不思議な力

「そういえば、うちの店で物忘れメニュー作れるのって何人いるんだ?」

 忙しい時間帯が過ぎて休憩所に人が増え始めたタイミングに、ウエイターが呟いた。

「基本、テーブルに出せるのはコック長と副コックだけだとしか聞いたことないな」

 少し離れた場所で室外機へ煙を吐き出しているバックヤードが答える。

「あれ、どんな原理なんだろうな」

「知らねー。知ってても怖いから作らねー」

 この店は、店内とバックヤードはきれいに分かれている。この休憩所だけが唯一の共通スペースだ。料理も小さなカウンター越しで受け取るため、厨房の様子はよく見えない。

「でも知ってれば対策とか、より強くしたりとかできそうじゃね?」

「そんなこと考えてるから教えてもらえないんじゃねーかな」

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