三日過ぎれば

「えっと、基本的に人間を対象としてまして……」

「でも、店頭にはなかったよ。『動物お断り』って」

 中学生くらいの男の子が、小さな犬を連れて来店した。なんでも高校生の集団に虐められていた犬を助けたのだが、人間を怖がるようになり食事をうまく取れなくなってしまったらしい。

「お金は払います。犬用ミルクに混ぜられるだけでいいです。お願いします!」

 最初はウエイターが対応していたが、どうしてもと譲らない姿勢に厨房からOKが出た。

 とはいえ人様以外のメニューなぞないのが普通のレストラン。犬もまだ小さいのでと、出がらしの豚肉を骨から削ぎ落とし、食べられそうなサイズしてやってパック詰めする。

「少しずつ、ミルクに混ぜて食べさせるといい」

「ありがとうございます! これで人間のこと忘れてくれるといいな」


 数日後。

「なあ、あの子犬どうなったかな? もう人間のことなんか忘れて生きてるかな」

「あ、ちょうど最近、店来るときの時間帯で散歩してるのに出くわした」

「なんだよ、しっかり人間の世話になってんじゃん」

「あの男の子が飼ってるみたいだけど。お互いすごく楽しそうだったぞ」

「へー、いくら犬でも恩までは忘れない、って事かね」


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