なぜだったっけ

「ここ、普通のレストランですよね?」

 夕食の時間を過ぎた頃、サラリーマン風の男性二人がレストランを訪れた。

「まあまあ。俺もたまに世話になるんだ。いいとこだぞ」

 少し年上に見える男性はテーブルにつくやいきなり注文を始めた。

「まずいつもの『気持ちが良くなる水』と、あとはお任せで」

「な、なんですそれ? 居酒屋みたいな……」

 あっけにとられている若い男性をよそに、ウエイターは「かしこまりました」と注文を取る。

「あ、俺は後で……」と口ごもる男性を遮り、年上の男性が「こいつにも同じものを」と注文を決めてしまった。

「うち、アルコールやってませんけどね」

 引っ込んだウエイターに別のウエイターが苦笑いで話しかけた。

「何いってんだ。嫌な記憶を忘れることに関してはうちの方が上だ」

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