復旧対応

 営業中の夕方、突然電話が鳴った。

「お電話ありがとうございます。こちらメモリー・レストランでございます」

『あ、すいません、ちょっと教えて欲しいんですけど、そちらで記憶を戻すことってできますか?』

「ご予約ですね。いつ頃の記憶か教えていただけますか?」

 予約の受付をこなす事務員を、ウエイターが横目で盗み見る。

「思い出しなんて珍しいな」

「最近なかったからな、思い出しコース」

「天然の物忘れだと安いけど、ウチで扱った記憶だと三倍増しなんだって?」

「ライバルの業者が消したやつはさらに倍だぜ」

「そこまでして、消した記憶思い出したいかねぇ……」

 翌日、シフト予定に見慣れない仕事が増えているのをウエイターは見つけた。

『渡辺コック長:病院出張/記憶喪失患者依頼で』

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