旧友
思い出し料理は基本的に予約制だが、例外でオードブルで提供することがある。
過去を懐かしむ集まり、同窓会などだ。
成人式の二次会でも盛り上がること請け合いのオードブルだが、あまりに鮮明に思い出す人とぼんやりしか思い出さない人がいる。
その記憶の解像度は、ズバリ『どれだけその時間を長く感じたか』である。
極端に言えば、青春・恋愛とも言えるだろう。
時間をおいて熟成された思い出が、鮮明に蘇ってそのまま告白…… というのも少なくない。
「いいよな、こういうの」
気持ちの高ぶりを目の当たりにした別の参加者の男が、時を経て新しく誕生したカップルを見ながら言う。
「あれ? お前結婚してなかったっけ?」
連れと思われる別の参加者が、独りごちる男に突っ込む。
「うちは恋愛結婚じゃなかったし、先月離婚したよ。人を好きになれる気持ちが羨ましいのさ」
しかし、ぼやきながら料理を食べると不思議とやる気が湧いてくる。
「……なんか、昔に戻ったみたいに感じるな」
男の目には、若かりし頃の熱い眼差しが戻っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます