似顔絵

「あの子、また来てるな」

 レストランの一番角、小学生の女の子が絵を描いている。

「母親の似顔絵を描く宿題らしいけどな。小さい頃に亡くなったとか」

 ふとテーブルを見ると、女の子は食事をしながら絵を描いていた。

 行儀は悪いが、これには理由がある。

 覚えようという意識なく残った記憶は、料理を食べたとしても定着しにくい。

 しかも相手は小学生。何度もここに来れるはずもなく。

「でもお父さん、再婚したんだろ? 結構最近に」

「あの子にとっての母親は亡くなった方なんだろ。よく知らないけどな」


 数日後。

 教室には「母親の似顔絵」というタイトルの絵が飾られた。

 もちろんそこにはあの女の子の絵も飾られていた。

 似顔絵の横に一言添えて。

「これから、よろしくお願いします」

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