旧友

 思い出し料理は基本的に予約制だが、例外でオードブルで提供することがある。

 過去を懐かしむ集まり、同窓会などだ。

 成人式の二次会でも盛り上がること請け合いのオードブルだが、あまりに鮮明に思い出す人とぼんやりしか思い出さない人がいる。

 その記憶の解像度は、ズバリ『どれだけその時間を長く感じたか』である。

 極端に言えば、青春・恋愛とも言えるだろう。

 時間をおいて熟成された思い出が、鮮明に蘇ってそのまま告白…… というのも少なくない。

「いいよな、こういうの」

 気持ちの高ぶりを目の当たりにした別の参加者の男が、時を経て新しく誕生したカップルを見ながら言う。

「あれ? お前結婚してなかったっけ?」

 連れと思われる別の参加者が、独りごちる男に突っ込む。

「うちは恋愛結婚じゃなかったし、先月離婚したよ。人を好きになれる気持ちが羨ましいのさ」

 しかし、ぼやきながら料理を食べると不思議とやる気が湧いてくる。

「……なんか、昔に戻ったみたいに感じるな」

 男の目には、若かりし頃の熱い眼差しが戻っていた。

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