何度でも

「では、今日もいつもの食事で」

 老夫婦に礼儀正しくウエイターは対応する。

「はい、よろしくね」

 女性はいつもの笑顔で答える。が、男性の方は心ここに有らずである。

 もちろんそれも、いつも通りだ。

「俺もああいう奥さんが欲しいね」

 奥へ引っ込んだウエイターたちは、先ほどの老夫婦を見ながら世間話だ。

「でもさ、旦那さんもうボケてるんだろ? 俺はそうなりたくないね」

「ばーか。だからあんな奥さんが欲しいんだよ」

「だって、いつも同じ話ばかりだろ、あの旦那さん」

「そうだよ」

「それを、さも初めて聞いたかのように相槌打つって、なかなかできないぞ」

「だから毎月決まった日にお越しになるんだよ」

「は?」

「いつも新鮮な気持ちであの人の話を聞いてあげたい。それが奥さんの希望料理だ」

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