夏も冬も

 夏はこの辺でも三十度を大きく越える気温になる。

 昨日なんかはアスファルトで玉子が焼けるほどに熱せられた。それほど暑い。

 レストランも涼を求めに来る客もいて、喫茶店の様相にすらなる。それほど暑い。

「ここの料理で暑さを忘れることって出来ますか?」

 女子高生くらいの若い女性がウエイターに質問する。

「もちろんです。ただあまりお薦めはしません」

「え? どうしてですか?」

「なくなるのが記憶ではなく機能になるので、最悪倒れますね。夏が過ぎた辺りで思い出しにご来店いただかないと」

「え? でもクーラー要らなくなるし、いいんじゃない?」

「違いますよ。暑さを感じなくなると行動にブレーキがかからなくなるので疲労で倒れますから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る