なりたい

「あ~ そろそろバイトの時間だ」

 学生は自分の鞄を手に取り、机から立ち上がる。

「お、川口。例のウエイター続いてるのか?」

 ある大学のサークル部屋。思い思いの本を読む男女が数人、静かに己の世界を楽しんでいた。

「おかげさまで。接客難しいと思ってたけど意外と続いてます」

「ならよかった。紹介した甲斐があったな」

「あのバイト、終わった後とかに作品作りするとめっちゃはかどるんですよ」

「わかる。俺もそうだった」

「やっぱそうですよね? こう、作品を作りたい頃の情熱っていうか、やりたい事が明確になるみたいな」

「そうそう。創作系の仕事がしたい奴にはめっちゃ好評なんだよ、あのバイト」

「なんでなんですかね?」

「……え、お前分からないでバイトしてるのか?」

まかないい飯がめっちゃうまいのだけはわかります!」

「じゃあ十分だよ」

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