つまみ食い

「時々さ」

「ん?」

「料理、残るじゃん」

「うん」

「食べたことある?」

「たまに」

「でさ、ウチの料理って基本『忘れさせる』料理じゃん」

「うん」

「何か忘れたことある?」

「お前、それ聞く意味あると思う?」

「え、なんで?」

「何を忘れたくて注文したか分からない料理なのに、何を忘れたか覚えてたら料理の意味がないだろ?」

「あー、そうか。それでか」

「何か思い当たるのか?」

「うん、食べて何を忘れたのか心当たりがなくってさ」

「そう言えば、お前今日遅刻寸前だったな。出勤日シフト忘れたんじゃね?」

「いやカレンダーにメモしてるから忘れないって」

「じゃあタイムカード押し忘れたとか」

「あ」

「思い出したか?」

「今日学校でテストあるからって、休みにしてもらうの忘れてた……」

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