まあ、食事でもしながら

「存在しない、あるいは他人の記憶を植え付けることは?」

「不可能ですね」

「なぜ食べるというプロセスが必要?」

食事おぼえる、と排泄わすれる、は同じ行為です。密接に関係していますので」

「なぜこのようなレストランを?」

「おいしい食事きおくを提供するためです」

「そのわりにあまり広告をみたことがありません」

「太い常連リピーターがいますので」

「客によっては、完全犯罪も可能なのでは?」

「我々が直接犯罪に協力する理由がありません」

 記者の問いに淡々と店長は返す。柔らかな質問から、重い質問まで。

「またすごい質問するよな」

「まあ、問題ないだろ。大して記事にならない」

「何でさ」

「店を出れば、ここに来たことも忘れるからさ」

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