こちらは異世界か

「昨日ウチに来た客が道路の真ん中で倒れてたらしいぜ」

 暇そうなウエイターが、グラスの入ったケースを食洗機から出して一つ一つ磨いている雑用係バックヤードに世間話を投げかけた。

「何を注文した人なんですか」

「常識だってさ」

 雑用係は、一瞬理解に苦しんだ。

「何が目的でそんな注文を?」

「ああ、たまにいるんだよ。自殺する勇気が無くて捨てても問題ないものから消したがる変な奴さ」

「でも、その後の生活がしずらそうですけど」

「ほぼ記憶喪失みたいなものだけど、人間都合のいいように解釈する機能さえ残ってれば案外何とかなるみたいだぜ?」

「というと?」

「医者の奴『あなたは異世界からやってきたんです』とかいってまるっとごまかしたらしい」

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