すのが常識。


 商品補充は、出来るだけ迅速にしないと駄目である。このお店のメインの売り上げはペットの餌などの消耗品なので、品切れで購買チャンスを損なうのはよろしくないのだ。

 2人掛かりでてきぱきと、陳列棚に減ったアイテムをどんどん補充して行く。いつしか無心で作業している弾美の脳裏に、何故こんな状況になっているのか疑問符が。

 最初に計画していた、楽しい連休はどこへ行った?


 それでもある程度片がついたら、流れに従って弾美はバックの整頓に引っ込む事に。在庫の整頓は、分り易いように機械管理に対応させないと忘れ去られてしまうから要注意。

 商品も、犬のペットフード袋だと5キロとか平気であって、結構力仕事なのだ。


 もっとも、その重さのせいで配達の利用が上がっているとも言えるのだけれど。ペットフードの簡易配達サービスは、マリモの重要なサービスの一環だったりする。

 弾美も春休みは、ほぼ毎日外回りをしていた。


「表の商品棚の補充、だいたい終わったよ。発注にパソコン使うから、ハズミちゃんと表交代していい?」

「おうっ、こっちも終わった。管理装置の情報、パソコンに入れておいてくれ」

「わかった。あと、配達リストも出しておくね?」


 弾美が店内に戻ると、メインバイト店員の潮崎が店長の代わりにレジに立っていた。ひょろっとした容貌の青年で、確か地元の大学生だった筈。

 店内を見渡すと店長は接客に追われており、それなりに忙しそう。


 弾美はレジの若者に軽く手を振って、悲鳴の上がっているふれあい広場をチェックに向かう。動物の粗相はいつもの事、現場を素早く清掃して消臭スプレーを振りまく。

 幸い、お客の服には被害は無かった模様で何よりだ。たまにあるのだが、こうなるとジャージを用意したりと対応が途端に面倒になる。

 犬や猫のやる事に、それ程目くじらを立てる利用者がいないのが有り難い。


 マロンとコロンが、ここは飽きたと言いたげに、弾美に付いて店内に出て来た。それを追って、子供達がきゃいきゃい言いながら追従して来る。この良く分からない、列車ごっこはナニ?

 兄弟犬も弾美も、ちょっと迷惑そう。


「やあ、弾美君、ご苦労様……何時から入ってるの?」

「3時くらいかな、店長に泣きつかれちゃって」

「僕も店長に、朝10時から来てくれって言われたけど……さすがに丸1日シフトは無理。連休全部入ってるし、こっちも色々大学の用事があるからねぇ」

「潮崎さんも被害者か……さては、犯人は村っちだな!」


 村っちとは村重むらしげ春奈はるなと言う名前の、バイト店員の中で一番の古株のフリーター女性である。バイトと言うより準店員なのだが、とにかく自由気儘で。

 お金は稼いだら使ってナンボという思考の、キップの良い姉御肌の性格で。弾美や瑠璃も、春休みのバイトの帰りによく奢って貰ったモノだ。

 ファンスカもプレイしているので話も合ったのだが、今回は連休を満喫する気らしい。


「うん、連休を利用して友達と旅行に行くって……よりによって、隅田さんも一緒らしい」

「うわっ、バイト仲間も道連れかぁ! そりゃあ……店長も泣くなぁ」

「泣くよねぇ……」


 バイトの店員が2人も旅行に行ってしまったら、それは大変だっただろう。隅田さんも女性のバイト店員で、村っちの紹介で入って来たものだから、そういう事態もあり得るだろう。

 シフトに大穴が開くのも、当然の結果である。


 雑談している内にレジが少し混んできたので、弾美はカウンターに入って包装を手伝う。その内接客が一区切りしたのか、店長もカウンターに戻って来た。

 店長はブラジル系のハーフで、少しだけ浅黒い肌の、大柄な体躯の持ち主だ。ただ、顔付きは愛嬌があるというか、やや甘い性格が顔に出ている感じ。

 そのせいで、商売に不向きだと皆によく揶揄からかわれるのだ。


 ペットの知識もかなり豊富で、バイト店員との接し方も友達感覚で甘々である。そんな感じで良い人なのだが、仕事熱心でないのが玉に瑕だったり。

 最近は、バイト店員の方が危機感を覚えて、逆に仕事熱心なほど。


「バック片付いたよ店長。今、瑠璃がパソコンで在庫整理してる」

「あぁ、本当に助かるよ! これで残業せずに済んだ……!」

「配達あったら、俺行くし。店長休憩に入っていいよ」

「店長朝からですもんねぇ……本当に休憩しないと持ちませんよ?」


 2人の提言に、店長の顔はみるみる緩んで安心した表情に。お言葉に甘えるよと言いつつ、外にコーヒーブレイクにでも行くのかと思ったら。

 買い置きのコーヒー缶を取り出しつつ、ネット接続を始める店長。


 予備モニターを取り出して、当然のように弾美にサブコントローラーを勧める素振り。瞳を子供のようにキラキラ輝かせ、ファンスカの期間限定イベントの話を2人に振って来る。

 弾美はちょっとたじろぎながらも、隣の潮崎と目で会話。相手をしてあげてと言う、優しい大人のアイコンタクトが返って来たので、バイトを頼まれながら何故ゲームの相手? というアンビバレンツを体現しつつ。

 店長の求めに応じで、マイキャラを呼び出すパスワードの打ち込み。


 カウンターの隅とは言え、お客からは丸見えである。しかも大型犬2匹が弾美の傍に控えているので、悪目立ちする事この上ない。

 そんな細かい事は気にせずに、店長は自分のキャラを起こしに掛かる。


 仕方なく、それに追従する弾美。メイン世界のハズミンは、長槍とがっしりした鎧を着込んだ、凛々しい前衛アタッカーである。

一方の店長のマリモは、これも前衛職には違いないのだが。いかにも堅そうな鎧と盾を着込んだ、小さいが愛嬌のあるブロッカーである。

 盾役のキャラは、上手に育てれは強敵相手に必須の存在になるのだ。

 

「弾美君は、ステージ2から瑠璃ちゃんとパーティ組んでるんだよね。調子はどうなの?」

「ん~……1日混雑で出遅れちゃったし、瑠璃が前衛慣れしてないから前途多難かなぁ? 店長の方は、パーティを誰と組むとか決めてるの?」

「うん……一応イベント始まる前には、村重さんに誘われてたんだけど……」

「あ~……」


 その肝心の村っちは、店長を置き去りに旅行に出掛けてしまったようだ。って言うか、同じ職場でシフト回しているのに、2人ともインの時間が合うのだろうか?

 弾美は疑問に思ったが、敢えて口にはせずに聞き流す事に。拗ねられても困るし、大人は夜遅いインでも恐らくは平気なのだろう。


 自分や瑠璃に関しては、朝6時には起きて犬の散歩に出掛ける生活が常なので。毎日10時を過ぎると、どうにも眠くなってしまうのが通例である。

 その事実を知ってる者は、健康的だねと驚くのもいつもの事。


「おっと、空いているかと思ったけど、メイン世界もそれなりに混んでるね」

「限定イベントエリアの攻略始まったって言っても、2時間縛りあるしなぁ。追加されて馴染みの無い新エリアなら、空いてるんじゃないかな?」

「でも僕、そっち関係のトリガー持ってないなぁ。NM湧き情報も、ろくに調べてないし」

「俺トリガー持ってるから、それ使おうか。2人でNMやっつけて、すっきりしよう、店長!」


 店長の顔に、ふわっと幸せそうな笑みが広がって行く。街中ワープを駆使して、2人のキャラは途中で回復系の薬品を買い込みつつ移動を果たして。

 10分後には、無事に目的地のポイントにトリガーをぶっ込んで。ハズミンとマリモは、巨大な亜竜型のモンスターと熱い戦闘を繰り広げていた。

 相手はかなりの巨体と膨大なHPを誇る、それなりの強敵だ。


「店長、キープしててっ! ポケットの薬品入れ替えるっ!」

「弾美君、こいつひょっとして多部位モンスター!? 僕、こんなのと戦ったこと無いよっ!」

「大丈夫、一気に範囲スキル技で追い込むから!」


 スキル技攻撃可能状態に回復したハズミンは、モンスターと距離を置くと複合スキル技の《シャドースピア》を放つ。闇と土と両手槍の3種の複合スキル技の一撃は、地面からの複数の闇色の槍の棘で、モンスターのHP群をごっそりと削って行く。

 多部位モンスターと言うのは、巨大なモンスターの一つの特徴でもある。顔や胴や尻尾という部分別にHPゲージを持ち、それ故に超タフで攻撃も多彩な訳である。

 ファンスカ内では、倒すのにとても時間が掛かるので有名だ。


「おおっ、すごいよ弾美君っ! もう一発いっちゃえっ!」

「ここからチャージ喰らわすから、店長防御お願い!」


 離れた位置からしか作動しないスキル技《稲妻チャージ》が、モンスターの尻尾のHPを完全に削ぎ取る。これも雷と両手槍の複合技で、習得にはかなりの努力が必要な技だ。

 その代わり、とても強くてNMにも通用するのは見ての通り。


 やり過ぎてこちらにタゲが来た所を、店長の《マジックウォール》が割り込み遮断をする。一安心と思いきや、敵の熾烈な反撃が侮れない。

 手持ちのポーションはあっという間に減って行き、それと引き換えの殴り合いの末に。敵の胴体のHPを、やっとこゼロにするのに成功する。

 残りは頭部分のみ。敵の怒涛のブレス攻撃に耐え、マリモが終盤の必死のタゲキープ。


「後もうちょっと! 弾美君、キープしておくからさっきのお願いっ!」


 カウンター内の喧騒に、お客さんのギャラリーもちらほらとモニターを注視していたり。大迫力のNM戦に、ファンスカ体験者のお客から声援が飛んで来る。

 ハズミンが派手なスキル技で止めを刺した途端、ちょっとした拍手と歓声が周囲から巻き起こった。レジ前にいた筈の潮崎も、思わず観衆と一緒に拍手している。

 それを受け、もの凄く嬉しそうな店長の表情が印象的。


「……ナニやってるの?」

「……うっ!」


 バックで作業を終え戻って来た瑠璃が、呆れた顔で2人を見ていた。手には配達リストと発注リストを持って、今は仕事中ですよのオーラを全面に漂わせて。

 弾美は思わず我に返り、後ろめたさと言い訳の渦が脳内を駆け巡る。何と言うか、とてもバツが悪い思いの中、同じ思いの筈の店長がそろりと瑠璃を振り返った。


 この事件の張本人の店長は、弾美よりもっとバツの悪さを噛み締めて然るべき。更にはその本能で、後ろからの氷点下の雰囲気を察した筈なのだろうけれども。

 口を突いて出たのは、ある意味あっぱれな言葉だった。


「弾美君、ドロップ品……どう分けようか?」

「……ゲーマーだね、店長」





 店長の評価は、日々こんな具合で更新されて行く――主にトホホな方向に。







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